Software Design 2012/12
特集:なぜエンジニアは文章が下手なのか
Software Designがちょっと硬派な特集をやっていたので読んでみた。
目から鱗は「わかったような気にさせる文書」と「真の理解を得るための文書は違う」ということ。
わかりやすさ至上主義の落とし穴
人に「困難な課題を学習してほしい」とき「わかりやすく説明してはいけない」場合がある。
「必死に考える」プロセスなしに人が問題の本質を「理解」することはありえません
困難な課題を学習してほしい人に対しては、分かったような気にさせないように気をつけよう。
わかったような気にさせる文書やわかったような気にさせる説明はときに必要である。
真に理解させず、わかったような気にするような文書や説明をすることについて、いかがなものかという意見はあるだろうが、それはそれで良い。分からないと拒否反応を示されるより良いし、真に理解を得ようとする人は、遅かれ早かれ分かっていないことに気が付くであろう。
IT業界にいるとカタカナ単語が多い。異常にカタカナ単語が嫌いな人がいてカタカナ単語は漢字で書きなおすように、カタカナ禁止令を出したりする。漢字で書くと専門知識がなくてもなんとなく意味が通じるということである。
例えば「ブロードバンド」は「大容量回線」と書くとIT業界の人でなくても概念を伝えることができる。
カッコいいからといってわざわざカタカナ言葉を使うのは論外として、IT業界では概念が日本語になっていない単語が多い。
例えば、IT業界で「ファイアー・ウォール」といえば
ある特定のコンピュータネットワークとその外部との通信を制御し、内部のコンピュータネットワークの安全を維持することを目的としたソフトウェア(あるいはそのソフトウェアを搭載したハードウェア)の技術概念である。
出展:wikipedia
であるが、これを「防火壁」と記述しても概念を伝えることができない。
未だにIT業界で使う「ファイアー・ウォール」の適当な漢字表現がない。
このように、未だ訳語が無い単語、概念は多く、カタカナ禁止で文章を書くと注釈だらけになり、分かりやすい以前に読みにくくなってしまう。
ITの知識がない人を対象に文書を書く場合には、カタカナを使っても、注釈だらけにしても、わかりやすくはならない。このような場合に、わかったような気にさせる文章が必要になる。詰まるところ、読者の想定が重要ということである。
時には、ITの知識がない人に対しても、「理解できないだろうなあ」と思いながら技術的に正確な文章を書く必要もあり、その塩梅が非常に難しい。
湯本堅隆氏の『「書いて、振り返る」のサイクルが文章力を上達させる』の3つのポイント
- 一語多義の言葉は使わない
- 接続詞を多用しない
- 主語と述語は近づける
は、『3つ』がポイントであろう。
ここで取り上げられている3つのポイントはもちろん重要であるが、「3つのポイント」が重要だと思う。
文章の書き方本を読むと、文章を書く上での心構えからテクニックまで多くのポイントを説明してあるが、全てを覚えていられない。ましてや、マスターするのは相当大変である。
とりあえず重要な3点なら覚えていられるし、気を付けて文章を書くことができるので、自分の文章に欠けている3点を見付けて、気を付けて文章を書く。
そのうち最初の3点は身に付くので、次の足りない3点を探し気を付けて文章を書く、を繰り返すと徐々に文章が上達する。
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