個人を幸福にしない日本の組織
個人を幸福にしない日本の組織 太田肇 新潮新書
太田肇氏は「『みせかけの勤勉」』の正体(2012/0607)」、「頑張ると迷惑な人(2016/05/)」の著者だった。
「国民的美少女コンテスト」のグランプリ受賞者が大成しないことを例に、選択が困難なのではなく、選択に意味がない時代だという。 NHK朝の連ドラのヒロインより脇役の方がブレークするのと同じ構造だろう。
入試や採用、幹部登用など人を選ぼうとすると、選ぶ人の価値観が色濃く反映される。 昭和元禄といわれた(古いね^^;)時代のように、時代の価値観と、選ぶ人の価値観に差がないときには正しい選別ができるのだろうが、現在のように時代の変化が速い場合、時代の価値観の変化も早い。
つまり、時代の価値観とはズレた価値観を持った(特に年寄)が、人(一般に若い人)を選別していると言う構図だ。 当然、選別された人は、時代遅れの価値観を持った人が多くなる。 そして、時代の価値観とはズレた人が多い組織は、停滞し、衰退し、ついには破綻する。
太田肇氏は 日本人が個人より組織を優先し結果的に生産性が上がらない原因として、リーダの資質だけではなく、各階層に問題を持った者がいると指摘する。
組織内での規制緩和が進まないのは、まえ がきで述べた「扇動型リーダー」のアジテーションや「パラサイト組織人」たちの抵抗だけが原因ではない。いわゆる識者やオピニオンリーダーたちでさえ表面 的には時代の変化を理解していても、事の本質がよく分かっていないことが大きな原因である。
そのため、「日本企業の強みである組織への帰 属意識やチームワークで勝負すべきだ」とか、「創造的な人材を選りすぐって採用しなければならない」「○○力を備えた自分を選んで入学させ、学生を品質保 証して世の中に送り出そう」といった旧態依然の議論、もしくは従来の延長戦の議論に終始してしまう。
その、各階層の問題児とは
- 「先導型リーダー」
人々の味方を装いながら自分の権力、影響力を強めようとする。 - 「パラサイト組織人」
先導型リーダーに追従し甘い汁を吸う。 - 「組織大好き人間」
組織にいるとなんとなく安らぐ、仲間と一緒だと心地よい。
個より組織を優先する「組織の論理」を進んで受け入れ、組織に忠誠を尽くそうとする
なるほど、思い当るフシがある。
価値観は時代とともに変化する。そして、組織の活動は組織内で完結することは少ないから外部との関係を考える必要がある。 特にサービス業は顧客なしには組織が存続しない。
組織の存続と組織への帰属を優先すると、組織の価値観を変えることはタブーになる。 一方で、顧客の価値観は時代と共に変わるから、顧客の価値観と組織の価値観にズレが生じる。
その結果、組織が存続できなくなる。ということだろうか。
この本は日本型組織への問題提議だ、そして問題を解決するためには
- 良好なチームワークには個人の自立こそ必要
- 社員の自発的な動機付けが大切なので組織や管理職による介入は控える
- 既成の尺度で評価できないからこそ創造的・独創 的である
- 人の手で選ぶより神の手に委ねる
という発想の転換が必要だという。
しかし、率直な感想としては、組織全体が発想を転換するためには、組織が存続できないほどの危機に直面しないと難しいと思う。(JALや日産のように)
「神の手に委ねる」という境地になるまで時間がかかりそうだだが、まず、自分自身が発想を転換することが必要だ。組織が存続しているうちに。
「人の手で選ぶより神の手に委ねる」が難しそうだけど、「古い価値観の自分は新しい価値観を創造する者を選べない」と考えれば良いのかと思う。
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