戦略的思考とは何か <愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ>
戦略的思考とは何か 岡崎久彦 中央新書
この本の初版は昭和58年だ。ベルリンの壁が崩壊したのは1989年(平成元年)だ。冷戦は終わっていないから、情勢は現在とは異なる。しかし、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という本質は変わっていないと思う。
2016/12/15に安倍総理がロシアのプーチン大統領と会談した。この本に書いてあることを考えると、プーチン大統領の対応は想定どおりだろう。
ロシア海軍の太平洋艦隊にとって宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡の重要性は日露戦争の前から変わりはないから、北方領土4島は戦略的に重要だ。しかも、現にロシア人の住民がいるのだから「返還します。」などと言うわけがないだろう。今回プーチン大統領が言及した1956年の日ソ共同宣言でも「引き渡す」としたのは2島だけだ。
冷戦末期に旧ソ連が経済的に困窮したときに、ゴルバチョフ書記長が経済援助と引き換えに帰属権を持ち出したときには、自らの政権が危ういという状況だったが、プーチン大統領は日本の経済援助がなければ政権が危うい状況ではないことを考えると、ビザなし交流の拡大と経済援助とのバランスはロシアが上手く立ち回った感がある。
ロシアは北方領土4島を安全保障上の問題と捉えているけれど、日本は経済問題として片付けようとしているのだろうか。
とはいえ、損得ではなく領土を守るという姿勢を示すことは尖閣問題を考えると安全保障上の問題からも重要であると思う。
宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡の戦略的重要性を40年前に教えてくれたのは高校の社会科の先生だった。今は尖閣諸島が問題になっているけれど、ロシアにとっての宗谷海峡、津軽海峡と同様に中国にとっての尖閣諸島も重要なポイントということだ。
日本は島国だから隣国の意識が低いのかもしれない。ロシアも中国も隣国であることを忘れてはならないと思う。
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