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書籍・雑誌

2018年7月17日 (火)

アメリカ陸軍リーダーシップ リーダーシップは進化している

アメリカ陸軍リーダーシップ フランシス ヘッセルバイン、リチャード キャバナー  生産性出版
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 日経ビジネス 2010.9.13 「軍隊式マネジメント 戦場の指揮官から学ぶ」 (指示しないマネジメント(2018/04/28))で紹介されていたので読んでみた。

 「マネジメントとリーダーシップの違い」でジョン・コッター氏は、戦時下の軍隊ではあらゆる階層で優れたリーダー・シップが必要になるとおっしゃる。 軍隊はいかにも官僚的組織の象徴のように例えられることが多い。これは戦時下ではなく平時のことだろう。
戦時中、特に戦闘中には官僚組織の逆機能は命取りになる。

 大量の指揮官が必要な軍隊では、指揮官にふさわしい人材の確保が問題になる。

  「日本型リーダーはなぜ失敗するのか」(16/01/05)や「不死身の特攻兵」(2018/07/05)を読むと先の戦争では、日本軍は指揮官にふさわしい人材が十分に確保できていなかったようだ。 育成できなかったというべきか。

 日本は先の戦争以戦争を経験していないから、この教訓を忘れてしまったのだろう。
今でもリーダーにふさわしい人材の育成について考えられていないような気がする。

 一方アメリカは今でも戦争をしているので、この問題は切実で、その解決策が リーダーシップの原則「Be Known Do」や自主的討議AAR(fter Action Review)なのだろう。

「Be Known Do」

「Be」とは
リーダーとして「どうあるべきか」と」いう品格
具体的には、忠誠、義務、尊敬、無私の奉仕、名誉、高潔、個人的勇気
「Known」とは
リーダーとして「何を知るべきか」というスキル
具体的には、対人スキル、概念的スキル、技術的スキル、戦術的スキル
「Do」とは
リーダーとして「取るべき行動」
具体的には、影響、実施、改善

 戦場ではリーダーとして判断を求められたときに、誰の助けもなく決断しなければならないことがある。 ところが、これまで経験したことがない状況では、たくさんの正解や最適解を知っていても正しく判断し決断することはできない。 そのときに、少なくとも判断を誤らないために、立ち戻る原則が必要だ。

 それがこの原則で、判断に困ったら、「Be Known Do」に照らして判断すれば、誤ることはない。

 硬直化した官僚組織の原則は、「困ったら上に聞け」だったりする。 戦場では死んでしまう。

AAR

 AARの要点は

  • 出来事の途中か、その直後に実施される。
  • 特定の標準へ関連づけ、意図された目標へ集中する。
  • 兵士、リーダー、部隊の遂行へ焦点を当てる。
  • 参加者全員を討議へ参加させる。
  • 「解放型質問」を使用する。
  • 強みと弱みを確定する。
  • 遂行を、引続く訓練へと関連づける。

で、重要な点は、階級に関係なく出席できて発言が許されていることだ。

具体的にはファシリテータは4つの質問を使うらしい。

  • 「われわれは何をやろうとしたのか?」
  • 「実際に行動した結果、どんなことが起きたのか」
  • 「なぜそうなったのか?」
  • 「この失敗を踏まえ、次に何をするべきか?」

これが、アメリカ陸軍が、命の懸った戦場で学んだ、「現場における最適な学習方法」ということだろう。

軍隊以外への応用を考えると

 このマネジメント手法は合理的な思考を尊重する風土があったり、小規模で意思決定が速い組織ならなら有効だろう。

 では、肥大化して意思決定者が増えすぎた組織ではどうか?
残念ながらそのような組織は合理的ではないから、このマネジメント手法を導入すること自体が難しいのではないだろうか。

 しかし、組織全体で導入するのは難しくても、所属、部、課、係などの小さな単位ならばリーダー次第で導入は可能だろう。

 オペレーションが成功しても失敗しても結果から学び次の成功に繋げる風土を作るのはリーダーの仕事だ。


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2018年7月11日 (水)

失敗の本質 経験から、歴史から学んでいない

失敗の本質 
戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎
ダイヤモンド社

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 この本を読むと憂鬱になる。10くらい年前に読んだ時もそうだった。

 合理的でない命令で大勢の人の命が失われたことだけでなく、命令する者が合理的に選ばれていないこと、失敗に学ばないことなど、この本で失敗の本質と分析されたことが、身近に多い。多すぎる。

 戦後70年経っても、失敗から学べない体質は変わらないようだ。

 10年くらい前に読んだ時は命令される立場だったから戦術に着目していた。 10年経って役職が上がったら戦略が気になるようになった。 そして、日本軍には戦略は無かったことがわかった。

 戦略が無い戦争に勝利することはない。

著者の先生方は

 戦略的思考は日々のオープンな議論や体験のなかで蓄積されるものである。海兵隊は、水陸両用作戦のドクトリンを開発したときには、海兵隊学校の授業をストップし、教官と学生が一体となって自由討議のなかから積み上げていった。このような戦略・戦術マインドの日常化を通じて初めて戦略性が身につくのである。

とおっしゃる。

 戦略を伝えるには分かり易いキャッチフレーズが必要だ。 ミドルのマネジャはトップは考え抜いて分かり易いキャッチフレーズに乗せた戦略を理解しなければならない。 ところが、深く考えないでキャッチフレーズを実行しようとしてしまう。思考が停止しているのだ。

 現場のマネジャが戦略を考える場を設けているのだが、現場レベルで戦術を考える必要はなく「上が戦略・戦術込みで分かり易く指示すべきだ」という意見は多い。 

著者の先生方は先の戦争での戦闘について

 第一線でかなりの程度までの命令遂行が行なわれたのは、戦闘部隊が練達した戦闘伎倆の瞬時における迅速果敢な展開により、抽象的な戦略布達を補って余りあるものを発揮したからである

と分析しておられる。

 現場レベルで見ると、戦略の無さ補うだけの戦闘の技量と、それを指揮する指揮官がいたということだろう。

 現場のマネジャが思考停止していては、戦略の無さを補うことはできないし、戦術の無さを戦闘で補うことはできないから、上と下を責めるだけでなく、自ら戦略を理解し採るべき戦術を考えなければならない。

 どうやって説明すると伝わるのだろうか...


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2018年7月 5日 (木)

不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか

死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか 鴻上尚史

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 鴻上尚史氏は、特攻の記録の多くは「命じた側」によって書かれているという。

 命令する側の者は自らが下した命令が間違っていた場合に、自己批判する者はおらず、自己弁護する。 だから、特攻は命令や断れない状況下での形式ばかりの志願であっても、志願であったことにする。 そして、命令した者は生きて、命令された者は死ぬので特攻は志願であったことになる。

 この不条理は、現代社会でも其処此処に見れれる。

 そして、

 一般論を語れば、どんな社会的な運動も「当事者」より「傍観者」の方が饒舌になります。思い入れを熱く語るのは、当事者になれなかった傍観者、または当事者になりたかった傍観者です。

 特攻が志願であったことは、命令した者でも、命令された者でもなく、近くにいた傍観者によって語り継がれているという。

 特攻を命じた側と命じられた側だけでなく、そばで見ていた傍観者という観点が新鮮だ。

 鴻上尚史氏は、命令する側の資質について、

職場の上司も、学校の先生も、スポーツのコーチも、演劇の演出家も、ダメな人ほど、「心構え」しか語りません。心構え、気迫、やる気は、もちろん大切ですが、それしか語れないということは、リーダーとして中身がないのです。

とおっしゃる。 高校野球を例に挙げて、指導能力の無い者が頼るのは精神論であると。

 官僚型の組織においては上司の命令に従わなくてはならない。 命令が適法で実行可能であれば、効果が無いことを理由に命令を拒否することはできない。

 軍隊等の組織では確実に命令が遂行されなければ戦闘に勝利することはできないから当然といえば当然だ。

 その根底には上司は部下より妥当な判断をするという前提がある。 であれば、少なくとも組織は妥当な判断ができる者を選別してその地位に就ける責務がある。

 しかし、軍隊のように大量の指揮官が必要な組織では簡単ではない。 この問題が如実に表れたのが先の戦争ということだ。

 アメリカ陸軍ではこの問題の対策を行っているようだ。  指示しないマネジメント (2018/04/28 ) 今でも戦争している国は違う。

 一方、我が国はどうか? 終戦と同時にこの問題を忘れてしまったようだ。

 そして、今でもこの問題は続いている。


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2018年6月27日 (水)

事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴

事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴 芳賀 繁

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事故が無くならない理由を心理学から説明した本。

この本を読んで分かったことは、

  • 高い技能を提供するなら、リスク・マネジメントが必須で、大きな事故を想定しておく。
  • 最悪は能力を過信し、リスク・マネジメントもできないこと

リスク・ホメオスタシス理論

この本の中で「リスク・ホメオスタシス理論」が紹介されている。

(1)
 どのような活動であれ、人々がその活動から得られるであろうと期待する利益と引き換えに、自身の健康、安全、その他の価値を損ねるリスクの主観的推定値をある水準まで受容する。
(2)
 人々は健康・安全対策の施行に反応して行動を変えるが、その対策によって人々が自発的に引き受けるリスク量を変えたいと思わせることができない限り、行動の危険性は変化しない。

 簡単にいうと、「人はリスクが一定になるようにネガティブ・フィードバックが働く」というもの。

 例えば、防波堤ができると津波警報で非難しない人が増えたり、ABSの装着を義務付けると雪道を平気で運転するため事故が減らななどが挙げられるそうだ。

 フィードバック・ループの外側にある知覚的技能、意思決定の技能、運転操縦の技能がどれだけ改善されても事故率に影響を与えないということも、リスク・ホメオスタシス理論の重要な主張である。

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まず、リスクの基準を下げることが必要らしい、では、安全運転対策(事故対策)無駄かというと、そうではないことは説明してある。 

 事故防止を考える人は、人にはこのような性質があることを理解しておく必要がある。人はリスクを避ける性質があるという前提は危険だ。

リスク・アセスメント

 リスク・マネジメントの勉強した人は理解できるだろう。

 普通の人はリスクを受容するという観点がないからリスクゼロを目指してしまう。 ハイリスク・ハイリターンと言われるようにリターンに見合うリスクを取ればよい。 しかし、特に減点主義の組織では、取ったリスクに見合うリターンが得られないことが多いから、リスクは取らない。

リスク・マネジメント

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 自動車の運転を例に、リスク・マネジメント能力と運転技能で評価する考え方は参考になる。 注意しなければならないのは、事故は無くならないということ。

  • リスク・マネジメント能力が高ければ事故は減り、低ければ増える。
  • 運転技能が高ければ事故発生時の被害は大きく、低ければ被害は小さい。(運転技能が低いことを認識していることが必要)
  • 最悪なのは、運転が下手なのにそのことを自覚せずに能力を過信し、リスク・マネジメントもまともにできないドライバーである。

 この理論が人間個人から個人の集合である組織に適用できると仮定すると、

  • 高い技能を提供する業務では、リスク・マネジメントは必須。
  • しかも、大きな事故が起こる可能性がある。
  • 最悪なのは高い技能がないことを自覚せず能力を過信し、リスク・マネジメントができないマネジャ

ということだろうか。逆に、

 高い技能を必要としない業務は、リスク・マネジメントができていないとしても、技能が低いことを自覚していれば、事故は発生するが被害は小さい。

ということだろうか。


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2018年6月20日 (水)

軌道 福知山線脱線事故

軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い 松本創 東洋経済

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 福知山線脱線事故の遺族の淺野弥三一氏がJR西日本に対して事故の原因究明、安全体制の改革を求めた記録。

 事故発生時のJR西日本の対応や事故後の補償問題ではなく、組織的な事故防止という観点で読んだ。
分かったことは、

 組織的対応は、組織=経営層ではないから、事故防止の意識が末端まで浸透して初めて実現できる。

ということ。

 関西大学の阿部誠治教授は、福知山線脱線事故直後からJR西日本に対して

「鉄道は人とシステムの組み合わせであることを経営陣が理解できていない。人間のミスをバックアップするシステムを整備すべきなのに、社員に厳しい教育を強いればミスを犯さなくなるという誤った人間観がある」

と指摘されている。

 組織が大きくなって、現場と経営層が離れるとこのような考え方を持つ者が増えてくる。

元社長の井手正敬氏はインタビューで

「事故において会社の責任、組織の責任なんていうものはない。そんなのはまやかしです。組織的に事故を防ぐと言ったって無理です。個人の責任を追及するしかないんですよ。

 鉄道に『絶対安全』なんてあり得ない。一つ事故があったから、ここを直そう。また事故があって、あそこを直そう……その積み重ね、経験工学なんですよ。むしろ、絶対事故を起こさないという慢心こそが事故を起こすんです。事故の芽は無数にある。どれが大事故につながるか、予測できる人なんていません。だから、本社・支社の幹部は日々現場を歩き、小さな芽を見つけたら一つ一つ潰していかなきゃならない。その努力が不足していた。放っておけば、現場はすぐに緩む。楽をしようと元に(国鉄時代に)戻るんです。

 管理をするべき幹部が現場を歩いていなかったから事故を防げなかったんです。」

と発言されている。

 現場を経験していない経営層にとって事故は事後に対応すべきことだ。
分かりやすい原因は担当者のミスだ。しかし、トヨタのように5回も原因を問わない。
改善すべきは現場の担当者であって、システム、ましてや組織の風土ではないと考えている。

 そして、現場の担当者を厳しく指導すれば改善すると考えたり、気合と根性でミスを無くせと指示したりする。

 現場の経験が無いから現場の立場で物事を考えられないのは仕方のないことだろう。

 一方、現場にいるマネジャは、厳しく指導しても、気合と根性でもミスが無くならないことは知っているはずだ。 だから、経営層が考える効果の無い対策を、効果がある対策に変えることができるのは現場のマネジャしかない。

 JR西日本は事故から10年以上かけて変わったようだ。 JR西日本の安全憲章には、

私たちは、2005年4月25日に発生させた列車事故を決して忘れず、お客様のかけがえのない尊い命をお預かりしている責任を自覚し、安全の確保こそ最大の使命であるとの決意のもと、安全憲章を定めます。

とある。

 JR西日本の経営層は変わろうとしていることが伺える。 ところが、2017年12月に新幹線で重大インシデントが発生した。 新幹線台車の安全確保について (2018/2/28)

 この本は、事故の遺族vsJR西日本という構図で描かれているから、組織=経営層という暗黙の前提があるようだ。 しかし、この重大インシデントの例でも分かるように、組織的な事故防止は経営層だけで実現できるものではない。

 組織=経営層ではない。
 組織的対応は事故防止の意識が末端まで浸透して初めて実現できるものである。


 2018/6/14に山陽新幹線で人身事故が発生した。 山陽新幹線 博多~小倉駅間で人と列車が接触した事象について (2018/06/15)
 前回の重大インシデント同様、「なぜ列車を止めることができなかったのか?」が問われている。 JR西日本変わろうとする意識が経営層から現場まで浸透しているのか注目しよう。
(2018/6/20 追記)


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2018年6月12日 (火)

人生やらなくていいリスト

人生やらなくていいリスト 四角大輔 講談社

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 タイトルだけ見るとハウツー本のようだけど、内容は、世の中にある誰が決めたのか分からない常識を40個取り上げて、常識どおりにしなくていいと言ってくれる本。
例えば、5章 仕事では

  • イヤな仕事でもいい。
  • あたり前のことができればいい。
  • ていねいすぎてもいい。
  • 好きな人としかつきあわなくていい。
  • 長い時間働かなくていい。

という具合だ。

 でも、デタラメで良いわけではなく、きちんと挨拶をするとか、努力するとか、自分らしく生きるとかは必要だとおっしゃる。

 世間の常識どおり行動するのが苦手で、学校や会社の中で生きにくさを感じている人は、この本を読むとちょっとだけ勇気づけられる。

 この本に書いてある「やらなくていいリスト」は、四角大輔氏が自身の人生の中で得た教訓だから、万人に効果があるというものではないだろう。

 世の中の「常識」や「ルール」は誰かの都合で作られたものがほとんどだ。真理に基づいているものは意外に少ない。 真理に基づいていること、人として当たり前のことを真面目にやろう。少なくとも真面目にやる努力をしようということだろう。

 四角大輔氏は節目で味方になってくれたり、助けてくれる「節目の人」に出会っている。
逆に、このような人の出会いが人生の節目を作るのかもしれない。

 60年近く生きて40年近く働いていると、何人か「節目の人」と出会ったような気がする。
しかし、「節目の人」がいつ現れるかは、全く予想できない。

自分は誰かの「節目の人」になっているのだろうか?と思う。


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2018年6月 7日 (木)

非属の才能 <ただのKYではダメ>

非属の才能 山田玲司 光文社

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山田玲司氏は「非属の才能」を

絶対にその人でなければ表現できない、のちにその人そのものが新しいカテゴリーになってしまうような種類の才能。

だとおっしゃる。

 この本のはじめににある

  • 「空気が読めない奴」と言われたことのあるあなた
  • まわりから浮いているあなた
  • 「こんな世の中おかしい」と感じているあなた
  • 本当は行列なんかに並びたくないと思っているあなた
  • のけ者になったことのあるあなた

 おめでとうございます。
あなたには〝非属の才能〟があります。

を読むと、「非属の才能」はあるようだ。

 この本は誰に向けたものだろうかと考えた。

  • より大きな集団に属そうとしている人か、
  • 集団に属せなくて悩んでいる人か、
  • 誰かを教育する立場の教師や上司か、
  • 集団になじめない子を持った親か

経験から言うと、集団に属さなくてはならないと無理をしている人が読むと楽になると思う。

 集団に属することが苦手だということを認識しするようになると、集団との間合いを測って、集団のどこに位置するか分かってくる。
それは集団の端であったり、集団からはみ出したところだったり、集団から隔離されたところだったり。
集団からの同調圧力と集団に属したいという欲求が釣り合うところだ。

 ところが、いろいろな事情で、集団に属することを迫られるときが来る。
進学や就職、結婚、子供の誕生、昇進等等。

 「非属の才能」を持っているからといって、何も考えていないわけではない。皆と違うところで悩んでいるだけだ。
 自分を殺して集団に属すると目先の利益はありそうだとか、集団に属すると自分の家族に被害が及ばなくなるとか考える。

 そのように迷った時にこの本を読むと、同調圧力に屈するのはもう少し先にしようと思えるのではないだろうか。

 山田玲司氏がおっしゃるように、「どこに属しているか」より、「その人個人」の存在が問われるべき時代に必要なのは「同調能力」より「非属の才能」だから、「非属の才能」を手放すのはもう少し先で良い。

 ところで、

 この本で、山田玲司氏が言いたかったのは、集団に属しながら「非属の才能」を発揮することでであって集団に属さずに生きていく方法ではないと思う。

 7章の「非属をつらぬきながら、みんなと幸せに生きる方法」で、山田玲司氏は、同調するべきではないが協調は必要だとおっしゃる。

嫌われ者の変人になってしまうのは、「個人主義の病」にかかった人間だろう。つまり、自立した個人であるのはいいが、自我が強すぎて、まわりとの協調性を軽視してしまうのだ。

 この意見には賛成だ。 集団に同調しないで協調することができれば、「非属の才能」を活かして同調圧力の集団の中を自由に行動できるのだろう。引きこもったり、はみ出したり端っこが唯一の居場所でなくなる。

 しかし、少なくとも自分の経験では、簡単ではなかった。 皆がそうではないだろうが、

 同調圧力の中で、相談する人もない状況で、同調なのか協調なのかを判断することは難しい。 若かった頃にこの判断はできなかった。 今も、自信はない。

 同調圧力に屈しない術を習得したり、集団を自分との間合いが分かってくると、同調なのか協調なのか冷静に判断ができるようになる。 そして、「非属の才能」を発揮できるようになる。

 それまでは、許容してくれる人を見つけておくことが重要だと思う。 応援してくれるに越したことはないが、とりあえず許容してくれるだけで十分だ。


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2018年5月30日 (水)

失敗の科学 改善すべきは、人間の心理を考慮しないシステム

失敗の科学 マシュー・サイド  ディスカヴァー・トゥエンティワン

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 航空機業界も医療業界も人命にかかわる仕事だ。失敗の捉え方失敗を繰り返さない仕組みについて2つの業界を比較している。

最も大きな相違点は、失敗後の対応の違いにある。医療業界には「言い逃れ」の文化が根付いている。ミスは「偶発的な事故」「不測の事態」と捉えられ、医師は「最善を尽くしました」と一言言っておしまいだ。 しかし航空業界の対応は劇的に異なる。失敗と誠実に向き合い、そこから学ぶことこそが業界の文化なのだ。彼らは、失敗を「データの山」ととらえる。

らしい。

 どちらの業界も歴史は長いから失敗例は数多くある。大きな違いは失敗した者の命だろう。 航空業界では、失敗は操縦士などのコックピット・クルーの命に係わる。墜落や、空中衝突のような重大インシデントが発生すると彼らは命を失う可能性は高い。 しかも、乗客や住民など大量の命が失われる可能性がある。

 一方、医療業界では失敗で医療従事者が命を失う可能性は低い。 命を失うのは患者で、一度の失敗で大量に命が失われる可能性は低い。

 この差が、失敗を減らすためのモチベーションの差ではないだろうか。

 失敗を組織的に扱うとき

問題は当事者の熱意やモチベーションにはない。改善すべきは、人間の心理を考慮しないシステムの方なのだ。

は重要だ。

 ところが、失敗に向き合わない人や組織は、問題の解決を安易に当事者に求める。そして、たいていその手法は「気合と根性」だ。問題の真の原因を追究せず、フェールセーフ、プールプルーフも考慮しない。

 事故防止やヒューマン・エラー減少の具体的な考え方は航空業界から学ぶことが多い。
ネットから比較的容易に知識を得ることができるし、書籍で体系的に学ぶこともできる。

 ところが、
具体的な行動を考えるとなかなか難しい。知識を得るの作業は自分だけで良いが、実際に対策しようとすると、他人に行動を求めなければならないから、 事故防止に対するモチベーションの差が如実に表れる。

 失敗が原因で事故が発生したとき、自分自身に重大な影響が及ぶ人はモチベーションが高いが、失敗が原因で事故が発生しても影響が及ばなければ、積極的に事故防止の行動をするモチベーションは生まれない。 人はそういうものだろう。

 この構図は航空業界と医療業界の例に似ている。 人の生命を扱うための高い倫理観を持っている医師でさえそうなのだから。

事故防止は、

  • 人の心理を当てにしないシステム
  • 事故を防止しようとするモチベーション

が重要ということだろう。
厄介なのは後者だと考えて啓蒙活動を始めた。


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2018年5月24日 (木)

東大生となった君へ -真のエリートへの道- <東大生だけに向けた本ではない>

東大生となった君へ 真のエリートへの道 田坂広志 光文社

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 東大に合格した人に向けた本ではないだろうと思って読んだら、答えは、「終話 一度限りの人生をいかに生きるか」に書いてあった。

 だから、「真のエリート」の道を歩むために、実は、東大生や東大卒である必要はない。
「大学に行ける」ということが、有り難いことであり、恵まれたことであることを自覚し、その感謝を、世の中の多くの人々の幸せのために生きることによって表そうとするならば、すべての大学生が、「真のエリート」としての道を歩める。

この国を担う若者に向けたメッセージだ。 学生時代に深く考えないで職に就き、今若者を育てる立場担っているか年代へのメッセージかもしれない。

 この本の中で、東京税理士会から、これからやってくる人工知能革命時代に税理士はどのような能力を備えるべきかという 内容の講演依頼があったことが紹介されている。

 講演を依頼した人の先見の明もさることながら、自分自身を変えようとする姿勢は大したものだ。

 税理士という職業がこの先、無くなることは、多くの識者が指摘している。 その事実を受け入れて、未来のために今行動できる人は、人工知能に取って代わられない仕事ができるのだろう。

 たいていの人は、その事実を知りながら、自らのこととして受け入れることができない。そして茹で蛙になってしまう。

 田坂広志氏は、
この先人工知能が代替できない人間の能力として、

  • 第一は「クリエイティビティ」。
    直観判断力に基づく知的創造力のこと
  • 第二は「ホスピタリティ」。
    傾聴力や伝達力に基づくコミュニケーション力のことであり、「対人的能力」のこと
  • 第三は「マネジメント」。
    人間的魅力や人間力に基づくマネジメント力やリーダーシップ力のことであり、「組織的能力」のこと

を挙げておられる。 これも、多くの識者が指摘している。

 マネジメントは日本では経営管理と訳されることが多く、管理業務だと思っている人は多い。 管理業務は人工知能に取って代わられる業務だから、取って代わられないマネジメントとは何かを考えなくてはならない。

 田坂広志氏はそれは「心のマネジメント」だとおっしゃる。
簡単に言えば、部下やメンバーが働き甲斐や生き甲斐を感じられるようにすることだと。

 この「心のマネジメント」は組織の管理、部下の管理とはまるで異なる考え方だ。しかし、オヤジたちは管理しか教えてもらっていない。

 田坂広志氏はなぜこの本を若者に向けて欠いたのだろうか?と考えた。

人工知能革命の影響をもろに受けるのは、組織内でしか価値が無く転職できない人。 つまり、組織に特化した管理しかできない管理職だろう。

 例えば10年先の人工知能革命の混乱でリーダーシップを発揮して乗り切れるのは、今、大学に入学した二十歳前の若者で、今の40代50では混乱は乗り切れないと、お考えなのかもしれない。


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2018年5月16日 (水)

リクルートのすごい構〝創〟力 <企業風土あってこそ>

リクルートのすごい構〝創〟力 アイデアを事業に仕上げる9メソッド
杉田浩章  日本経済新聞出版社

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 リクルートの価値観と考え方仕事のやり方が書いてある。
一見ハウツー本だが、9つのメソッドをまねてもうまくいかないだろう。

例えば、5章のまとめに

・大企業病に陥らずに組織の「若さを保つ」ためには、常に内部での競争を奨励し、成功者を称え、全員がそこから学べる仕組みを埋め込んでおくことが有効である

という項目がある。 正論で一見すぐに実現できそうだ。

 しかし、よく考えてみると、

 競争すると、勝者と敗者が露わになる。
敗者は居心地が悪いものだ。 人には得手、不得手があるから全てにおいて勝者になるわけではない。 全てにおいて敗者になるわけでもないけど。

 昔昔オヤジが子供の頃は算数ができるのと、足が速いのと、絵が上手なのは同じように勝者だったような気がする。つまり、価値観に多様性があった。 そして、価値観が多様なら競争を奨励できる。苦手分野で競争に負けたとしても、得意分野で勝てば良いから、おてて繋いでみんなで一等賞でなくて良かった。

 いつ頃からだろうか、価値観の多様性がなくなったような気がする。
価値観が固定化すると、固定化した価値観を前提にした競争で負けると挽回するチャンスが無くなる。 このような社会は生き難い。 価値観が固定化した社会では勝者はわずかで大部分は敗者だ。 少ない勝者も、いつ敗者になるか気が気ではない。

 生き難い大部分の人は考える。
勝敗を明らかにしないようにしようとか、競争の結果ではなく競争の過程で頑張ったことを評価しようとかだ。 勝敗を明らかにしないのは勝者を褒めないということ、頑張ったことを評価するのは成果を出した者を褒めないということだ。

 敗者になる痛みは減るが、成果が出ない組織になる。

 競争に負けたものが挽回するには、職を変わらなければならないこともあるだろう。ところが、価値観が固定化した組織では転職するのは負け組だ。

 リクルートは競争を奨励して勝者を褒める一方で、敗者が挽回できる風土があるのだろう。そして、転職することは負け組ではなく、自らの成長には当然のことととらえられているのだろう。

 大企業病に罹っていないなら参考になると思う。
風土は重要だ、リクルートのような風土が無いのに形だけ真似ても上手くはいかないだろう。


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