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2022年10月23日 (日)

自治体を進化させる公務員の新改善力

自治体を進化させる公務員の新改善力 元吉由紀子 公職研

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自治体改善マネジメント研究会を主宰される元吉由紀子氏のが上梓されたと伺ったので読んでみた。

書評は書かないことにしている。ただの感想文。

〇 改善と革新

12

「改善活動の12場面」は、変革レベルを「不具合解消」「改善」「革新」に、活動ステージを「個人」「職場」「役所全体」「対住民・地域」に分けて、活動をプロットすることで改善活動が見える化できる。

「改革」という言葉は曖昧に使われている。特に「改善」と「改革」は差が分からない。
この本では、「改善」と「革新」という言葉を使って区別している。

「不具合解消」→「改善」→「革新」にレベルが上がるところで壁がある。
経験では、「改善」→「革新」の壁が大きい。

「改善」と「革新」は大きく異なる。
「改善」は現状を肯定するところから始まり、現在と未来は連続している。
「革新」は現状を肯定するところから始まり、現在と未来は連続していない。
だから、考え方が根本的に異なるし、改善の延長では「革新」はできない。

「改善」と「革新」の差は、極論すれば、自分の仕事、自分の職場がなくなることが有るか無いかの差だろう。
「改善」は成果が上がったとしても、自分の仕事、ましてや自分の職場がなくなることは想定していない。
ところが、「革新」は、あるべき姿に立ち戻り、社会的、技術的な現状を考慮して今後の組織や業務を考えるから、自分の仕事や自分の職場が無くなる可能性がある。
ちょっと前に「AIやロボットで無くなる仕事」が話題になったけれど、あれはAIによる「革新」だ。

「革新」で無くならない仕事をしている人はを推進しやすいけれど、無くなる仕事をしている人とは確執が生まれ、無くなる仕事をしている人は「革新」の抵抗勢力になる。(仕方のないことだ)

革新が起こると、なくなる仕事がある一方で新しい仕事が生まれる。
本当に「革新」に取り組める人は、自分の仕事がなくなっても、新しく生まれる仕事ができる自信と覚悟がある人だろう。

〇 キャリアプラン

役所の人事は個人の希望が聞き入れられないことが多い。
しかも希望通りにになっても、ならなくても、説明(フィードバック)が無いことも多い。
だから、自らキャリアを設計することが難しい。(そして、歳をとって困る)
不確実な時代では、自らキャリア設計ができないのは、泥舟か豪華客船かわからない船に身を任せているようなものだ。
(乗り込んだときは豪華客船だと思ったのに気が付いたら沈みかけているとか...)

元吉由紀子氏は

政策分野に関わらないもう一つのキャリアとして「新しい環境変化に対応して新しい仕事を作り出したり仕事や仕事のやり方を変えていく、政策を推進していく力(進化力)」を設定するのです。それによって、これまでのどの政策分野の仕事であっても、経験が生かされることが多分にあることが見えてくるはずです。

とおっしゃる。これは新しい切り口だ。

でも、「進化力」だけでキャリアを考えるのは難しいような気がする。

https://www.manpowergroup.jp/column/career/140620_01.html

によると、キャリアを構成する要素は

  • 1つ目は、「技術・知識を示す経験」
  • 2つ目は「転職回数や社格など含めた転職履歴」
  • 3つ目は「日本特有の判断基準である年齢」
  • 4つ目は「人となりを表す考え方・人間性」
  • 5つ目は「外的要因である景況感とトレンド」

らしい。

3)年齢、5)外的要因は自分では変えることができないが、1)知識・技術、4)人となりは自分で変えることができる。

1)知識・技術は業種(役所では政策分野)と関連が強い。ところが、役所では自ら選択することできない。
一方、「進化力」に相当する 4)人となりは自分で変えることができるから、「進化力」でキャリアを設計しようということだろうか。

キャリアを構成する5項目全てをハイレベルにすることは難しいから、どの項目に注力するかは人それぞれだ。(昔は押し付けられたけど)
それが、個人に合わせたキャリアプランなのだろう。

最初から公務員になろうと思っていた人は、業種や政策分野にそこまでこだわりがないのかもしれない。
こだわりがなければ、「改善活動の12場面」へのプロットがキャリアプランに使えるかもしれない。

40歳の頃、将来のキャリアを考える中で、ありたい自分を散々考えて辿り着いたのは、
「技術で食っていく。そしてその技術が人様の役に立ったら良いなあ」
だった。
技術者としてのキャリアにこだわってきたので、職種や政策分野を抜きにしてキャリアを考えることはできない。
行政職の技術者はマイノリティだ。しかも、専門性にこだわると生きにくい...

〇 DX
ICT業界のバズワードはDXだ。
「改善活動の12場面」の変革レベルはDXに似ている。
DXはデジタル技術を活用して新しい価値を創造することだから、革新レベルの「革新」に相当する。
ところが、「DX」という言葉が一人歩きしていて、デジタル技術を使った不具合解決もDXと呼ばれている。
不具合解決や改善が改革と呼ばれることに似ている。

DXは、企業にだけではなく、自治体も中央省庁にも共通する経営課題だ。
DXは、デジタル技術の知見があれば実現できるわけではなく、業務改革や風土改革、働き方改革が必要になる。

DXに必要な能力は

  • デジタル技術
  • 業務に関する知識・技能
  • 「進化力」

だろう。

3つの能力を全て兼ね備えた人はいないから、1つでも能力を持ったメンバーを集めてることになる。
そこで、「進化力」とデジタル技術、「進化力」と業務の知識・技能のように2の能力を持っていれば、チームを集めやすくなるだろう。
(集められやすい...)

デジタル技術、業務に関する知識・技能は専門的な能力だけど「進化力」は汎用的な能力だ。
汎用的な能力は重要ということだろうか。


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