汎用データベース
システムを作る際に、「データを整理して蓄積し、いつでも引き出せると便利だ」くらいのノリで開発が始まることがある。
便利なことに対しては誰も異論はないのだが、誰がどのように使うか、データの更新は誰が行うか、更には費用対効果を考えないで走り出してしまう。
ストレージのビット単価も安くなり、有り余るCPUパワーも使えて、高速ネットワークに繋がる。しかも、Cloudに置くと設置場所も取らないから、昔と比べて気軽に構築できるようになった。
ところがである。
あったら便利なデータベースは使われない。使われないデータベースの維持は虚しい。
ICT業界で40年働いていると、失敗のニオイが分かってきた。
「データ」と「情報」は曖昧に使われることが多いのだが、
- 「データ」は数字や記号の集まり
- 「情報」は数字や記号の集まりを、目的をもって収集、加工したもの
とする。簡単に言うと「データ」には価値はなく「情報」になって初めて価値を持つ。
汎用的なデータベースの最終的な目標は、蓄積したデータが新しい価値を生み出すことだろう。
データベース・システムはデータを蓄積、検索できる機能を提供するが、有意なデータを抽出するための条件や、複数のデータから新しい価値を生み出すのは、人間の知恵が必要だ。これを、誤解している人が多い。データベース・システムが知恵を持っていると誤解しているのだ。
理解している人が、汎用的なデータベースを使った時の反応は「わーっ!面白そう。こんなこと、あんなことにも使えそうだ。」と言う。一方で、誤解している人が、汎用的なデータベースを使うと、「なーんだ。ぜんぜんつかえないじゃん」と言う。
知恵が無い人はデータから価値を生み出すことができないのだ。
データから価値を生み出す知恵を持っている人は、誰でも知恵を持っていると思いがちだ。だから、「何で使えないの?」と思ってしまう。
データから価値を生み出す知恵を持っていない人は、データベースは魔法の箱で、たちどころに、自分が欲しい情報(価値があるデータ)が現れると思っている。
AI入れるとできるんじゃないのと言うのは、「知恵」を持っていない人だ。
知恵を形式知にして蓄積して、ナレッジベースにできれば、他人の知恵が使えるようになって、だれでもデータから価値を生み出すことができるだろう。ところが、知恵の多くは暗黙知なので形式知にし難い。自分の暗黙知を形式知にできる人は極々僅かだから、他人の力が必要だ。
データベース・システムを構築できる人は多いし、外注もできる。
データベース・システムが価値を生み出すためには、
- 知恵を持った人
- 暗黙知を形式知にできる人
をどうやって確保するかにかかっている。
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