理系のトップはなぜダメなのか
理系トップはなぜダメなのか 諒純也 阪急コミュニケーションズ
一般論として、理系vs文系の議論は血液型別の性格判断と同じ類だ、「B型はジコチュー」のように、「あるある」を見つけて安心するってやつだ。
理系本が最近流行っているらしく、大抵は一部の理系人間の言動についておもしろおかしく解説したものだ。 「理系バカと文系バカ」(PHP新書) のように理系と文系両方を扱った本もあるが、理系の方が面白いのか、最近は理系ばかりがターゲットになっている感がある。
この手の本に登場する理系の例は、理系且つオタクな人や理系且つマネージメント能力がない人達の話であって、理系の人全てがこの本に登場するような人ではないのだが、理系の人全てがそうであるかのように書かれている。(誇張しないと売れないしね)
この本に登場するのは、理系且つマネージメント能力がない人(濃い青の部分)の話である。
ただ、著者の立ち位置は第1象限で、第4象限の人を第2第3象限の人に説明するというスタイルなので第1第4象限の人達にとっては”ヤな感じ”が否めない。
大事なことは、この本に登場する「鳩菅」は理系の代表値ではないということである。
著者の諒氏も理系だからそのあたりは理解しているはずであり、「鳩菅は3σの外」と言いたかったところを少し遠慮して理系全体をバカということにしたと邪推した。
理屈好きの欧米人が筋道立てて説明しているマネージメント論は理系には理解し易いと思う。 ところが、これらの理論は他人が制御可能であることを前提に考えられているので、特に日本的社会でそのまま実践するのは難しく、うまくマネージメントできない理系はいる。
そもそも、マネージメントが難しいことは理系に限ったことではないのだが、この本に登場する”できない人”は理系ばかりなので読者は
理系=マネージメントできない
のように感じてしまうのではないか。
理系ムラでの会話
- この仕事って、あそこの部長が「律速」なんだよな
- おいおい、マーケットグラフの「微分係数」が落ちてない
- あいつの場合、「3σの外」だよね
が理系ムラの外では通じないというのは、まったくそのとおりである。
ウチでは
- この仕事って、あそこの部長が「ファイヤーウォール」なんだよな
- あいつとは、「30dB」違う(あいつとは雲泥の差がある)
等を使うことがある。
「律速」や「微分係数」の概念をお互いに共有していれば簡単に意味が通じるが、概念を共有していない場合には、お互いが理解できる言葉を使って丁寧に説明しなければ通じないということである。
この問題は理系だけの問題ではなく、「自分の常識を前提に他人と話してはならない」と書き直せば、業界方言やギャル言葉などと同じだ。
結論
この本は、一部の理系人間の行動をとらえて理系全体がそうであるかのように論じている。
諒氏は理系出身であるから、あえて、このような構成にしていると考えられる。
とすると、
みごとに「釣られた」という感じだ。
本も買ってしまったし、こんなところに駄文を書いているし...
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