できる人が会社を滅ぼす <意味・目的・価値を考える>
「できる人」が会社を滅ぼす 柴田昌治 PHP
柴田昌治氏は「できる人」の大半は「さばくのがうまい人」だという。そして、「さばく」とは
上司や顧客から降ってくる大量の仕事に忙殺されるあまり、目の前の課題に対して、その課題がそもそも何のために、どういう意味を持つ課題なのかをさておいて、「どうやるか」「いかにやるか」だけを考えるようになってしまっている……これこそが「さばく」ということそのものです。
という。
これまでの社会で高く評価されていた「優秀な社員」=「できる人」の特徴は
- 毎日遅くまで残業し、大量の仕事をこなしている
- 上司が期待する通りの結果を導き出そうとする
- 目の前の仕事で、人よりも高い実績を上げている
- 決断が速く、自分が決めた方向へと部下をぐいぐい引っ張っていける
- 会社から与えられた自部門の数値目標だけは達成しようという姿勢を示す
- 不具合やさまざまな問題が起こっても、とりあえず事を丸く収める調整能力がある
だという。
なるほど、異論を唱える人は少ないだろう。特に昭和な人は納得すると思う。
そして、この「できる人」が陥りやすい問題は
- 仕事をさばく
- 上司の的を当てに行く
- 先入観ですぐに答えを出す
- 自部門のみのエキスパート
- 波風を立てないことをなにより優先する
だという。いずれも、変われない組織が抱えている問題だ。
「できる人」が増えた組織は変化に弱いということは実感として感じる。その組織の中にいると、自分たちを取り巻く環境が変わったことは理解しているのだが変われない「茹でガエル」状態に陥っているのを実感する。
「できる人」は昨日までの仕事を効率よくこなすのが上手い人達だ。
そして、昨日と明日は連続していると思っている。連続しているという前提があるから効率が良いのだ。
ところが、今日不連続が発生したら、明日は昨日の連続ではなくなる。つまり前提が崩れるので明日の仕事ができなくなる。今時は、不連続の度合いが大きいから、効率が下がるのではなく全く仕事ができなくなる。
明日は昨日の連続ではなくなる可能性に、皆意識的に目をそむけているように感じる。
幹部に「できる人」が多い組織は特に問題が大きい。環境に対応できない組織になっているからだ。 そして、SHARPや東芝、三菱自動車のように頓死する危険性がある。これは他人事ではない。
昭和が終わって28年が経過した。未だ昭和の感覚では組織が正常に機能するはずもない。
唐突だが、日清戦争に日本が勝利したのは明治28年である。その28年前は江戸時代だ。 昭和の感覚で仕事をしている人を日清戦争当時に例えるなら、激動の東アジアにおいて世界の列強に屈しないために国を近代化していた時に、ちょんまげ、大小挿しで尊王だ攘夷だと言っているようなものだ。
ということは、現在昭和の価値観で働いている「できる人」はもう変われないのだろうか?
閑話休題
不連続な明日の方針を定めるには、問題解決のような具体論ではなく、 柴田昌治氏の言葉を借りれば、
- なぜやるのか
- 何のためにやるのか
- 価値は何か
という抽象論に一度立ち戻らなければならないのだろう。
波風を立てないことをなにより優先する「できる人」は多いのだけど、「できる人に」消されても、懲りずに波風を立ててようと思う。
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