分かりやすい説明
「科学を熱く語って!」や 「学び続ける力」でメリッサ・マーシャル氏や池上彰氏は、科学者、技術者は分かりやすい説明をすべきであると仰るので、「分かりやすい」について考えてみた。
まず、「分かりやすい」の逆、「分かりにくい」について考えてみた。
「分かりにくい」には次の3つのパターンがある。
- 説明や文章に使用する単語の意味が分からない。
- 説明や文章の論理構造が理解できない
- 文章から論理構造を抽出できない
- 説明や文章に使用する単語の意味が分からない。
説明に使用した単語の意味が分からなければ、説明が分からないのはあたりまえである。
重要なことは、単語の意味だけではなく概念や 暗黙の了解の部分も含めて理解、共有することであり、概念や暗黙の了解の部分を共有していないのであれば、この部分を丁寧に説明しなければならないということである。
意味が分からない単語の代表は専門用語であろう。メリッサ・マーシャル氏も池上彰氏も指摘している。
専門用語は一般的でない概念、暗黙の了解を含んでいることに注意が必要だ。
例えば「DRAM」は、「記憶保持動作が必要な随時読み出し書き込みメモリ」と説明されることが多く、なんとなく分かる気がするが理解できたとは言えない。DRAMという専門用語は、文脈によって異なる概念を含むからである。
「貿易摩擦」という文脈では「1980年代政府主導で微細技術を完成させ世界を席巻した。」は暗黙の了解事項かもしれいないし、「経営のスピード」という文脈では「DRAMは資本集約型産業であり投資の規模と判断のスピードが重要である。」が暗黙の了解事項である。このように「DRAM」という単語が異なる文脈で登場した場合異なる概念を含んでいる。
専門用語は、分かり良い言葉に翻訳(日本語に)するだけでは不十分で、文脈に応じた概念も説明しなければ理解はできない。
- 説明や文章の論理構造が理解できない
説明に使用した単語が分からないわけではないが説明の論理構造が理解できないことがある。
例えば、タオ「小鮮を煮る」を原文から理解することは難しい。(昔漢文は習ったけれど)
加島祥造氏が現代詩風に訳してくれている文は確かに読み易くなってはいて、分かったような気になるけれど、意味するところはやっぱり分からないのである。
- 原文
- 「治大國、若烹小鮮。」
- 書き下し
- 「大国を治むるは、小鮮を烹るが若し」
- 加島訳
- 「大きな国を治めるためには小魚を煮るようにせよ。 よくこういう言われるがね。それは、小魚を煮るのにあちこち突っつけば、形が崩れちまう―――そこを言うんだ。」
「分かり易い」と「分かる」は別物ではないかと思う。
- 文章から論理構造を抽出できない
説明が難解で論理的構造が抽出できず、いったい何が言いたいかが分からない説明である。
これは論外である。
- 説明する人の理解が足りない場合
- 説明や文章作成スキルが足りない場合
理解が足りないのは論外であるが、プレゼンや文章作成は習得できるスキルであるから、経験や学習することにより改善できる。
典型的な「分かりにくい」は、専門用語を丁寧に説明しようとして、論理構造が崩壊したり論理構造が抽出できなくなる例である。自分の暗黙の了解(常識)は世界の常識と思っている人は、専門用語を過不足なく説明したり、暗黙の了解に頼らない論理構造を組み立てられないことが多く、「分かりにくい」説明や文章になりやすい。
複数の人が添削した場合にも良く見られる。添削する人は悪気はないのだが添削する度に「分かりにくい」を超えて「難解」になったりする。
説明する人の常識、説明される人の常識、に添削する人の常識が加わるので複雑さは倍増どころではない。しかも、なぜ修正しなければならないかを説明しないで添削している人は多いような気がする。自分の常識について考えたことが無いのでなんとなく添削しているのだろう。
「オレにはちっとも分らん」といえば「分かりにくい文章」になってしまうのだけれど、添削する人は、説明する人の常識、説明される人の常識、添削する自分の常識を理解したうえで添削しなければならないのではないだろうか。
分かりやすい説明(3) (2013/8/9)
分かりやすい説明(2)(2013/7/15)
分かりやすい説明(2013/7/7)
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