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2019年10月11日 (金)

高校国語学習要領 <問題の所在が誤っている?>

 高校の国語の学習指導要領が新しくなって「論理国語」が新設されたらしい。著名人のウケは芳しくない。

 この変更の背景はOECD生徒の学習到達度調査(PISA)の読解力の成績が低下したことが影響しているらしく、「論理国語」の新設は読解力を向上させることが目的だろう。

問題の所在

 日本語で記述された文章から内容や情報を読み取るには。

文字→単語→文→文章→意味→意思・情報

の変換が必要だ。文字や単語、文は初等教育で学習する。

 読解力が低いのは「文章→意味」の変換能力が不足しているということだ。これは、Reading Skil Test(RST)を実施している「教育のための科学研究所」の所長新井紀子氏が「AIに負けない子供を育てる 東洋経済新聞社」で指摘しておられる。

 これまでの国語教育は、日本語の、表現手段、伝達手段と表現された内容、伝達された情報を区別していなかった。また、文学作品において登場人物の心情や作者の意図を教える内容が重要視されているから、文学偏重という人は多い。今回の変更で新設された「論理国語」で文章から論理的に情報を読み取る方法を教えるのだろう。ところが、文学も論理構造も文章によって表現された内容や伝達された情報に変わりはない。

 ネットでは「文学なき国語教育」などの議論が多い。しかし、これらの議論の多くは問題の所在を誤っているのではないだろうか。問題は国語教育で扱う「文学」か「論理」かではなく、文学作品や論理的な文章を読み解くために必要な、文章の意味を理解する能力が不足している生徒がいること。さらに、文章の意味を理解することができない生徒がいる事実を、国語科の教師が認識していないことだ。

 国語科の教師には「読めばわかる」ことをなぜ教えるのかという。しかし、意識することなく「読めばわかる」ようになったであろう国語科の教師には「読んでもわからない」生徒がいることが解らないのではないだろうか。

  「AI vs 教科書が読めない子供たち 新井紀子 東洋経済新報社」にある「アミラーゼ問題」は次のような問いである。

次の文を読みなさい。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
セルロースは(     )と形が違う。
(1)デンプン (2)アミラーゼ (3)グルコース (4)酵素

 正答は問題文の中に書いてあるから、読めばわかる。しかし、新井紀子氏は答えられない日本人が多いことを指摘している。ネットの議論でも、意識せず「読めばわかる」ようになった識者は、「読んでもわからない」人がいることを認識していないのではないだろうか。

 国語科以外の教師は、「読んでもわからない」生徒がいることを知っている。「読めばわかる」ように書いてある文章問題を出題したときに、生徒は答えが分からないのではなく、題意が理解できないことは、教師なら容易に判定できるだろう。

 読解力が不足している問題は国語科だけの問題ではない。国語科以外の科目の教師は、まず、国語科の教師にこの事実を理解させる必要があると思う。

高校国語の指導要領改訂の影響

 新井紀子氏の著書によるとRSTのスコアと偏差値に相関が認めらるらしいので、読解力も偏差値と相関があると考えられる。高校生は偏差値で入学できる学校が輪切りにされているから、偏差値の高い高校では読解力向上の授業は必要はなく、読解力向上の授業は偏差値の低い高校で必要だろう。つまり、「論理国語」はすべての高校生が学ぶ教科ではないということだ。

 文科省は、「論理国語」「文学国語」を選択にしており、必要に応じて選択するべきと主張している。しかし、多く識者が指摘するように、大学入試対策という観点では難解な科目より容易な科目が選択される。その結果、「文学国語」が選択されなくなるのではないだろうか。

 指導要領改訂の改訂が「文学」が理解できる能力を持っている生徒の文学を学習する機会を奪うとすれば問題だ。


参考



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