「ビジネス顕微鏡」
日立の「ビジネス顕微鏡」をYoshi品質研究所さんの毎日コラム第893回で知った。
調べてみると
日立: | センサーネットとビッグデータ抱き合わせで売りたい |
ビッグデータの研究者: | 目の付けどころがInspier the nextだね |
中間管理職: | 機械で組織が活性化できるなら人はいらねえ |
経営層: | ダメ中間管理職の尻が叩ける |
従業員: | 監視強化!トイレにもオチオチ行けねえ! |
ってとこかな。
###
日立のニュースリリース:
集団の幸福感に相関する「組織活性度」を計測できる新ウエアラブルセンサを開発」
日立評論2012年2月号:「組織内コミュニケーションを可視化」
簡単にいうと、センサーネットワークとビッグデータ解析で人の行動を分析するというものだ。
センサーという物理層に近いレイヤからビッグデータという抽象的なレイヤまでカバーしている総合電機企業の面目躍如ってところか。
傍から見ると日立さんはお堅い社風のイメージがあるので、「弊社でこのシステムを導入したら、組織が活性化しました。」って売ると説得力があるのでは。
つまり、日立は、「センサーからネットワーク、ビッグデータまでカバーできます。」で売りたい。
###
先日、日立が開発した「職場の人の動きをモニターする」というシステムをニュースで紹介していました。
職場での人の動き、例えば誰と会話したとかずっと止まっているとか、そういうことを各自が持つウェラブル端末からのデータで数値化して、その職場が「活性化状態にあるかどうか」を判別するのだそうです。
しかし、私はこのシステムに疑問を持たざるを得ません。
確かに数値化すればわかりやすくなるとは思います。でも、本来職場を活性化しようとすべき人間は誰?と思うのです。それはその職場の長やなのではないでしょうか?
活性化しているかどうかなどは、きちんとその職場を所属長が目配りしてみていればわかるはず。そして活性化していないと感じればそれに対して自分が接着剤のように動いたり、何らかの施策、例えばミーティングや会話する場を提供するなどをするはずです。
数値化されてから動くのではなく、その場、その時ですぐに動くようにするのが重要で、そのための目配りだと思うのです。
確かに素晴らしいシステムなのかもしれません。しかし使う側の人間がその数値に頼り切るようになったら、無用の長物となりかねません。
そのとおりだと思う。
「組織活性度」がいくら数値化できようとも、組織を活性化するための施策、取り組みを推進するは中間管理職だ。
組織の活性化を考えている中間管理職ならば、数値化による組織の異変が明らかになる前に異変には気がついているし、気がつかないような者は管理職にすべきでない。
この「ビジネス顕微鏡」は「組織活性度」だけでなく、人と人の繋がりやキーマンも可視化できることが売りだ。しかし、現場ではそんなこと分かっている。分かってないのは経営層だけということはよくある話だ。
つまり、Yoshi品質研究所さんは中間管理職目線
###
電子情報通信学会誌に掲載された「ビジネスコミュニケーションの測る化」
情報処理的には、業務生産性に関するデータ、ウエラブル端末で収集した行動データ、個人のハピネス度のデータを集めたビッグデータを解析して、一見測定できそうにない「組織活性度」や「人間関係」を測定、数値化しようとするもの。
この方面の人の流行は「測る化」なんだそうです。
日立のサイトによると、「ハピネス度」を向上させると「業務生産性」が上がるのだそうだ。
一見「ハピネス度」と「業務生産性」に相関がありそうだけれど、これは疑相関で「ハピネス度」と「業務性賛成」に相関はなく、てそれぞれの数値が「組織活性度」と相関がある。 つまり、
- 「組織活性度」と「ハピネス度」には相関がある。
- 「組織活性度」と業績には相関がある。
- 「組織活性度」はウエラブル端末から収集した人の行動データから数値化が可能
「業務生産性」だけ考えれば他にも相関があるデータがあるのだろうが、「ハピネス度」と「業務生産性」共に相関があるデータ「組織活性度」をビッグデータから明らかにしたもの。
つまり、「組織活性度」が向上すると従業員の「ハピネス度」も向上するし、会社の業績も向上する。従業員と会社がWin-Winになるための数値というところがミソだ。
ビッグデータ研究者は目の付け所がInspier the nextだね
###
Slashdotの『「コミュニケーション監視デバイス」は社員を管理するための「鎖」になるか』
スラドにもスレが立っている。一言で言うと酷評だ。
ここに書いている人は、分析結果から施策を考える人ではなくウエラブル端末を装着させられる人達だから、経営者(層)の監視強化と感じてしまうのだろう。
スレの中の発言「上司の無能度を計測するデバイスを」に表われている。
「上司の無能度」もビッグデータを解析すると「測る化」できるのではないだろうか。
「個人活性度」は個体が特定できればよいので個人が特定できないようにデータを集めることができるだろう。一方で、人間関係を測定してキーマンを見つけるしようとすると個人と特定してデータを収集しなくてはならない。
データを集められる側としては、自分の行動を誰かに記録され、分析されているのは気持ちのよいものではない。かといって、個人ではなく単なる個体として扱われるのは人として嫌だ。
このあたりの心情に配慮しないで導入すると、「組織活性化」どころか組織が不活性化しそうだ。
« 失敗への分岐点 | トップページ | トマ・ピケティ『21世紀の資本論』を30分で理解する »
「よしなしごと」カテゴリの記事
- コロナワクチン予約サイト(2022.04.30)
- 子供とネットワーク社会での問題解決 2題(2022.02.24)
- スマホ用拡大鏡(2022.01.28)
- 個人的な能力でサービスを提供してはならないのか(2021.10.27)
- デジタル庁に期待?!(2021.10.14)
コメント