日本の教育はダメじゃない
日本の教育はダメじゃない ─国際比較データで問いなおす
小松 光(こまつ・ひかる)ジェルミー・ラプリー 筑摩書房
何かと批判される日本の教育について、データを見ると識者が言うほど悪くわけではなく、エビデンスベースで議論すべきとおっしゃる。ピザやティムズ、ピアックなどのデータを示して客観的に論じてある。
結論は、日本の子供は学力が低くないし、創造性も低くないという。
教育は効果が現れるまで時間がかかるから、現在の社会の状況と、現在の教育制度を関連付けて議論するのは無意味だ。 現在の教育制度の評価が明らかになるのは、現在教育を受けた子供たちが未来社会を担うようになってからだ。
ピザでは「創造的問題解決」のテストも実施していて、参加44カ国日本は3位らしい。しかし、違和感がある。 実感としては「問題解決能力」の高低より、問題を解決しようとしない姿勢に問題を感じる。
ICT業界にいたときに感じたことは、最近の若い人たちは能力がありながら、その能力を身近な問題解決に使わず、誰かが問題を解決した手法を真似ようとする。後に、小学生にプログラミングを教えたときに感じたことは、先生が答えを言うのを待っている子が多いということだ。 中には、違う問題の答えを考えたり、アートに没頭したり、違う楽しさを発見して、先生の答えを待たない「創造性」を発揮する子が少数だけどいる。
仕事を始めた若い人たちが、自分の能力を問題解決に使わないのは、教育の結果なのか、日本人の習性なのかはわからない。しかし、少なくとも小学生ですでに「創造性」より、先生が言う正解を待っている子は多い。
考えてみると、それは、大人の要請ではないかと思う.大人や大人の社会が「創造性」より「正解」を求めているのだ。
この本では、「キャッチアップ精神」と表現されている。明治以来の、欧米の成功例をなぞる姿勢だ。
キャッチアップ精神が生き続けているから、日本人はアメリカ人・イギリス人と比較して、能動性・自立性が欠けている(アクティブでない)と感じられるのです。そして、その欠落を埋めるために教育を変えれば、日本の子どもたちは創造的になり、最終的に日本の経済や社会が良くなると信じられるわけです。
とおっしゃる。
冒頭に述べたが教育において成果が現れるには時間がかかる。 だから、欧米に成功例を発見したら、それは何十年か前の教育制度の成果だ。 今時、何十年か前に欧米で流行った教育制度で、未来を生きることどもたちを教育するのは無理があるよなあ。
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