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2019年8月23日 (金)

タニタの働き方革命 <残業削減の先>

タニタの働き方革命 谷田千里+株式会社タニタ 日本経済新聞出版社

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 体脂肪計で有名なタニタの社長、谷田千里氏の新しい働き方の提案。

 常々、働き方改革=残業削減の議論しかないことに疑問を感じていた。また、経営側の意見が少ないのも気になっていたので、この本を読んでみた。

 谷田千里氏は、今流行りの「働き方改革」について、

 これまで「働き方改革」の名の下に議論されてきたのは、残業削減や有給休暇取得の義務化、テレワークの推進など「働きやすい」環境づくりが主だったのではないでしょうか。できれば「働き甲斐」やその方向からの「生産性」についてもっと突っ込んだ議論が欲しかったと思いますが、それらは置き去りにされてしまった感があります。

とおっしゃる。

 政府が「働き甲斐」まで踏み込んだ政策を掲げるとアヤシくなるので、規制強化などの環境整備になるのはある意味しかたないところがある。

 タニタの制度は、すごくざっくり言うと「個人事業主」化を会社が支援する制度。
日経ビジネスのインタビュー記事『タニタ社長「社員の個人事業主化が本当の働き方改革だ」 日経ビジネス (2019/7/18)』に、この制度の概要がある。

 弁護士ドットコムには『タニタの働き方改革「社員の個人事業主化」を労働弁護士が批判「古典的な脱法手法」』という記事がある。

 この本のあとがきにもあるように、この制度がベストではないかもしれないし、今後環境の変化に応じて変わっていくのだろうと思う。

 この制度を利用している人は、3年で27人らしい。 タニタの会社概要を見ると従業員数は1200人なので、この制度を活用している社員は約2%だ。まだまだ、昭和の価値観で働いている人は多いだろう。今後世代交代が進むとこの制度を活用する人も増えるのではないだろうか。

 この制度は、社長の社員に対する「働き方は横並びでなくてよい」という本気のメッセージだろう。

 この制度を利用する人は、タニタでなくても稼げるだけの能力を持っている人だと思う。だから、この制度は人材流出を加速させると考えるのは自然だ。

 この意見に対して谷田千里氏は

 人材流出を本気で心配するのなら、弊社がやるべきことは、「囲い込み」ではないと思っています。他社からも欲しがられる優秀な人材に、「やっぱりタニタで働くと楽しい。やり甲斐があるから、一緒に仕事をしたい」と思ってもらえること。そのためにチャレンジングなプロジェクトを生み出し、継続していくことの方が大事だと思っています。

とおっしゃる。理想的だ。

 研修や訓練に関わっていると、高いスキルを身につけたら、転職する人が増えて人材が流出するのではないかと心配する幹部の意見を耳にすることがある。「そんなのとより、処遇を改善しろよ!」「環境を改善しろよ」思ってしまうのだが...

 この制度を利用すれば、能力を持った人はフリーランスになったり転職しやすくるのは事実だ。人材流出を防ぐために、人事を年功序列にしたり、能力の有無によらず報酬を横並びにしたのは、昭和の働かせ方だ。

 この制度を運用するなら、能力が高いが働きたくなるような職場環境を作ることが不可欠だろう。報酬よりも能力を活かせる仕事がない方が辛いと感じる者はいる。

 この挑戦的な制度の行方に注目しておこう。



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2019年8月21日 (水)

シャープトップの戴正呉氏が熱弁

シャープトップの戴正呉氏が熱弁「この会社は日本の宝」日経ビジネス (2019/08/14)

 買収から2年で黒字復活シャープ会長兼社長の戴正呉氏のインタビュー記事を読んでみた。

 シャープが迷走していたときに注目していた。株主ではないのだけれど。

 シャープの経営不振について、「私から言うのはよくありませんが」と前置きしながらも、

2010年代の経営危機は経営者の能力の問題でしょう。技術や営業など特定の職種しか経験していない人が社長になってしまった。

と手厳しい。日本については、

今、部品や材料など日本が強い企業は、同族経営の会社が多い気がします。

とおっしゃる。

 同族企業が経営者を育てられるのか同族の中から経営能力がある者に経営を任せているのかはわからない。しかし、シャープには経営者を育てる風土がなかったというのが、戴正呉氏の診立てだろう。

 興味があるのは、復活の要因は企業風土は変わったことか?戴正呉氏の手腕によるものか?だ。戴正呉氏の手腕によるものなら、戴正呉氏が鴻海に復帰すればまた業績は悪化するだろう。

 どのように変わったのかシャープの内の人の話を聞きたい。

 戴正呉氏によると、

私が2016年8月に入った時には3種類の社員しかいなかった。3分の1は能力が高く、忠誠心のある人。3分の1は転職先が見つからない人。残りが指示待ちの人です。

らしい。

 年収ランキングによると2016年の従業員数は14,544人だからそれぞれ5,000人弱ということになる。能力が高く忠誠心のある社員が5,000人もいるって結構スゴイのでは?。

 能力が高く忠誠心のある社員が全体の1/3いるのに経営難になったのなら、戴正呉氏の指摘どおり経営の問題だけど、にわかには信じられないなぁ。



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2019年8月19日 (月)

アポロ11号の通信系 <ピー音の正体>

 2019/7/20はアポロ11号月着陸50周年らしく、NHKでは連日アポロ関係の番組を放送していた。

なんだかんだで、ほとんど見てる。

 1961年当時、月面での船外活動の中継をテレビで見た記憶がある。その時は気にならなかったのだが、どうやって月から映像を送っていたのか気になって調べてみたら、「なぜ月面着陸はテレビ中継できたのか?アポロ計画の天と地を結ぶ地上局」宙畑 (2019/7/19) にあった。

 月の映像は320LPF,10FPSのSSTVをSバンド(2GHz帯)で送って、オーストラリアのパークス天文台の電波望遠鏡で受けて、シドニーからインテルサットでアメリカまで送っていたらしい。

 因みに、ダウンリンク用の送信機はTWTを使って20W出力で、月面で使ったアンテナは10feet(約3m)のパラボラらしい。(写真 参照)

 あの時代に、月を往復するロケットを打ち上げる技術も大したものだが、地球規模の通信システム(NASCOM)を構築していたのも大したものだと思う。

 
(https://sorabatake.jp/wp-content/uploads/2019/07/NASCOM-1300x763.png)

 それはさておき、

 管制センターと宇宙船との通話を聞いていると通話の後にピー音が聞こえる。懐かしい。当時アマチュア無線でもスタンバイ・ピーが流行った。

 あのピー音は、半複信方式(交互に送信する通信方式)で、双方が同時に送信しないように、片方が送信が終了して受信を始めたことを知らせるためだと思っていた。

 調べてみると、あの音は、Quindar tonesといって、管制センターが話す前(PTT ON)に2525Hz、終了時(PPT OFF)2475Hzが出力されていて、同時送信を避けることが目的ではないらしい。

 アポロ計画の通信システム(Unified S-Band)は複信方式なので、管制センターと宇宙船は同時に話すことが可能だから、送信が終わったことを知らせる必要はない。
Quindar tones の目的は 同時送信にならないためではなくて、管制センターが話さないときに宇宙船に送る音声をミュートするために使っていたらしい。ミュートしないと、宇宙船では無通話時に回線のノイズや管制センターのバックノイズが聞こえて鬱陶しいのだそうだ。


このページでQuindar tone入りの通話が聞ける。(http://soundandthefoley.com/category/quindar-tones/)


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2019年8月17日 (土)

面接試験

 今年も昇任試験の時期がやってきた。

 これまで、論文試験について書いた。

 論文試験の他に面接試験があるのだが、面接官をやった人は、面接の練習をしすぎているのではないかとおっしゃる。受験者の回答が判で押したようだというのだ。話を聞くと、仕事に取り組む姿勢とか、誠実さ、地頭の良さが判るくらいの人生経験はある。面接官をバカにしてはいけない。と。

 歴代の質問を集めたアンチョコが出回ったりするから、皆、模範回答を答えるようになる。

 学生が就活のときに同じようなリクルートスーツを着るのと同じだ。

日経電子版に 

「仕事の風景(1)就職氷河期、個性は封印」2010/9/16付 日本経済新聞 夕刊
(https://www.nikkei.com/article/DGKDZO14757260W0A910C1MM0000/)

という記事があって、その記事に載っている写真がこれ↓


↑2010年の入社式
 
↑1986年の入社式

 服装は特に決められたものではないし、リクルートスーツで他の受験者より印象が良くなることはない。しかし、少なくとも他の受験者より悪くなることはないという考え方だ。

 面接でも予め練習した模範回答をしていれば、少なくとも、他の受験者より悪くなることはないと考えるのではないだろうか。そして、模範回答を練習した上司は部下に模範回答を指導するので、就活生のリクルートスーツのようにはびこる。

 昇任に不可欠なものは「覚悟」だと思う。上位の職に就く覚悟だ。
その「覚悟」を決めるには自問自答が必要だ。面接では自問自答した結果に照らして答えればよい。

 その覚悟が、組織が求めるものと異なれば、不本意な結果になるかもしれない。
しかし、自問自答したことは無駄ではない。少なくとも模範回答を覚えるより創造的だ。

 昇任試験の面接で予め練習した模範回答を答えるのは、「上司の言う通り模範回答を覚えました。」とか「私の人生は他人と横並びです」と公言するようなものだ。そして、それが評価される組織は、命令に従順に従い、組織の和を重んじる者を求めている。つまり、社畜を求めているということかもしれない。

 昭和の時代は、あえて社畜になる選択肢もあったが、今時、社畜を目指すのはリスクが大きいと思う。



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2019年8月15日 (木)

モチベーション3・0 <もうアメもニンジンも要らない>

モチベーション3・0 ──持続する「やる気!」をいかに引き出すか
著:ダニエル・ピンク 訳:大前研一 講談社

  
↑(https://shop.r10s.jp/rakutenkobo-ebooks/cabinet/6130/2000003826130.jpg)

 MITのダグラス・マグレガー教授が、マネジメントの考え方をⅩ理論からY理論へと移行させる必要があると説いたのは1960だから60年も前だ。 そして、この本が出たのが10年前だ。

 しかし、周りを見るとX理論が廃れる様子はない。
やる気の話しになると、アメとムチが登場するし、年寄りは信賞必罰という。

行動科学者は、仕事と勉強を、「アルゴリズム」(段階的手法またはルーチンワーク)と「ヒューリスティック」(発見的方法)の二つに分類することが多い。

らしい。

 外発的動機付け(アメとムチ)はアルゴリズム的な仕事には効果があるがヒューリスティック的な仕事には効果がないらしい。

 20世紀は工業化、標準化の時代でアルゴリズム的な仕事で成長した時代だから、外発的動機付けが有効だった。 皆アメとニンジンで働いていたのだ。

 将来は、アルゴリズム的な仕事はAIとロボットの仕事になるからアメは必要なくなり、人間がやるヒューリスティック的な仕事は、内発的動機付けでなければモチベートできなくなるのかもしれない。

 まず自分自身をモチベートしようとすると、内発的動機付けの方が断然簡単だ。


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2019年8月11日 (日)

74HC181 <4bit ALU>

ヤフオクで74HC181が出ていたいのでポチってみた。4個で2,500円でお手ごろだ。

74hc181x4

74LS181と14581は持っていた。

14581 74ls181

74181や74F181は秋葉で見たことがある。

今時はTTLといっても74HCシリーズ(CMOS)を使うので74LS181を使おうとするとレベルが違うので74HCTシリーズを使わなければならない。(まじめに作るろうとすると)

74181は4bit ALU(Arithmetic and Logic Unit)算術論理演算で、四則演算や論理演算ができるICだ。昔昔、コンピュータが標準ロジックICで作られていたときには、74181が使われていたそうな。

標準ロジックICでコンピュータを作っている人がけっこういる。(TNACOM-1とかRETFORとかweb-ringもある) 今時はFPGAやCPLDを使うと簡単にできるようになったけど、標準ロジックIC作ってみるとCPUアーキテクチャが理解できるようになる。

簡単なのは「CPUの創りかた」で紹介されているTD4だ。標準ロジックで4bitのCPUを作るというもの。

CPUの創りかた

実際に作ってみた

Td42

TD4の演算は加算だけなので、四則演算や論理演算ができるようなCPUを作ってみたくなる。そうすると、でも紹介されている74181(ALU)が必要になる。

ところが、今時、ALUはCPUの中に一体化しているので単独で使う用途は無くなってしまったので流通在庫を探すしかない。webショップでTTLを売っていると、つい181で検索してしまう。部品屋でTTLを売っていると、つい引き出しを開けてしまう。(変なおじさんだ)


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2019年8月 9日 (金)

IT音痴な経営陣にセキュリティーの大切さを理解させる方法

セブンペイ問題に見る、IT音痴な経営陣にセキュリティーの大切さを理解させる方法  エンジニアTYPE (2019/08/02)

 日本マイクロソフト テクノロジーセンター センター長の澤円氏の連載にこんな記事があった。

澤円氏は

重要なのは「役員たちにセキュリティーについて完全に理解させる」ということを目指さないようにすることです。矛盾しているように思えるかもしれませんが、前提知識のない人に理解させようとするのは、無謀です。

とおっしゃる。

同感だ。

 頭の良い人でも、前提知識+αくらいしか理解できない。

 それよりも、始末が悪いのは、「技術屋崩れ」や「自称理系」の人達だ。当の本人は説明を聞いたら理解できると思ってる。(実際に口に出す人もいる。)

 今時、技術は細分化されているから専門外の技術は勉強していなければ完全に理解できるものではないし、説明する側も完全に理解できていない部分がある。

 このような人に限ってザックリ理解するのが苦手だ。しかも、どうでもよい些細なことに拘る。 そして、最後に「もっと、わかりやすく説明してくれ。」とのたまふ。

 頭が良い人は、ザックリ理解して、肝心なところは正確に理解しているような気がする。


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2019年8月 7日 (水)

360度評価 <そんなに簡単じゃない>

「上司を評価」全省庁で 今秋から ハラスメント防止へ  日経新聞電子版 (2019/08/05)

 中央省庁で360度評価が始まるらしい。

360度評価するなら

  • 匿名性をいかに担保するか
  • 部下からの評価はどのように反映されるのか
  • 上司は部下からの評価を受け入れられるのか

について十分な検討が必要だと思う。

 気になるのは、目的としてハラスメント対策が表に出ていること。穿った見方をすると、部下の不満を発見すること。セクハラ・パワハラ上司を取り締まることのようにも見える。つまり、360度評価で組織内のネガティブの感情に対応しようとしているということだ。

 本当にハラスメント対策なら、おそらくうまく運用できないだろう。

 人は管理職になると、ともすれば裸の王様になり、自分自自身客観的にを見ることができなくなりがちだ。だから、自分自身を客観的に認識して、マネジメントの問題を改善するなどのポジティブな目的に使用するなら、360度評価は有効だ。 

 しかし、組織内のネガティブな感情に対応するのが目的ならば効果は無いと思う。

 360度評価される者は少なくとも謙虚でなければならない。ところが、謙虚にパワハラする者を見たことは無い。謙虚でないからパワハラするのだ。

 謙虚でない者は360度評価の結果を受け入れられないから、360度評価してもパワハラは無くならないだろう。

 パワハラ・セクハラの被害者はここぞとばかりに酷評するだろう。それは当然の感情だがネガティブの感情は何も生み出さない。チクリ文化が生まれるだけだろう。

 そんな組織で管理職になりたいだろうか?

 自主的に360度評価されてみた経験では、部下から評価されることに対する心理的な抵抗感は拭えないし(ちっちぇな。自分)酷評されることへの恐れもある。(能力がないだけだけど) だから、マネジメント能力を向上させようという意思が無ければ、正直御免被りたいところだ。

結論
360度評価するなら

  • 匿名性をいかに担保するか (パワハラ野郎の報復人事は怖いよね)
  • 部下からの評価はどのように反映されるのか (組織や上司が変わらないならリスクは避けるよね)
  • 上司は部下からの評価を受け入れられるのか (部下の評価を素直に受け入れる人は360度評価は必要ないよね)

について十分な検討が必要だと思う。



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2019年8月 5日 (月)

囲碁とAI(3) <なんとなくわかったこと>

 将来AIに仕事を奪われるのような議論が多くなってきた。囲碁の世界では「AIに仕事を奪われる」が現実になってきているわけだ。ならば、プロ棋士の対応や何を考えているのかを知れば、将来AIに仕事を奪われない方法がわかるのではないかと、囲碁とAIについて考えている。

21世紀政策研究所が開催した座談会の議事録を見付けた

プロ棋士から見た AIと人 ―これからの経営・社会への示唆― (2017/10/31)

Ai


 松尾豊教授他の研究者と将棋界から羽生善治三冠(当時)、囲碁界から王銘琬九段、大橋拓文六段が参加している。

 AIが導いた回答について思考過程や判断基準が分からないこと、AIソフトが打った手の意味が分からないことについて、王銘琬九段は

意味は分からないですけれども、その手が数値によって判断されたということは分かる。それに対して相手がどう応じてくるかも示して、その後、自分はどうするべきか、ということも示してくれます。そうすると、これはやはり人間との比較になるのですが、個人的な感覚として、そこまで正確に示してくれる人間はいないと思います。そういう意味では、AIとなら、それなりに検討が成り立っていると感じています。

とおっしゃる。

 画像データの中からから猫を見付けるような認識ではなく、囲碁AIのように過去の状態に影響される判断は、判断の候補の履歴を見ると判断基準が分かってくるのだろう。

 囲碁AIは感想戦ができないと言われるが、王銘琬九段は詳細なログがあると検討できるとおっしゃる。囲碁AIは人間より強くなっているから、素人が見ても分からないだろう。王銘琬九段はトッププロの棋力があるから囲碁AIのログが検討の参考になるのだと思う。
 
 仕事を奪うようなAIが現れたら、AIの判断を解説したり、判断理由を合理的に推測するような仕事も新たに必要になるのだろう。そのときに必要なことはAIを適用した分野の専門的な知見ではないだろうか。

 囲碁AIは100%か0%かのような二元的な判断ではなく確率で判断している。AIに判断を委ねることが不安な人はこのことを指摘するわけだが、人間も100%か0%かで判断していることは少ない。

 自分が意思決定するときのことを考えてみると、切羽詰まると丁半で決めているが、冷静なときほど複数の方法を考えて成功する確率が高い方法を選んでいる。

 人間が言う「○○だと思います。」の妥当性を他の人間が判断するときは、なんとなく信用できそうだからとか、堂々としていたからとか、到底論理的でもなく、数値化できない要素で判断している。

 であれば、AIが導き出した確率が数値で示される方が、第三者的には理解しやすいのではないだろうか。

結論

  • 仕事を奪うAIが現れても、専門家には新たな仕事が生れる。
  • AIの判断基準は人間より分かりやすい。


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2019年8月 2日 (金)

囲碁とAI (2) <何冊か本を読んでみた>

 囲碁や将棋の政界ではAIを活用したソフトが人間より強くなってきて、AIが人間を超えた!のようなニュースも目にすることが多くなってきた。

 昔から将棋ソフト、囲碁ソフトに興味があったのでこの分野に注目していた。将棋ソフトは着実に、囲碁ソフトはあっという間にプロ棋士に勝つまで強くなってしまった。

 一方で、囲碁・将棋以外では将来AIに仕事を奪われるのような議論が多くなってきた。囲碁の世界では「AIに仕事を奪われる」が現実になってきているわけだ。そこで、プロ棋士の対応や何を考えているのかを知れば、将来AIに仕事を奪われない方法がわかるのではないだろうか。

 知り合いにプロ棋士はいないので、手始めに本を読んでみた。

 まずはAIの研究者の観点。 著者の斉藤康己氏は長くAIを研究されている方。

アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか 斉藤康己 KKベストセラーズ

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 AlphaGoはGoogleが買収したDeepMind社が開発した囲碁ソフトで、トッププロのイ・セドル九段との5番勝負で4勝1負と圧勝したことで有名だ。

 斉藤康己はAlpherGoがイ・セドル九段に圧勝した理由は

  1. 深層畳み込みニューラルネットとモンテカルロ木探索の組み合わせ。
  2. 圧倒的なマシンパワー。
  3. 二つのニューラルネットの精度の良さ。

で、唯一勝利した4試合目での一手について、

イ・セドル九段の一手(白78の割り込み)を「神の一手」と評するものも現れたほどでした。囲碁プログラムの専門家の目には、後ほど説明する「モンテカルロ木探索」という手法の、悪いところが露呈した対局に見えました。

と分析されている。水平線効果と言うらしい。

 次にプロ棋士の観点。

囲碁AI新時代 王銘琬 マイナビ出版

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 この本は、囲碁ソフトと人間との棋譜の解説が多いので、碁を打つ人向け。

 著者の王銘琬九段は

人間がコンピュータから着手のヒントを得たとしても、伸びる余地は少ない。NDA改造でもしない限り、人間にディープラーニングのような改良はできないのです。
 いまは「どっちが強い?」という時期を脱しつつあり、AIのパフォーマンスを楽しみながら自分との関係を考える時期に入ったのではないでしょうか。

とおっしゃる。

 王銘琬九段は、囲碁ソフトTOTRENDの開発チームに参加されていたらしく、AIや囲碁ソフトに造詣が深いようなので、もう一冊読んでみた

棋士とAI ──アルファ碁から始まった未来 王銘琬 岩波書店

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この本は、碁を打たない人向けに書いてある。

 昔は囲碁ソフトの開発には棋力が必要だったが、今は棋力は必要ないらしく、中国の最強囲碁ソフト「絶芸」の開発チーム13名は全員碁が打てないらしい。 つまり、自ら学習し強くなるソフトが造れるようになったということだ。

 必要なのは大量のデータ(棋譜)だが、囲碁ソフトの場合対局データも囲碁ソフトだけで作ることができる。これが、囲碁ソフトが急激に強くなった一因だろう。

 王銘琬九段は

いまのAIは汎用型AIではないから怖くないとも言われていますが、棋士から見れば、いまの特化型AIでも十分怖いと思います。人間がアルファ碁に負けたことは、すなわち人間の敗北であるとは思っていないし、「AIも人間が作ったものですから、やはり人間の勝利です」という言い方にも納得いっていません。人間が人間らしさという価値を捨て、効率のみを追求するAIの答えに合わせると決めた時こそ、人間の敗北だと思っています。

とおっしゃる。

 AIの奴隷(言いなり)になってはいけないということだろう。

 自分で考えないで言われたことだけやっている人は、言うことを聞く相手が、上司からAIに変わるだけで、あまり変わらないのかもしれない。


*王銘琬(エン)九段の「琬(エン)」は王ヘンに宛



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