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2016年8月10日 (水)

工学系卒業生のキャリア形成(中) <技術者にとっての読書>

工学系卒業生のキャリア形成(中) 技術者にとっての読書 産学官連携ジャーナル 2008年4月号 濱中 淳子

 ちょっと古い記事だけど面白いデータがあった。産学官連携ジャーナル 2008年4月号から6月号に連載された濱中淳子氏の記事だ。

 工学系の大学を卒業した人が現在よく読む本を調査したもの。現在働いている業種を技術系とそれ以外で分類している。

【「現在、よく読む」と回答した者の比率】

(https://sangakukan.jst.go.jp/journal/journal_contents/2008/05/articles/0805-09/images/0805-09_tbl_1.png)

 この結果から分かることは、技術者がよく読むのは「専門書」、読まないのは「ビジネス書」や「歴史小説」ということ。

 現在の所得とよく読む本のジャンルとの関係を調べると、
技術者の所得向上をもたらす要因は「歴史小説」と「ビジネス書」(正の関係)、「趣味・娯楽書」(負の関係)であり、技術者以外の人の所得向上をもたらす要因は、「ビジネス書」らしい。 よく読む本の他に、「年齢」や「企業規模」「性別」も所得に影響を与える。

 「専門書」が技術者の所得向上に影響せず、「ビジネス書」や「歴史小説」の方が所得向上に影響するの意外だ。

 さらに興味深いのは、大学時代に専門書を読み現在ビジネス書を読んでいる人の所得向上が見られるということだ。

【読書の所得効果(技術者のみ)】


(https://sangakukan.jst.go.jp/journal/journal_contents/2008/05/articles/0805-09/images/0805-09_fig_2.png)

 濱中淳子氏は「所得」で評価しているからこのような結果になるのだろう。

 「所得」を考えるなら、技術職よりマネジメントなどの管理職に就く方が所得は高くなるだろう。 そして、マネジメントで業績をあげようとするならば、「専門書」ではなく、「ビジネス書」の方が有効なのだろう。

 もし、「技術的貢献」(定量化が難しいが)で評価したならば、「専門書」の方が有効という結果になるのではないだろうか。

 この結果を平たく言うと「給料を上げようとするならば、技術者ではなくマネジャーを目指した方が良い。マネジャーを目指すなら、ビジネス書が有効」と理解することも可能だ。

 本を読むようになって気が付いたことは、読書に割ける時間は一定ということだ。 若い頃は専門書ばかり読んでいて、マネジメントするようになってビジネス書を読み始めた。その結果、専門書の読書量が明らかに減った。

 「専門書」も「ビジネス書」も両方のジャンルを人並みに読むことは困難だから、若いうち、特に学生時代には専門書を読んでおくほうが良いと思う。

 若い人たちには、身銭を切って「専門書」を読むように薦めている。マネジメント志向の人は「ビジネス書」を読むことも重要だが、図にあるように、専門書をベースにビジネス書を読んだほうが効果があるようだから間違ってはいないだろう。 

 濱中淳子氏の評価基準である「所得」は「成果」の分かり易い指標と捉える方が良いと思う。技術を持っているだけでは誰も利益を享受できない。技術を活用して初めて利益を享受できる。 そして、顧客に利益をもたらすことが「成果」である。

 「成果」と「所得」に正の相関があるならば「所得」は分かり易い指標だ。

 ドラッカー先生は、知識労働と肉体労働両方を行う者をテクノロジストと呼んでいる。そして先進国においてはテクノロジストが不可欠であると仰る。

 技術者は技術・技能だけではなく知識労働者としてマネジメント能力を身につけることが必要だから、今時の技術者は「ビジネス書」や「歴史小説」を読まなければならないと思う。


  • リンク切れを修正(sangakukan.jp→sangakukan.jst.go.jp) (2019/0915)


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