マズローの欲求5段階説と倫理 <IT業界は衣食が足りていないのか>
サイバーセキュリティ分野で「倫理」を語る人は、してはいけないこと、つまり「法」しか語らない。 理由を考えていて、ふと、マズローの欲求5段階説で説明できるのではないかと、思いついた。 こんなことは、すでに誰かが考えているだろうと、ぐーぐる先生に尋ねてみたら、
ブラック企業をマズローの欲求5段階説で考えてみた 残業ゼロのIT企業AXIA社長ブログ 2017.5.25
がヒットした。「マズローの欲求5段階説と倫理」ではなく「マズローの欲求5段階説とブラック企業」の考察だ。
米村歩氏は
ブラック企業にありがちですが「お客様に貢献したいと思わないのか」「成長したいと思わないのか」というようなことをよく言ってきます。w
いや正論です。正論ですよ。正論だけどもこれじゃダメなんです。
だって低次の欲求が満たされていないから。
労働者としては低次の欲求が満たされていない状態でこんな正論を言われても「ふざけんなしね」としか思いませんよね。
そんなことよりもまず寝かせてくれ、健康的な生活を送らせてくれとしか思いません。当然です。
私自身もブラック企業時代には従業員にこういうこと言ってました。多分従業員からはふざけんなしねとしか思われてなかったと思います。当然ですね。
以上から、マズローの欲求5段階説で考えるとブラック企業は下記のように定義できそうです。
ブラック企業とは低次の欲求を満たしていないのに高次の欲求を満たそうとしてくる企業のこと
だと仰る。 なるほど、納得である。
ブラック企業を倫理に置き換えて考えてみる。
情報セキュリティ技術者倫理に則って行動するとか、技術者倫理と企業倫理との葛藤を解決するという要求はかなり高次な欲求だ。 少なくとも社会的欲求(帰属欲求)以上の欲求だろう。
マズローの欲求5段階説では、低次の欲求が満たされなければ高次の欲求は生じないとされている。
つまり、企業倫理に則った行動をしようとするなら、安全欲求を満足していなければ無理。さらに情報セキュリティ技術者倫理に則った行動をしようとすると、社会的欲求を満足していなければ無理ということだ。
米村歩氏が指摘するように、デジタル土方で働かされている人たちは、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求などの低次の欲求が満たされていないことが多い。その人たちに対して高次の欲求を満たそうとするのは、ブラックだ。
「サイバーセキュリティ人材育成」を語る人は、この業界で働く人の多くが低次の欲求が満たされていない事実を知っている。あるいは、語っている人自体が低次の欲求が満たされてないのかもしれない。
当然、低次の欲求が満たされてない人に、高次の倫理を話をしても通じないことも知っている。
その結果、「法に触れるようなことだけはしてくれるな!」になるのだろう。
衣食が足りていないならば、「渇しても当選の水を飲まず」と言わなければならない。
IT業界、サイバーセキュリティ業界はそれでよいのだろうか? この業界で働く人たちやこの業界を目指す若者たちに尊厳欲求や自己実現欲求レベルの話ができなくて良いのだろうか?
サイバーバブルに踊らされている場合ではないと思う。
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