GIGAスクール構想の後
EDIX Tokyo 2021に行ってきた。(教育総合展2021 (2021/05/14))
人ごみをかき分けるのは気が引けたので、朝一から最後までセミナーを受講した。
立命館小学校 ICT 教育部長 正頭英和先生の講演が良かった。
話題はGIGAの後何をすべきか?
「チョーク黒板さえあれば授業はできる」のような話を聞くことが多かったので、ちゃんと考えている現場の先生もいるんだと安心した。
GIGAスクール構想は生徒・児童に端末端末を配ることが目的ではないし、紙と鉛筆をICTで置き換えることが目的ではない。ICTを使うと授業が効率化できて、これまで8時間必要だった授業が6時間でできるようになる。生み出した2時間で何を教えるかが重要だとおっしゃる。
現場には、ICTvs紙と鉛筆、1人1台端末は必要vs必要ない、教えられるvs教えられないという二項対立問題として捉える教師は少なからずいる。今後教師が生徒・児童に、教えられないことは今以上に増えるだろう。これまでは正解があって教えらることしか教えていなかったから、顕在化していなかっただけかもしれない。
正頭英和先生は、教師は教えることから生徒・児童と共に体験することが必要だとおっしゃる。
正頭英和先生が紹介された事例が良かった。
小学5年の児童がある日「先生、メガロドンは生きてると思う」と言ってきたそうだ。
先生自身はメガロドンに詳しいわけではないから、スマホを使ってWikipediaで調べたら360万年くらい前に絶滅したサメだということが分かったらしい。
大人はつい「絶滅していると書いてあるよ」と言ってしまいがちだが、先生が「何でそう思うの?」と尋ねたたら、その児童の答えは要領を得なかったそうだ。
そこで、サメの研究者を調べて電話したら、その研究者がzoomで授業に参加してくれることになったらしい。(すごいフットワークだ)
「メガロドンは生きていると思う」と質問した児童に対して、研究者の先生は「ぼくもメガロドンは生きていると思う」と答えたそうだ。
そして、メガロドンが生きていることを証明できる条件を教えてくれたそうだ。
その児童は六年生になって、メガロドンが生きていることの証明に取り組んでいて、将来サメの研究者になりたという希望を持っているそうだ。
先生も知らないメガロドンに関する児童の興味を問いに変えて、さらにその問いを、自律的な学習につなげている。おそらくその児童の自律的な学びは続く。
重要なことは、こどもが発信したこと疑問に変えることだ
正頭英和先生によると、子供たちからいきなり疑問が出てくるわけではなくて、嬉しいこと、悲しいこと、困ったことは発信されやすく、教師はそれを見つけて問いに変えることが必要なのだとおっしゃる。そして、その問いの答えは教師が教えるのではなく、子供が自ら見つけるものだと。
とはいえ、この考え方を具体的な行動に落とし込まなければ、現場でこどもたちに寄り沿うことはできない。
具体的な行動として次の3点を、正頭英和先生は挙げられた。
- その子の持つ少し外の情報を与える
- 子供の発信を問いに変える
- 小さな問いを大きくする
こどもたちへの対応を一言でうと、
「スピード・ポジティブ・ハイテンション・フィードドバック」
らしい。
教師に求められる役割は変わったようだ。
知識を子供に教えることから、こども自信が自ら学び自ら答えをみつける行動様式を身につけさせることになった。
質問をした児童が将来サメの研究者になって、メガロドンを発見したらすごいことだ。
もし、そうなったときに正頭英和先生の最大の功績は、児童の可能性を潰さなかったことだろう。
大人が子供の可能性を潰ぶさなければ、大人たちが解決できなかった問題を子供たちが将来解決してくれるだろう。
日本の教育界も捨てたもんじゃないと思う講演だった。
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