生産性に関する経営者と労働者の認識のズレ
南場智子「ますます“速さ”が命題に」DeNA AI Day2026全文書き起こし エンジニアtype (2026/03/08)
ネット民は、
「先に人を動かす」
「マネジャーの評価指標に「人材の輩出」を組み込む」
に反応している人が多いようなので、全文書き起こしを読んでみた。
結論を先に、
・労働者は、空いている時間で自分がやりたいことがある人か、賃金でモチベートしていない人以外は、AIを使うメリットはない。
・経営者は、余剰人員で、新規事業や、先送りしている課題を解決できなければ、AIを使うメリットはない。
・社員を何でモチベートするかという、AIが登場する前からの、問題になる。
冒頭の文言は、
新規事業への人材シフトが想定どおり進んでいないことについて説明した中での発言のようだ。
社員は、AIを導入して余裕ができたとしても、「やりたくてもできなかったこと」をやってしまうから、「先に人を動かす」という少々乱暴なリーダーシップが必要である。
また、組織的に人的余裕ができたとしても、マネージャーは自ら部下を減らすことに抵抗があるから、「マネジャーの評価指標に「人材の輩出」を組み込む」ことで、AI導入のメリットを受けることができる。
とおっしゃる。
経営者としては、真っ当な感覚だと思う。
ネット民の大半を占める労働者と、経営者とでは、AIを導入した際の、生産性について認識が違うようなので、考えてみた。
考えてみた。
生産性を、ざっくり
生産性 = 生産量 / 投入リソース
とすると、投入リソースは、
・個人の観点では、大半は労働時間
・経営者の観点では、大半は人件費
という前提で、生産性について考えてみた。
AIを活用すると、短い労働時間で同じ生産量得ることが可能だ。
ところが、南場智子氏が指摘するように「やりたくてもできなかったこと」をやってしまうから、生産量は増えるが労働時間は変わらない。
結果、AIを導入しても生産性は変わらない。
また、日本の多くの企業の賃金体系は、生産量(成果)より労働時間の方に関係する。
乱暴な言い方だが、生産量が増えたとしても、労働時間が短縮できないので、賃金は変わらない。
労働者の観点では
生産性 = 受け取る賃金 / 労働時間
だから、AIを使えば使うほど、生産性は低下する。
次の図は、
一定の生産量を得るために必要な投入リソースの割合を示している。
- 「①AI導入前」(図左側):人間が作業を行う場合の割合
頭脳労働のような高次の作業もあれば、単純肉体作業のような低次の作業もある。 - 「②従来分」(図中央の):AIを活用した場合の割合
AIが苦手とする、高次、低次の作業は人間が行う必要があり、AIが作業量の50%を肩代わりしたと想定している。 - 「③増加分」(図右側):人間の、減った作業量で別の仕事をしたものだ。割合は②従来分と同じ割合にしている。
労働者と経営者の観点での生産性は
- 「②従来分」では、
労働者:
生産量は同じで、人間の作業量は減っているので、生産性は向上している。
経営者:
余剰人員が生じているので、解雇すると生産性は向上するが、解雇は困難だから、他の業務を担当させることになる。 - 「③増加分」では
労働者:
生産量は②+③になり増加し、人間の作業量は同じなので、生産性は向上している。
しかし、日本の多くの企業では、賃金は生産量ではなく、労働時間で決まる。
生産量が増加しても賃金は変わらないから、モチベーションが下がる。
空いた時間で「やりたいこと」ができるなら、モチベーションを維持できる可能性がある。 - 経営者:
余剰人員で新規事業を起こしたり、会社の課題を解決することができる。しかも、人件費は変わらない。
経営者が目指している状態だ。
つまり、
労働者は、空いている時間で自分がやりたいことがある人か、賃金でモチベートしていない人以外は、AIを使うメリットはない。
経営者は、余剰人員で、新規事業や、先送りしている課題を解決できなければ、AIを使うメリットはない。
結論
南場智子氏は「DeNAの社員は優秀だから、余裕ができたら、やりたくてもできなかかったことを始める」と婉曲な表現をされているが、つまりは、余った時間で、個人がやりたいことではなく、会社が求めることをやってほしいということだろう。
とすると、賃金以外でモチベートする必要がある。
つまり、社員を何でモチベートするかという、AIが登場する前からの、問題になる。
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