舞妓の言葉
物を作る職人は作った物が人前に出して恥ずかしくないレベルにならないと一人前にはならないから修業期間が長い。最低10年とよく言われる。
舞妓は研修期間(仕込み)1年の後に舞妓と呼ばれるようになり、一人前とはいえなくても現場に投入されるので、置屋・茶屋のお母さん、先輩の舞妓・芸妓さんなど街全体で成長をフォローする仕組みがあるのだろう。
この本で取り上げられている例はOJTにより訓練を受ける側(仕込み、舞妓)の心構えに関するものが多い。OJTの効果を上げるためには、OJTを受ける側が能動的・積極的であること、OJTをする側(先輩、女将、花街)が目標と手段を明確にしていることが必要である。
花街では舞妓をどう育てるかは長い歴史から明確(しきたり)であるから、OJTを受ける側(仕込み、舞妓)の意識をいかに変えるが問題である。
見習い時期に意識を変えることにより、見習い終了後後輩を育成するという意識が高くなり(育ててもらった恩義)、良好なOJTの連鎖が構築されているのだろう。
育成期間に十分なOJTを受けていない者は、自力で技能を修得したとの驕りが生じる。(過去自分もそうであった。)自力で技能を修得したと思う者は、後輩に対して適切なOJTができず、組織全体でのOJTの連鎖が途切れてしまうのではないか。
OJTの連鎖が切れた組織は、教育・訓練の成果を受講者個人に求め、「OJTという名の放ったらかし」になる。
今時の”早期戦力化”や”早期育成”を分かりやすく言うと「丁寧な新人の教育はしません」という意味だ。1年の研修期間で現場に投入し、OJTによりスキルを向上させるという育成方法は早期戦力化を真面目に考えている職場では参考になりそうだ。
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東洋経済オンラインにこの本の元になった記事がある。
(第1話)舞妓さん育成の秘密
(第2話)舞妓さんのもっとも大切な3つの言葉
(第3話)舞妓さんの「多面的な気遣い」を育む言葉
(第4話)舞妓さんのモチベーションを高める言葉
(第5話)舞妓さんの「間違いから学ぶ姿勢」を育てる言葉
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