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2021年5月

2021年5月23日 (日)

GIGAスクール構想のハードウェア

GIGAスクール構想でChromebookがシェアを拡大する一方でiPadが苦戦している理由  @DIME 2021.05.16

GIGAスクール構想で導入されている端末は、Chromebookが44%、WindowsとiPadがそれぞれ23%くらいらしい。思いの外Chromebookが多い。

ICT業界にいる人は配布されるハードウェアに目を奪われてがちだが、ChromebookかiPadかWindowsかは些細な問題だ。問題は他にたくさんある。

◯結論を先に
大人が、GIGAスクール構想を理解しなければならない。

  • 保護者、特にICTに詳しい保護者は教育現場を知る努力をすべきだ。貢献できることが沢山ある。
  • 教育者、特にICTに疎い教育関係者は外部の知識を活用する努力をすべき。
  • 教育行政に携わる人は、目的とビジョンを、役人言葉でなく平易な言葉で説明する努力をすべき。

◯ハードウェア
GIGAスクール構想の整備は国が全て面倒見てくれるわけではなく、1人あたり4,5000円の補助なので、あとは自治体の負担だ。

国から昨年度中に全員に1台配布するように指示されているので、自治体の財政状況と、児童生徒数で選択肢が限られる。予算と折り合うのはChromebookが多かったということだろう。

◯教育支援ソフト
配布される端末(H/W)に目を奪われてがちだが、ソフトも重要だ。
教師が資料を児童・生徒のPCの表示したり、教師、生徒・児童が情報を共有したり、課題を配布・提出する機能が必要だ。この機能がないと検索専用端末になる。(最初は検索にしか使われないのでは)

◯オフィスソフト
また、今時はオフィス・ソフトも必要だ。
MSOffice(デスクトップ版/オンライン版)にするのか、それとも、google アプリにするのか、iOS付属のアプリにするのかで金額が変わる。自動・生徒全員分だから馬鹿にならない。

現在、社会はMS-Office全盛だからMS-Officeが良いだろうと考えるのは早計だ。教えるべきはWord、PowerPointを使って印刷物を作る技能ではなく問題解決にワープロ・ソフト、プレゼンテーション・ソフトを使う方法だ。

◯後年度負担
さらに、今回の整備は国の補助があるが、リプレース時に補助があるかどうか分からない(国民の関心次第)ことを考えると、初回整備で無理をするとリプレースできなくなるかもしれない。

リプレース時期を延延ばしても子供に4年も5年も使わせるのは無理だろう。と考えると、持ち帰りを許可せず、たくさん制限して使いにくくせざるを得ない。 +_+)

◯回線
回線も問題で、Wifiモデルにすると学校の設備が必要だが、帯域保証すると回線料金が高いのでベストエフォートにせざるを得ない。実際20MBpsくらいしか出ない回線はあってこれを数百人が使うことになる。(授業で使用すればするほど使えなくなる。)

遠隔授業で先生の講義を配信しようとすると家庭の回線環境にに左右される。兄弟姉妹がいて、両親がテレビ会議で使っていたら、従量制や上限がある回線契約ではすべての授業で映像を配信するのは難しい。

LTEモデルにすると校外学習で使えたり、家庭で家族に気兼ねなく使えるのだが、ランニングコストが高い。

先進的な取り組みをしている学校では既に学年単位で1人1台PCを整備した学校があるようだが、GoogleやMS、キャリアに協力してもらっていたようだ。さすがにキャリアは全て面倒見れない。

◯予算
予算の制限があるなら、何を重視するかは自治体(教育委員会)次第だ。ところが、教育委員会には現場を知る人が少ないらしい。いたとしても教師には予算獲得、契約などの役人仕事は難しいだろう。

「将来の日本のために教育は最優先課題」は超正論で若い世代には受け入れられやすい。しかし、高齢者や高齢者率が高い自治体にとっては高齢者福祉政策の方にに関心があるだろう。

だから、トップのリーダシップが必要だ。

環境整備が進んでいるのは教育に力を入れている地方の自治体で、コロナの前から1人1台配布されていたりする。子供が少ないので予算額が少ないから、トップが裁量できる範囲におさまる。自動・生徒の数が多いと選択肢は少なくなる。

Chromebookのシェアが多いのは、予算という制限の中での妥協の産物かもしれない。

◯結論
環境を整備する人、教える人、保護者など、全ての大人に、GIGAスクール構想を理解している人が少ないように思う。子供たちがパソコンを使うことが目的ではないし、授業でICTを使うことが目的でもない、ハードウェアは道具に過ぎない。

ネットを見ていると、手段や道具についての議論が多いようだ。自分が詳しいところについて、行政や教育現場を批判する人は多い。しかし、目的を理解した上での批判でなければ、世の中は変わらない。

  • 保護者、特にICTに詳しい保護者は教育現場を知る努力をすべきだ。貢献できることが沢山ある。
  • 教育者、特にICTに疎い教育関係者は外部の知識を活用する努力をすべきだ。ICTを使うことでできなかったことができるようになる。
  • 教育行政に携わる人は、目的とビジョンを、役人言葉でなく平易な言葉で説明する努力をすべきだ。一般時は役人言葉を理解できない。

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2021年5月15日 (土)

GIGAスクール構想の後

EDIX Tokyo 2021に行ってきた。(教育総合展2021 (2021/05/14))

人ごみをかき分けるのは気が引けたので、朝一から最後までセミナーを受講した。
立命館小学校 ICT 教育部長 正頭英和先生の講演が良かった。

話題はGIGAの後何をすべきか?

「チョーク黒板さえあれば授業はできる」のような話を聞くことが多かったので、ちゃんと考えている現場の先生もいるんだと安心した。

GIGAスクール構想は生徒・児童に端末端末を配ることが目的ではないし、紙と鉛筆をICTで置き換えることが目的ではない。ICTを使うと授業が効率化できて、これまで8時間必要だった授業が6時間でできるようになる。生み出した2時間で何を教えるかが重要だとおっしゃる。

現場には、ICTvs紙と鉛筆、1人1台端末は必要vs必要ない、教えられるvs教えられないという二項対立問題として捉える教師は少なからずいる。今後教師が生徒・児童に、教えられないことは今以上に増えるだろう。これまでは正解があって教えらることしか教えていなかったから、顕在化していなかっただけかもしれない。

正頭英和先生は、教師は教えることから生徒・児童と共に体験することが必要だとおっしゃる。

正頭英和先生が紹介された事例が良かった。

小学5年の児童がある日「先生、メガロドンは生きてると思う」と言ってきたそうだ。
先生自身はメガロドンに詳しいわけではないから、スマホを使ってWikipediaで調べたら360万年くらい前に絶滅したサメだということが分かったらしい。

大人はつい「絶滅していると書いてあるよ」と言ってしまいがちだが、先生が「何でそう思うの?」と尋ねたたら、その児童の答えは要領を得なかったそうだ。

そこで、サメの研究者を調べて電話したら、その研究者がzoomで授業に参加してくれることになったらしい。(すごいフットワークだ)
「メガロドンは生きていると思う」と質問した児童に対して、研究者の先生は「ぼくもメガロドンは生きていると思う」と答えたそうだ。
そして、メガロドンが生きていることを証明できる条件を教えてくれたそうだ。

その児童は六年生になって、メガロドンが生きていることの証明に取り組んでいて、将来サメの研究者になりたという希望を持っているそうだ。

先生も知らないメガロドンに関する児童の興味を問いに変えて、さらにその問いを、自律的な学習につなげている。おそらくその児童の自律的な学びは続く。

重要なことは、こどもが発信したこと疑問に変えることだ

正頭英和先生によると、子供たちからいきなり疑問が出てくるわけではなくて、嬉しいこと、悲しいこと、困ったことは発信されやすく、教師はそれを見つけて問いに変えることが必要なのだとおっしゃる。そして、その問いの答えは教師が教えるのではなく、子供が自ら見つけるものだと。

とはいえ、この考え方を具体的な行動に落とし込まなければ、現場でこどもたちに寄り沿うことはできない。

具体的な行動として次の3点を、正頭英和先生は挙げられた。

  1. その子の持つ少し外の情報を与える
  2. 子供の発信を問いに変える
  3. 小さな問いを大きくする

こどもたちへの対応を一言でうと、
「スピード・ポジティブ・ハイテンション・フィードドバック」
らしい。

教師に求められる役割は変わったようだ。

知識を子供に教えることから、こども自信が自ら学び自ら答えをみつける行動様式を身につけさせることになった。

質問をした児童が将来サメの研究者になって、メガロドンを発見したらすごいことだ。
もし、そうなったときに正頭英和先生の最大の功績は、児童の可能性を潰さなかったことだろう。

大人が子供の可能性を潰ぶさなければ、大人たちが解決できなかった問題を子供たちが将来解決してくれるだろう。

日本の教育界も捨てたもんじゃないと思う講演だった。


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2021年5月 6日 (木)

日本の教育はダメじゃない

日本の教育はダメじゃない ─国際比較データで問いなおす
小松 光(こまつ・ひかる)ジェルミー・ラプリー 筑摩書房

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 何かと批判される日本の教育について、データを見ると識者が言うほど悪くわけではなく、エビデンスベースで議論すべきとおっしゃる。ピザティムズピアックなどのデータを示して客観的に論じてある。

 結論は、日本の子供は学力が低くないし、創造性も低くないという。

 教育は効果が現れるまで時間がかかるから、現在の社会の状況と、現在の教育制度を関連付けて議論するのは無意味だ。 現在の教育制度の評価が明らかになるのは、現在教育を受けた子供たちが未来社会を担うようになってからだ。

 ピザでは「創造的問題解決」のテストも実施していて、参加44カ国日本は3位らしい。しかし、違和感がある。 実感としては「問題解決能力」の高低より、問題を解決しようとしない姿勢に問題を感じる。

 ICT業界にいたときに感じたことは、最近の若い人たちは能力がありながら、その能力を身近な問題解決に使わず、誰かが問題を解決した手法を真似ようとする。後に、小学生にプログラミングを教えたときに感じたことは、先生が答えを言うのを待っている子が多いということだ。 中には、違う問題の答えを考えたり、アートに没頭したり、違う楽しさを発見して、先生の答えを待たない「創造性」を発揮する子が少数だけどいる。

 仕事を始めた若い人たちが、自分の能力を問題解決に使わないのは、教育の結果なのか、日本人の習性なのかはわからない。しかし、少なくとも小学生ですでに「創造性」より、先生が言う正解を待っている子は多い。

 考えてみると、それは、大人の要請ではないかと思う.大人や大人の社会が「創造性」より「正解」を求めているのだ。

 この本では、「キャッチアップ精神」と表現されている。明治以来の、欧米の成功例をなぞる姿勢だ。

キャッチアップ精神が生き続けているから、日本人はアメリカ人・イギリス人と比較して、能動性・自立性が欠けている(アクティブでない)と感じられるのです。そして、その欠落を埋めるために教育を変えれば、日本の子どもたちは創造的になり、最終的に日本の経済や社会が良くなると信じられるわけです。

とおっしゃる。

 冒頭に述べたが教育において成果が現れるには時間がかかる。 だから、欧米に成功例を発見したら、それは何十年か前の教育制度の成果だ。 今時、何十年か前に欧米で流行った教育制度で、未来を生きることどもたちを教育するのは無理があるよなあ。


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