『男はつらいよ』の幸福論 <寅さんが教えてくれたこと>
『男はつらいよ』の幸福論 <寅さんが教えてくれたこと> 名越康文 日経BP
よく考えたら、「男はつらいよ」を映画館で見たのは1、2本くらいだ。ほとんどはテレビをで見ているのだが、家族にチャンネルを変えられてしまうことが多い。
十数年間前病気で3か月くらい休んでいたときにケーブルテレビをよく見ていた。古い邦画が多くて毎日のように寅さんシリーズをやっていたのでたくさん見た。それでも、この本の巻末にある全作品のデータを見ると、記憶がない作品がかなりある。
後期の作品では満男が重要な役になり最後は満男が主役になっていた。満男はときどき寅さんに哲学的な質問をする。
よく覚えているのは、三田佳子がマドンナだった『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』だ。大学受験を控えた満男が寅さんに、なぜ勉強するのか尋ねたときの寅さんの答えが秀逸で
満男 「じゃ、何のために勉強するのかな?」
寅 「え、そう言う難しい事は聞くなって言ったろう。
つまり、あれだよ、ほら
人間長い間生きてりゃいろんな事にぶつかるだろう。
な、そんな時オレみてえに勉強してない奴は、
この振ったサイコロの出た目で決めるとか
その時の気分で決めるよりしょうがないな、
ところが、勉強した奴は自分の頭で、
キチンと筋道を立てて、
はて、こういう時はどうしたらいいかなと
考える事が出来るんだ。
だからみんな大学行くんじゃないか、
そうだろう。」
と答える。
以来、子供に同じ質問をされたら寅さんの受け売りをしている。
一番好きなのは、大地喜和子がマドンナだった『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』だ。大地喜和子は人気マドンナランキングでは浅丘ルリ子、吉永小百合に続いて第3位らしい。
大地喜和子が演じる芸者ぼたんが詐欺にあって困っているのをなんとかしようと、宇野重吉が演じる絵の大家に絵を描いてやれと言う。寅さんにとっては金も名声も関係なく友達だ。友達が困っているなら一肌脱ぐのは当然のことだ。寅さんがヤクザな商売をしているから義理人情に厚いというわけではなく、現代人が忘れてしまったことなのかもしれない。
「金のために絵は描けない」という宇野重吉が演じる絵画の大家と、「知り合いが困っているなら助けるのが当たり前」という寅さんの言い分はどちらが正しいというものではないだろう。 金を出すと言う宇野重吉に対して寅さんは、「ゆすり、たかりじゃない」とけんか別れになる。
最後は、宇野重吉が大地喜和子に絵を送り丸く収まるのだが、最初に見たときには、宇野重吉演じる画家の気持ちが理解できなかった。
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