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2016年1月27日 (水)

デジタル証拠の法律実務Q&A - DFの専門家にも参考になる -

 デジタル証拠の法律実務Q&A 高橋 郁夫 (編集), 梶谷 篤 (編集), 吉峯 耕平 (編集), 荒木 哲郎 (編集), 岡 徹哉 (編集), 永井 徳人 (編集) 日本加除出版株式会社

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 よく見たら、この本には著者が記載されていない。

 デジタルフォレンジクス(Digital forensics)の書籍は、技術者が技術者に向けて書いたもの、専門家が非専門家に向けて書いたものなどたくさんある。この本は、法律家が法律家に向けて書いた(編集した)もの?である。

 デジタル証拠が法廷で争われることが増えている現状では、DFは技術者だけの関心事項ではなくなっている。法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)がデジタル技術によって作られ、DFによって証拠化された情報をどのように理解するかはDFの専門家のみならず法律家もまた大きな感心事項である。

 DFの技術者は、本当に理解してもらえるのだろうかという不安が常に付きまとっている。

 この本は、法律家が理解できるであろう技術レベルで書かれ、法律家が理解し易い表現、比喩が使用されているので、DFの専門家が法律家に説明する際の参考になる。

 サイバー犯罪においては、証拠となるデータの採集、可視化、説明において専門家の知識・技能が必要となる。

 専門家の知見を必要とするのはサイバー犯罪に限らない。専門家は法曹三者に事実や推測を説明(証明)し、法曹三者はその説明(証明)を理解する必要がある。

 ここで、説明(証明)が物理法則に帰着するなら非専門家が理解し、理解に基づく判断することは容易である。

例えば、

 大阪の犯行現場に犯行時間にいなかったことは、犯行時間の30分前に東京にいたことを証明することで足りる。

 なぜならば、東京-大阪間は30分で移動できないという物理法則があり、この法則は誰でも真と評価できるからである。
 ここで、「ドラえもんが持っている『どこでもドア』を使用すれば可能である」との反論は「合理的な疑い」にはならない。現時点において物理法則に照らして誰もが「偽」と評価するからである。

 サイバー犯罪が、他の犯罪と異なるのは、犯罪が現実空間に現れずサイバー空間だけで完結してしまう可能性があることである。 サイバー空間には、非専門家が専門家の説明(証明)を理解する上で必要な、現実空間の「物理法則」に相当するものがない。

例えば、

「犯行後痕跡を、専門家が発見できないように消去し、自身も痕跡を残さず消滅するウイルス」は現実空間における「どこでもドア」なのか、それとも、「合理的な疑い」を差し挟む余地があるものなのか?

 この疑問は、DFの専門化と法律家との間に「共通に真とする知識」がないことが原因であろう。

 この問題は、Trojan hose Defence として現実の問題となっているのだが、日本ではまだ議論されていなのではないか。

 解決策として、法曹三者の知識レベルを上げ、専門家と法曹三者との「共通の知識」を増やし、「共通の認識」を持つとは有効である。 この観点から、この本は法律家のみならず専門家にも参考になる。

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