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事故防止

2019年5月23日 (木)

巨大システム 失敗の本質 <立ち止まるために重要なこと>

巨大システム 失敗の本質 「組織の壊滅的失敗」を防ぐたった一つの方法
 著:クリス・クリアフィールド/アンドラーシュ・ティルシック
 訳:櫻井祐子
 東洋経済新報社

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 この本では複雑なシステムで大きな事故が起こることを「メルトダウン」と呼んでいる。
福島第1原発の事故や挫折したプロジェクト、誤った人事採用まで、大きな事故にも日常の事故にも失敗には共通点があるという。

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    ↑出展:「巨大システム 失敗の本質」図表1-1

上の図でシステムの構成要素が複雑で密結合している部分(右上)がデンジャーゾーンでメルトダウンが起こる。図には例として原子力発電所と化学プラントが挙げられているが、コンピュータによって制御されるシステムはこの部分に含まれるようになったという。

 デンジャーゾーンを脱出する方法として、複雑性を減らす、前兆を発見する、少数意見を尊重する、多様性を大切にする、「異人」の客観性、立ち止まることを上げている。

立ち止まることについて著者は

ある海軍下士官が空母による戦闘演習中に、甲板で道具をなくしたことに気が付いた。道具がジェットエンジンに吸い込まれでもしたら大惨事になりかねないことを、彼は知っていた。だがその一方で過失を報告すれば演習が中止になり、処罰される可能性があることもわかっていた。……下士官は過失を報告し、演習は中止になり、飛行中の戦闘機は全て陸上基地に行き先を変更し、莫大な費用がかかった。下士官は過失を犯したことで処罰されるどころか、勇気ある報告をしたとして、正式な式典で部隊長に表彰された。

という例を引いて

 正式な式典で! 信じられないような反応だ。演習を中止にし、巨大な甲板を隅から隅まで探し回らせられる原因をつくった張本人を表彰するのだ! あなたの組織でそんなことが起こるだろうか?

と問う。正直ウチでは無理だと思う。

 積極的に部下の意見を求める上司もいるが、そうした試みは失敗に終わることが多い。よくあるのが匿名で意見をいえるしくみだ。どこにでもある匿名調査や意見箱、匿名ホットラインなどは、匿名の保証があれば従業員が声を上げ、率直な反応を見せるだろうという前提に立っている。だが匿名をウリにするのは、声を上げることのリスクを強調するようなものだ。ディタートとバリスも書いている。「こうしたしくみの背後には、『この組織で思っていることを率直にいうのは危険だ』という言外のメッセージが隠れている」。

 知ってる。

 匿名で意見を言えるしくみが機能すると、大きな失敗の前兆を発見できるが、『この組織で思っていることを率直にいうのは危険だ』という組織風土では、良くて、隠された大きな失敗が明るみに出るくらいだろう。

 前半の、メルトダウンの事例やメカニズムは参考になる。しかし、後半のメルトダウンを防ぐ方法は読むと気が重くなる。何年も改善に挑戦しているけど結果が出ていないことだから。


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2019年1月20日 (日)

「基本を守れ」 <基本を守れるようにするには>

 管理部門の人と事故について話していると、どうも話がかみ合わない。

 その人は、「事故」をミスにより物理的な支障が発生することと定義しているようだった。
こちらの定義は、ミスにより問題が発生することだったので、抽象度が合っていなかった。

それはさておき、

 その人は、基本が守られていないことが原因だという。そして、現場の担当者に対して、基本を守るよう指導したという。

 かなり大きな違和感を感じたので、電話を切って考えてみた。
「基本が守られていない」は事実なのだろう。 そして、何度目かの「なぜ」から導かれた答えだろうから、間違ってはいない。 

ただし、「なぜ」は続く。

 「なぜ、基本が守られないのか?」

例えば、

  • 作業が立て込んで、うっかり手順を飛ばしてしまったとか、
  • 納期圧力に負けて、手を抜いたとか、
  • ヤバいと知りつつ、前回もOKだったから今回も大丈夫と思ったとか、
  • 周りの人も、手を抜いているから、大丈夫と思ったとか、
  • そもそも、基本を教えられていないとか、

これらは、「スキル不足」「うっかり」や「近道行動」「規則不遵守」など正にヒューマンエラーだ。

 どうも、「なぜ、基本が守られないのか?」が確認できていないようだ。

「基本を守れ」と言われた現場の人に反論はないのだろうか?と考えた。

 自分が現場にいたときなら「現場の実情も知らないで正論ばかり言うな!」と思っただろう。(経験がある。) 現場の担当者には基本が守れない事情があるのだ。

 つまり、「基本を守れ」はともすれば体の良い精神論になる。 現場を経験したことがあるなら、幾度となく経験したことがあるだろう。 「基本を守れ」と言うことは重要だが、それと同じくらい基本が守れるような仕組みを提供することが重要だろう。

 現場を知らない管理者が精神論を振りかざすのは理解できなくもない。(肯定はしない)
しかし、現場の管理者や管理部門に現場を知っている"叩き上げ"はいるはずだ。

 現場にいたとき精神論で困った彼らは、なぜ、管理部門に異動したり管理者になると、精神論を振りかざすようになるのだろうか。

 この問題は経営レベルでの「なぜなぜ分析」が必要な問題かもしれない。


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2019年1月18日 (金)

ありきたりの対策になるのは、管理者の心の弱さ

 最近、ミスや事故防止のお勉強をやっている。

 先日受講した「なぜなぜ分析セミナー」の講師がおっしゃるには、「『なぜ』に対する答えが報告書のようになったらやり直した方が良い。」だそうだ。 報告書は往々にして真実をとらえていないことがあるということだろう。 (激しく腑に落ちてしまった)

効果のない対策

 更に、典型的な検討されていない対策は、周知、教育、ダブルチェック、チェックリストだそうだ。 (これも、激しく腑に落ちてしまった)

 経験では、管理者や管理部門が意図的に検討しないケースは稀で、ほとんどのケースは実効性のある対策を導くための手法を知らないケースだ。

 周知、教育、ダブルチェック、チェックリストが対策として効果が弱い(無いわけではないが)ことは知っている。 そして副作用があることも知っている。

副作用とは、

  • ダブルチェックを強化すると作業効率が著しく低下する。
  • 作業効率が低下すると当然生産性が低下し、アウトプットが減る。
  • しかし、減ったアウトプットを補うためのリソース(人・物・金)の配分は無いから、気合と根性で何とかしなければならない。
  • 気合と根性で何とかする現場はブラックだ。
  • そして、ブラックな職場は事故防止対策をパスする動機となる。
   

ミス撲滅宣言は逆効果、IT職場にはびこる隠蔽体質(2018/10/13)

「管理者の心の弱さ」

 何故、管理者は効果が弱く副作用があると知りながら対策を実施するのだろうか?。

 それは、「管理者の心の弱さ」ではないかと思う。

 ミスや事故の原因究明は当事者にとっては辛いものだ。管理者は必ず当事者になるので自分の管理責任を問われることになる。 本当に辛いのは部下が気兼ねしてミスを問わない場合だろう。 だから、自分で自分の管理上のミスを問わなければらない。

 そして、原因にしても対策にしても正解はないから、どこかで腹を括らなければならない。もし、原因の追究が不十分な場合で対策に効果が無ければミスや事故は再発する。 ミスや事故が再発した場合には管理者の責任は大きい。

 このような状況に置かれたときに、効果の弱い対策を許す組織風土があるなら、原因を追求せず安易に効果が弱い対策に走ってしまう。 (対策は実施したのですが...という言い訳はあらかじめ考えておく)

 これが、「管理者の心の弱さ」だ。

 そして、それは誰にでもある。

 そして、誰にでもあることは前から知っている。 部下だった頃さんざん見ていたから。

どうするのか?

 「管理者の心の弱さ」は素直に認めて、部下と協力して実効性のある対策を考えれば良いのではないか。

 「効果の弱い対策を許す組織風土」とは「心の弱さ」に向き合わない管理者が充満した組織なのだろう。

 管理者が「心の弱さ」を認めることが、事故防止の第一歩だと思う。


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2019年1月16日 (水)

なぜなぜ分析(管理編) <ヨコテンは管理者の責任>

 「なぜなぜ分析 管理編」セミナーを受けてきた。

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↑の本がテキストだけどあまり開かなかった。

 実践編は「分析しろ」と言われる現場の人向けだ。管理編は「分析しろ」と言う人向けではなく、現場の問題から組織の問題を見つけてそれを改善する人向けだ。

 セミナーを受けた感想は、 なぜ、今まで誰も教えてくれなかったのだろうか? 無知の連鎖だろうか?ということ。

30年以上働いてきたが、いままで教えてもらったことがない。トヨタは昔から、原因の追求や問題の解決は現場でやっていたようだ。 ここが違うところだ。

 この能力を得ようとすると自学自習では時間がかかると思う。

 講師の小倉仁志氏が書かれた本を読んで、何件か自分で分析してみてから、セミナーを受講したので、理解できないところは無かった。

しかし、教えてもらって初めて分かることがたくさんあった。 これを自学自習で得ようとするとどれくらい時間がかかるのだろうと思う。

 講師曰く「管理者は腹が括るれる対策が出てきたら「なぜ」止めればよい」と
対策の実施は管理者の責任だから、導き出した対策の実施に管理者が腹を括れるかどうかが問題だと。

腹が括れない管理者が考えると、周知、教育、チェックリスト、ダブルチェックという見た目は良いが効果が無い、時に逆効果になる対策になるのだろう。

 管理者は、ミスや事故の要因を究明して、対策を考えたら終わりではない。 対策が確実に実施されて、対策が定着するようにしなければならない。 更に、分析結果や対策を他部署に展開しなければならない。 それが管理者の仕事だ。

1:29:300のヒヤリハットの法則は誰でも知っているけれど、ここまでやって初めてミスにならない300の経験が活かされる。

 仕事に必要な能力について教育訓練をしない職場ははたいていブラックだ。 ミスや自己の分析能力は必要ないと考えているということだろうか?。

愚痴を言っても始まらない。 幸いなことにセミナーを受講できたのだから、誰かに伝えなければ。


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2019年1月14日 (月)

なぜなぜ分析(実践編)

「なぜなぜ分析」セミナーを受けてきた。

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↑の本がテキストだけどあまり開かなかった。

 なぜなぜ分析は、事象の因果関係を掘り下げて、根本原因(真因)を把握する分析手法で、 トヨタ生産方式の中に出てくる「なぜを5回」が有名だ。

 講師の小倉仁志氏は、5回に意味があるのではなく、よく考えましょうという意味だとおっしゃる。 場合によっては5回では真因にたどり着けないらしい。

 何のトレーニングも受けないで、なぜを考えると3回くらいで次の「なぜ」が浮かばなくなる。 たいてい結論ありきで、結論から逆算して「なぜ」を考えているので、真因に繋がるなぜが浮かんでこないのだ。 当然、新しい気づきもなく、効果的な対策も考えられない。

考えられていない対策の典型は、周知、教育、ダブルチェック、チェックリストだそうだ。
う~ん。心当たりがある。

 講師の小倉仁志氏は、分析の目的が重要だとおっしゃる。
現場の立場では、犯人捜しの「なぜ」などやりたくないし、効果のない対策もやりたくないから、何のために分析するのか、何のために根本原因を追究するのかを明らかにすることが重要だ。

 失敗や事故が発生したときやヒヤリ・ハットがあったときにその要因を発見して対策することで、事故の再発や事故の発生を未然に防止することができる。

実際に対策を実行するのは現場だから要因と対策は現場で考えなくてはならない。
押し付けの対策はすぐに形がい化するので効果は期待できないのだ。

 現場が日頃、ミスを減らすため、仕事の能率を上げるための工夫(カイゼン)をしているかは重要だ。

日頃、カイゼンしているなら要因が見付かれば対策を実行できる。 しかし、日頃改善していなければ要因が見付かっても対策を実行するときに抵抗がある。 更には、対策の立案が目的になってしまう。

そして、周知、教育、ダブルチェック、チェックリストというよくある対策に現場は疲弊してしまう。


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2018年11月 6日 (火)

なぜ、企業は不祥事をくりかえすのか

なぜ、企業は不祥事をくりかえすのか 樋口晴彦 日刊工業新聞社

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 有名な事件・事故の発生原因とメカニズムを分析した本

 Amazonの書評の中には、著者が所属する組織に関する記述が無いという指摘がある。
しかし、それは無理というものだ。 細部まで知っているだけに公開するのは難しい。それが組織人というものだ。

 この本では事故を分析して原因とその関係が示してあるが、背景となる原因全てを挙げてあるわけではないだろう。 部外者の著者が知りえない原因もあるだろうし、取り上げると本質が見えなくなることもあるだろう。 ちょっと詳しい部外者くらいがちょうど良いのだろう。

 そう考えると、組織で事故や不祥事の調査委員会のメンバーを見たら、その組織の事故防止、不祥事防止への本気度が見えてくるのかもしれない。

 環境の変化は見落としがちな要因だ。

  • 「上尾保育所における児童死亡事故防止」における、コスト削減の影響
  • 「東京ドーム遊戯施設「舞姫」の死亡事故防止」における、
  • 「東海テレビ「ぴーかんテレビ」放送事故防止」
  • ベネッセ情報流出事件

に共通する原因は、「コスト削減」だ。その結果、社員の労働か悪化したり、バイトやアウトソーシングによる、「モラル低下」が事故につながっている。

 「衣食足りて礼節を知る」の例えは、一見事故には関係が無いように思えるが、実は事故への第一歩なのかもしれない。

  • 最近雑用が増えて仕事に余裕が無くなった。
  • 仕事は増えたのに人は増えない。
  • 残業縮減で仕事に余裕が無い。

も事故や不祥事の第一歩なのかもしれない。


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2018年11月 2日 (金)

事故の原因分析 <「なぜ」が足りない>

 ある人と「事故」について話していると、どうも話がかみ合わない。

 その人は、「事故」をミスにより物理的な支障が発生することと定義しているようだった。 こちらの定義は、ミスにより問題が発生することで、抽象度が合っていなかった。

 それはさておき、

 その人は、基本が守られていないことが「事故」の原因だという。そして、現場の担当者に対して、基本を守るよう指導したという。

 かなり大きな違和感を感じたので、電話を切って考えてみた。

 「基本が守られていない」は事実なのだろう。 それは何度目かの「なぜ」から導かれた答えだろうから、間違ってはいないはずだ。

 ただし、「なぜ」は続く。

「なぜ、基本が守られないのか?」

  • 作業が立て込んで、うっかり手順を飛ばしてしまったとか、
  • 納期圧力に負けて、手を抜いたとか、
  • ヤバいと知りつつ、前回もOKだったから今回も大丈夫と思ったとか、
  • 周りの人も、手を抜いているから、大丈夫と思ったとか、
  • そもそも、基本を教えられていないとか、

「スキル不足」や「うっかり」「近道行動」「規則不遵守」など正にヒューマンエラーだ。

 どうも、「なぜ、基本が守られないのか?」が考えられていないようだ。

 「基本を守れ」と言われた現場の人に反論はないのだろうか?と考えた。

 自分が現場にいたときなら「現場の実情も知らないで正論ばかり言うな!」と思っただろう。(経験がある。) 現場の担当者には基本が守れない事情があるのだ。

 つまり、「基本を守れ」はともすれば体の良い精神論になる。 現場を経験したことがあるなら、幾度となく経験しことがあるだろう。 

 「基本を守れ」と言うことは重要だが、それと同じくらい基本が守れるような仕組みを提供することが重要ではないだろうか。

 現場を知らない管理者が精神論を振りかざすのは無理もない現場の事情を知らないのだから。(肯定はしてないけど) しかし、現場の管理者や管理部門に現場を知っている"叩き上げ"はいる。

 現場にいたとき精神論で困った彼らは、なぜ、管理部門に異動したり管理者になると、精神論を振りかざすようになるのだろうか?。

 きっと、管理部門、管理者は精神論を振りかざさるをえない要因があるのだろう。

 この問題は経営レベルでの「なぜなぜ分析」が必要な問題だ。


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2018年10月31日 (水)

組織の失敗学

組織の失敗学 樋口晴彦 中災防新書

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 エラー防止だけでなく、事故・不祥事にまつわる事例やリーダーシップなど幅広い内容。 実務経験に基づく判断は参考になる。

 樋口晴彦氏は中間管理職のリーダーシップについて

対策の是非について議論が分かれるような得意な案件でさえなければ、トップ自らの力リーダーシップは無くて構わない。むしろ必要とされるのは、中間管理職レベルのリーダーシップである。その場におけるトップの役割は、中間管理職の自発的行動を促すために「後の責任はオレが取るから、君たちの思うようにやってくれ」と後援してやることだ。

とおっしゃる。

 中間管理職レベルのリーダーシップが機能していれば、トップの管理は迷惑この上ない。

 良識あるトップとして振る舞うのは難しい。

 中間管理職レベルのリーダーシップが機能しているなら余計なことはしない。 中間管理職レベルのリーダーシップが機能していないならリーダーシップを発揮する。

 謙虚さとリーダーシップを持ち合わせているのが真のリーダーなのだろう。


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2018年10月25日 (木)

現場力がみるみる上がる 実践なぜなぜ分析 <ミスをチェックできたのは誰か>

現場力がみるみる上がる 実践なぜなぜ分析 小倉 仁志 日経ビジネス人文庫

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トヨタの「なぜを5回」は有名だ。

 問題を解決するときにに原因の特定は欠かせない。このときに、「なぜそうなったのか?」を5回繰り返すことで表からは見えにくい真因に迫る手法だ。

 この手法は理屈は簡単だ。しかし、やってみるとなかなか難しい。思考が深くならなかったり同じ答えの堂々めぐりになったりする。

 この本は、事故やミスの原因を分析する例が多く登場する。そして、分析手法の中心は「なぜを5回」だ。 この本では「なぜなぜ分析」と言っているが、対策案や対策案の実施方法、組織内での展開まで扱っている。

 事故の原因を追及する「なぜなぜ分析」は、人や設備に物理的な障害発生した場合だけでは無く、事務処理に不備があった場合でも使えるし、何かのプロジェクトが行き詰まった時や失敗したときにも使える。
「なぜなぜ分析」のセミナーを受講するIT関係者は多いそうだ。

 一旦抽象化して理解して自分の職場や環境に適用すれば、どこでも使える。 かなり強力なスキルだと思う。

管理者が行うべき「なぜなぜ分析」の例もある。

 事故が起きたときに対策は重要だ。「トヨタの問題解決」では更に、標準化して組織内に展開する「横展」を行う。この、標準化や横展にマネジメントレベルや経営レベルでの「なぜなぜ分析」が使用できるというわけだ。

 日経編集部が「あとがきにかえて」で

 ヒューマンエラーはとかく、ミスを起こした当事者のせいにされがちである。そして「あいつのやる気が足りないから、問題が起きたんだ」と、精神論でその場を片付けようとする傾向が今でもあらゆる職場で見受けられる。

と書いている。

 少なくとも、マネジャが「なぜなぜ分析」のスキルを獲得していれば、意味の無い精神論に頼らなくて良いと思う。

チェックできなかったこと。

 この本で解説してある「なぜなぜ分析」では、なぜに対する答えを導くと、もれなくチェックできなかったことを挙げるようになっている。例えば、「○○が××に気が付かなかった」という答えには、「○○が××に気が付かなかったことをチェックできなかった」が同時に導かれる。

 これは、目から鱗だった。

 事故の原因や対策が「気合と根性」になるのは、原因を分析する人が他責の念に囚われているからだ。 精神論を原因に指摘すれば反論できない。特に管理部門が現場の事故の原因を考えるときに顕著だ。 時にそれは分析ではなく叱責だ。

 もっとも、現場は「また精神論を言ってら。ここは日本帝国陸軍か!」などと口に出さずに悪態をついているのだが...

 ところが、「チェックできなかった」ことの「なぜ」を考えると、当然誰がチェックできたかを考えることになる。「なぜなぜ分析」を当事者や関係者が分析を行っていれば、分析している人の多くは、チェックできた人だ。 そして、チェックできた人は他責の念では分析できなくなる。

 つまり、分析に多くの人を巻きこむことで、他責の念ではなく自責の念で分析を行うようになるので、安易に精神論に流れることがなくなるのではないかと思う。

 上司や管理部門が分析するときには、「~ことをチェックできなかった」も考えるようにすると良い。


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2018年10月13日 (土)

ミス撲滅宣言は逆効果、IT職場にはびこる隠蔽体質

ミス撲滅宣言は逆効果、IT職場にはびこる隠蔽体質 日経XTECH (2018/08/23)
(↑会員登録が必要)

 結論は、

 インシデントが起きたら、すぐに報告してくれた担当者を褒めるくらいでちょうどよい。「インシデントを発見してくれて、ありがとう」の一言を、上司が部下に言えるかどうかで、現場の雰囲気や体質は全然違ってくる。それがインシデントやヒヤリハットを健全に見える化できる組織風土を醸成する

というもの。

Photo
(↑出典:ミス撲滅宣言は逆効果、IT職場にはびこる隠蔽体質 日経XTECH
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00205/080200008/
)

インシデントが無くならない原因は

★インシデント発生
↓再発防止検討会
↓個人攻撃される
↓個人のスキル気合に依存した対応
↓ヒューマンエラー発生確率上昇
インシデント発生

★インシデント発生
↓インシデントではないことを証明する仕事(言い訳)
↓生産性低下
↓ヒューマンエラー発生確率上昇
インシデント発生

という2つの悪しき負の連鎖が発生している。ループになっているので、通常の問題解決方法でも解決は難しい。

 さらに、トップが「インシデントの絶無を期す!!」など言うと

★インシデント・ゼロを組織の目標にする
↓ダブルチェック、トリプルチェック、チェックリストの乱立
↓生産性低下
↓ヒューマンエラー発生確率上昇
インシデント発生

インデントが減少するどころか、インシデントが発生しやすくなる

さらに、副次的な影響として、隠蔽体質が生まれる。

★インシデント発生
↓インシデントではないことを証明する仕事(言い訳)
↓生産性低下
↓インシデントを報告すると責められる
↓インシデントを報告しない文化が生まれる
隠蔽体質

 悪しき負の連鎖はどこかで断ち切らなければならないから、風土を変えることから始めるのも一つの手段だけど風土を変えるには時間がかかるし抵抗も多い。人は明確な理由は無くても変わることに抵抗するものだ。 

 経験では、解決策は組織風土改革というと反応がない人が多い。 絵空事のように聞こえるのだろうか。

 インシデントを減らす方法を考えてみる。

〇 インシデントがゼロにならないことを全員が認識する。

 これが全ての前提だ。 その上で、全員が、全ての階層で役割に応じてリスクを減らすための負担をする。

 負担は、金銭、労力、時間、精神的負担など。

〇 全員が負担する

と言えば簡単だ。 しかし、たいてい、リスクを取らない者、負担をしない者が現れる。

  • インシデントをゼロにしろという経営者
  • 原因追求という名の個人攻撃をする中間管理職
  • 効果を考えずヒューマンエラー防止対策を徹底する現場責任者
  • ヒューマンエラーを報告しない担当者

など。

 リスクを管理してインシデントを減少させるための活動は、目に見えないから、評価もされない活動だ。 誰でも、余分な負担はしたくないものだからバックレる輩が出てくる。

 たいていは、自分は負担せず体よく部下に負担を強いる。 そして、負担が集中する下っ端は上の理解がないから無理だとあきらめてハイリスクな行動をとる。

 本当にインシデントを減少させようとするならば、評価されなくてもインシデントを減少させるための負担をする覚悟が必要だ。

〇 リスクを取る覚悟、負担する覚悟 

 方々で覚悟が必要と説いているのだが、ハイそうですかと覚悟する人も少ない。

 全員に覚悟を強いるのは人の言葉より空気の方が重要だ。 人は空気には抵抗できないから、「評価されなくてもインシデントを減少するために負担しなくてはならない」という空気ができていれば、リスクを取らない者、負担をしない者を排除する力になる。

 では、空気を作るにはどうするか。

〇 それには、組織風土を変えなければよい。

 同じ結論になってしまった。

 インシデントが減るかどうかは、結局組織風土なんだと思う。

###

☆ インシデントを減らそうと言い続ける人

 人は安きに流れ、決まり事は形骸化するものだから、インシデント対策もいつしか実効性の無いものになる。 そのようなときに「インデントを減らそう」と言い続ける人の存在は重要だ。 しかし、誰か特定の個人に頼っていたのでは限界がある。 そこで組織風土が重要だ。

 鉄道関係者は必ず指差呼称する。組織風土がそうさせているのだ。だから百年以上もの間継続できている。

 ウチは鉄道関係ではないけれど、現場にいたころ上司に指差呼称するように指導された。「横着するな」と。 当時はそういう組織風土があったのだと思う。

 IT関係の職場に移っても、rmやddなどの危険なコマンドを実行するときには、ディスプレイに向かって指差呼称して、深呼吸してEnterを押していた。

  最近現場の人に聞くと、指差呼称もしないし、「指差呼称しろ」と言う人もいなくなったそうだ。

 失われた組織風土を取り戻そうとすると、年寄りができることはたくさんある。



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