「好きなこと」だけで生き抜く力 海洋堂 宮脇修一

示唆に富んだ本だ。
専門性が高い部署や高度な能力を持つ専門家を集めて尖ったサービスの提供を目指す人には参考になると思う。
特殊技能を持った専門家に対するマネージメントの成功例ではないかと思う。
オタクとは
宮脇氏は、普通の人が持っているものを持っていないが、特定分野(フィギュア)において、”圧倒的な才能、もしくは、才能がなくても、一心不乱に続ける力”を持っている人
くらいの感じで書いている。
「ほったらかせば、人は育つ」
食べて寝ているだけに見えていた者が、3年後、5年後に、ものすごい力を発揮することもある。 |
宮脇氏も書籍の中で述べているが、中小企業だからこそできることだと思う。
短期的な成果を求められる部署ではとても無理だし、3年も5年も遊んでいるように見えて何も言わない会社なんてないだろう。マネージャの立場で考えると、3年後に化ける人材を見つけることは難しい。
才能があっても、一心不乱に続けている者でも、評価されない人は確かにいる。大抵は、コミニュケーション能力が不足していたり、仕事に対する自覚が無かったりだ。
この大化け予備軍が力を発揮するためにはコミニュケーション能力を向上させたり、仕事に対する自覚を持つことが必要だが、それが簡単にできるくらいなら既に周囲に認められる仕事が{でき|期待され}ているだろう。
大化け予備軍が本当に化けるには
才能がどれだけあるかよりも、要は才能を目覚めさせる、そして伸ばせる「場」があるかどうかが大切なんだと思います。 会社でも趣味の集まりでも、その環境がそういった「場の力」を持つことで、大きな原動力となる。それが僕の考えです。 |
大化け予備軍が本当に化けるには「場」の力を借りる必要がある。
オタクに限らず誰かにコミニュケーション能力や仕事に対する自覚を持つことを教えるのは大変だけど「場」を作ることならできそうだ。
今の部署は、オタクを集めて立ち上げたような部署なのだが、オタクを集めておくと相乗効果で、さらに高い能力を発揮するとか、隣接分野でも高い能力を発揮するようになることを目の当たりにした経験がある。 「場」にはそんな不思議な力がある。
オタクのマネージャー
最も重要なことは、オタクを仕切るオタクの存在だと思う。
海洋堂でその存在は宮脇社長自身であろう。宮脇氏自らオタクと称しているから間違いないだろう。
オタクのマネージメントができるのはオタク以外にないと思う。 ドラッカー先生も(どの著書だったか忘れたけれど)専門家のマネージメントは専門家が行うべきと述べておられる。
オタク=専門家とすれば、社長=マネージャもオタクでなければならないというわけである。
しかし、オタクのマネージメントができるオタクは普通のオタクを探すより難しいのが現状である。 最近はオタク自体減少しているし、オタクのマネージメントができるオタクはレッドリストものだ。
目標
海洋堂の良い点は量的拡大を目指さない点であろう。
オタクを集めオタクのマネージャを置き一定の成果を得ると、一般的にその上のマネージャは量的拡大を目指す。これが転落への始まりではないだろうか。
オタクやオタクのマネージャは簡単に見つからないので、普通の人をトレーニングしたり、マニュアルを作ってなんとかしようとする。 しかし、オタクが持っている知識・技術はオタクであるが故に持っているものであるから、普通の人は容易に理解・習得できない。(ゆとり君は、教えてくれたらできますというけれど・・・) 結果、サービスレベル(質)が低下するので一定の成果を求めると、さらに量を求めるという悪循環が始まる。
オタクを集めオタクの仕事をきちんと評価するのは、尖った(高度な専門的)サービスを提供するためであるが、量を求めたら当初の目的は達成できなくなるのである。
ビジョナリーカンパニー3「衰退の5段階」にも書いたけど、ウチもちょっと心配だ。
2012/09/27
カンブリア宮殿に宮脇氏が出演していた。誰かが造った価値観でなく自分の価値観で生きているのは羨ましいし尊敬に値する。
ウチも、誰かからやれといわれた仕事ではなく、自分がやりたいからやる仕事ができる職場にしたいものだ。
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