職人学
旋盤工の筆者が高い技能を持った職人を語るという内容
この本に登場する人はほとんどが金属加工に従事する職人だ。
腕の立つ職人は治具や道具を自分で作るという。IT技能者(IT職人)なら使い捨てプログラムといったところか。
伝統工芸や金属加工の職人さんは”コンピュータ化”を嫌う人が多いようだ。
IT業界では職人さんに忌み嫌われているコンピュータを扱っている訳だが、技能も職人気質も情熱もある。
筆者の小関氏が師に尋ねた
「どうして技術の進歩に負けなかったんだろう」
に対する師の答え
「そうねえ。負けたかないやね。すぐに興味を持つほうだから、なんとかなるんだね。できないとは言えないしね。超硬バイトが出たときだって、もう俺の時代じゃないって尻尾巻いて去っていった職人がいたけれど、わたしは、こりゃ面白そうだぞって気になったものね。~略~」
にあるように、新しい技術・デバイスが出たときには先ず、面白そうと思う(興味を持つ)ことが重要であることは、旋盤工でもIT技術者でも同じである。
重要なことは、ブラック・ボックへの対応方法ではないだろうか。
新しい技術・デバイスは最初ブラック・ボックスとして現れるが、取組んでいるうちに完璧に理解できないにしても、使えるようにはなる。使いこなせるようになるためには、科学的・学術的理解だけではなく暗黙知の習得が必要である。
一方ブラック・ボックスをブラック・ボックスとして扱う方法もある。
ブラック・ボックスは、訳は分からなくても一定の結果を得られる便利なシステムである。
ブラック・ボックスをどこかで調達して(パチって)きて、未熟な者を沢山連れてきて数で勝負する。 熟練者の調達にはコストがかかるが、未熟な者(バイトでOK)を使用するとコストが抑えられるので、マニュアル+バイト+"そこそこ"のサービスというビジネスモデルは多い。
一定以上の結果を求めたり、"すぺしゃる"なサービスを提供しようとするならブラック・ボックスの理解は必須であり、その原動力は興味である。
組織のマネージメントを考えるとブラック・ボックスを作る人材が必要である。ブラックボックスの調達コストは高いし、いつもパチってくるわけにもいかない。
体力がある大手は、ブラック・ボックスを使う作業者から選抜してブラック・ボックス作ることができる技術者を育てるという技能伝承のサイクルを保つことができる。 大手企業が未だに技能五輪に参加している理由はここにあるのだと思う。
体力のない中小零細にとって技能伝承は大きな問題である。
新しい技術・デバイスに対して興味を持つという素質を持った者が燃え尽きる前に育てなければならない。
技能伝承に無関心なマネージャは後先考えず、素質を持った人材を燃え尽きるまで酷使するので困ったものである。
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