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2015年7月 9日 (木)

トヨタ経営システムの研究―永続的成長の原理

トヨタ経営システムの研究―永続的成長の原理 日野三十四 ダイヤモンド社

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 元マツダの人が書いたトヨタの本。

 書店でトヨタ本は多く見かけるが、「カイゼン」や「トヨタ生産システム」や「企業文化」などトヨタの一部を取り上げた内容が多い。

 著者の日野三十四氏が同じ自動車製造業に従事していたとはいえ、この本は、社史、組織論から生産システムまで研究の幅が広い。
特に前半は製造業でなくても参考になる。

 日野三十四氏は日経テクノロジーに自身の技術者としての半生を連載しておられる。(一人の技術者がモジュラーデザインを確立した軌跡 ) 

 その中の「合理的・革新的な言動が物議を醸し、ロータリーエンジン実験課から離れる」に、久米先生語録連関図がある。この図は、書籍中でもA社の失敗例として紹介されている。更にこの図を裏返したものも紹介されていてそれがトヨタの成功例だという。

 原因系の最も根本的な項目は、マツダは「田舎の悪さが出ている会社」で、トヨタは「田舎にある良さが出ている会社」であるということだ。そして、もう一つ根本的な項目は、マツダの「語り部の集団」に対してトヨタは「文書と記録で受け継ぐ集団」ということである。

 マツダの連関図をみてホンダの人が「この図はうちのことじゃないかと思った。」と語ったそうだから、多くの会社はこの図のような構図があるのだろう。

 ウチは製造業ではないけれど、符合するところがたくさんある。この図と異なるところは、「文書によるコミュニケーション」である。 ウチもマニュアル化も好きだし、文書で指示をしないと動かない。

 しかし、マニュアルを作ることが目的になっていて、マニュアルが更新されず、苦労して作ったマニュアルが使われなくなる。そしてまた誰かがマニュアル化を指示ずるという非生産的な作業を繰り返している。

 また、時代遅れの通達を金科玉条のごとく扱い、問題を解決するのではなく通達を逸脱しないことしか考えない。

 文書主義は官僚組織の特徴である。トヨタくらい大きい会社になると、ある程度官僚的にならなければ全体をコントロールできない。

 なぜ、トヨタは、官僚組織の逆機能が働かず、「文書によるコミュニケーション」(文書主義)が有効に働いているのかを考えた。

 日野三十四氏は↓のような企業モデルで説明している。

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出展:「トヨタ経営システムの研究―永続的成長の原理」 日野三十四, 図0-4企業モデル 

 企業モデルで各企業を透かしてみると、構造ごとに濃淡が出てくる。その濃淡が企業の成長力の程度を示している。上部構造は濃いが下部構造が淡い企業は、ビル・ゲイツが驚かないといった『五年間成長』の企業である。たまたま時流に乗って、もしくは二番手戦略で製品が売れているだけであり、一〇年、二〇年単位で見ると、経営が破たんしている可能性が大きい。
―略―
逆に上部構造は淡いが下部構造が濃い企業は、初期のトヨタの姿であり、『二〇年、三〇年にわたって継続的に優れた成果を出す企業』としての資質を持った企業である。

 つまり、企業モデルで示されたピラミッドの下層の部分「遺伝子・DNA」「パラダイム」を全員が共有していれば「文書によるコミュニケーション」が有効に働くが、共有していなければ「前例主義」「繁文縟礼」になるということだろう。

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