零戦
初版は1970カッパブックスで、角川版は1984の発刊だ。ジブリの「風たちぬ」を当て込んで増刷したのだろう(いかにもという帯だ)、いつも立ち寄る書店で苦も無く見つけることができた。
初版は1970なので、堀越二郎氏は零戦について、技術的意義、社会的意義について整理ができていたのではないか。
兵器は人を殺すために存在する。事実ゼロ戦は少なからぬ敵兵を殺し、少なからぬ自国兵が死んだ。
リチャード・ファイマン氏も何かの本に書いていた、核分裂の兵器への利用は間違っていなかった。のだそうだ。
この本を、戦争に利用された技術者の自叙伝として読むか、戦争に参加した技術者の自叙伝として読むかは読者次第だろう。
戦争は、軍人、技術者を問わず人の死を考えられなくする。そういうものなのだろう。
NHKで半藤一利氏と宮崎駿氏の対談を見た。
対談の中でこの本のことが話題になっていた。 この本の違和感は、当時の国(軍部)の方針や自分の責任についての記述に当事者感が無いことである。
両氏とも堀越二郎氏はこの本で本音を語っておらず、奥歯に物が挟まったようだと言う。
本音を言うつもりは無かったのではないのかとも言う。
なるほど、そうかもしれない。(2013/8/3)
この本の著者は昭和54年生まれ、初版は2009で、客観的に技術的面を研究した本である。零戦について知りたいなら客観的な本の方がよいと思う。
設計した人、操縦した人、戦闘した人など当時を知っている人が書いた「零戦」は客観的でない。
結論は、
零戦の運用という観点で考えると、パイロットの訓練に必要なコスト、損失時のコストが最も高い。
零戦は熟練パイロットに頼る戦闘機運用を前提に設計された機体であるが、熟練パイロットの育成、損失について考慮されていなかった。ということか。
同じようなことは普遍的に存在する。
熟練技術者に依存した組織運営をしておきながら熟練技術者を育成せず、外部委託すればよいという人たちがいる。熟練技術者がその組織に不可欠であるにもかかわらず。である。
「熟練技術者」を「イノベーション」に変えても同じことである。
現代人は先人に学んでいるのか
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