宮崎駿氏、高畑勲氏、鈴木俊夫氏鼎談
去年見た宮崎駿の「風立ちぬ」で堀越二郎の描かれ方が引っ掛かっていた。
また、先日見た実写版「魔女の宅急便」でキキが飛べなく理由がジブリ版と違うと思った。
文藝春秋 2014/2に「スタジオジブリ30年目の初鼎談」が掲載されていることを知り読んでみた。
高畑勲氏が「風立ちぬ」について指摘している
高畑:僕は『風立ちぬ』を多くの女性と同様に堀越二郎と菜穂子の恋愛映画だと思って観て、恋愛映画として納得しました。でも、これは言っちゃっていいのかな。映画の終盤に変わり果てた大量の零戦が並ぶシーンがありましたが、その前に、この対戦で何があったのか、客観描写でいいから描くべきだったんじゃないかと思いましたね。
は、映画を見た後に感じたことだ。一緒に観た娘は高畑氏が指摘するように恋愛映画だと思ったようだ。
これに対して、宮崎駿氏は
宮崎:パクさん(高畑氏の愛称)のような意見が出くると思っていましたけど、それを描いたとして、零戦の設計者である堀越二郎の人間像が変わるかといったら、ぜんぜん変わらないですよ。
と言いう。宮崎氏は
半藤利一氏との対談でも触れているが、堀越二郎は戦争との関わりについて語るつもりはないのではないかと言っている。
宮崎氏も考えた末に触れないことにしたのだろうか、それとも
「堀越二郎が技術者として戦争に関わることについて」という観点でこの映画を観る者は少ないと踏んだのか。
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魔女の宅急便でキキが飛べなくなる理由について、高畑氏が宮崎氏に問う
高畑:『魔女の宅急便』の主人公・キキが一時空を飛べなくなりますけど、この理由について、フランスの子供に聞いたら、なんて答えたか分かりますか。「トンボに恋したからでしょう」って。フランス人は理性というものを重んじるのですが、その理性の留め金を外してくれるのが恋愛なんですね。だから彼らは恋愛がすきなんです。
しかし、日本人に聞いたら、何も説明しなくても、魔女であることの疎外感というか、仲間はずれ、自分の居場所が見つからない辛さを感じるはずです。
と。
更に、映画の中で絵描きの女性に「魔女の血、絵描きの血、パン職人の血。神様か誰かがくれた力なんだよ。」と語らせていることについて高畑氏は「「血」で説明するのはずるいと思ったんです。」と言っている。
それに対して宮崎氏は
宮崎:でも仕事と言う形で、社会とつながって精神的な安定を得るということは確かにあるんですよ。仕事という自分の役割を失うことが人間にとってどれだけ辛いことなのか。
と答えている。
とすると、キキが飛べなくなる理由は実写版の描き方の方が分かりやすい。
原作(第2巻)も飛べなくなる原因は、疎外感より仕事にあるように書かれていると思う。
宮崎氏の意見を聞いて疑問に思っていたことが1つ解決した。
まあ、見た人、読んだ人が勝手に解釈すればいいんだけどね。
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