相談対応 <真意を聴きだす>
現場からの問い合わせの電話が、隣の部署から転送されて来た。今の職場は、現場から遠く、現場のニーズを掴み難いので問い合わせの電話は現場のニーズを掴む良い機会だ。
ところが、その質問はざっくりしていて要領を得ない。質問する側も何が聞きたいか整理ができていないようだ。質問がボンヤリしているからドンピシャの担当部署が見つからなくて転送されて来たのだろう。
◯◯の知見はありますか?や
◯◯の問題を解決したことはありますか?
のように、本当に聞きたいことは何なのか真意を計りかねるような質問だ。
◯◯の問題を解決したことはありますか?
のような質問は厄介だ。
真意は「◯◯の問題を解決して欲しい」場合と、「解決できないと言って欲しい」場合がある。 前者は、遠回しに問題の解決を依頼している。ストレートには頼み難いのだろう。日本人的奥ゆかしさだ。 後者は、質問者がやりたくなくて上司などを説得する際の権威づけに使用したいのだ。はっきり言って勘弁して欲しい。
真意が分からなければ、聞き出せば良いのだが、真意を確認せず相手の問いに答えてしまうことがある。隣の部署も真意を聞き出せたらほとんど答えられるのだろうが、真意を確認せずに質問に忠実に答えようとするから、よその部署に回してしまうのだろう。典型的なタライ回しというやつだ。
やり取りを聞きながら、マネジャの視点で考えた
- 対応した者のコミュニケーション能力の問題
- 対応した者や職場の仕事に対する姿勢
- 相談に対する職場のスタンス
- 〇コミュニケーション能力の問題
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顧客の真の要望を聞き出したり理解するにはコミュニケーション能力が必要だ。
営業職は顧客の要望を聞き出すのが仕事だから、コミュニケーション能力がなければ仕事にならない。問題は技術職だ。
技術職が全員コミュニケーション能力が無いというわけではない。営業職と違うのは、コミュニケーション能力が足りなくても仕事ができるということだ。そして、技術力の向上を優先してしまい、コミュニケーション能力の獲得や向上は後回しになる。
-
技術職は相談に対して口頭試問のように質問されたことに素直かつ全力で答えてしまう人が多い。真意は別にあることに思いが及ばない人が多い。
-
マネジメントするようになると自分のコミュニケーション能力不足に気が付く。先天的にコミュニケーション能力が不足している場合には、工夫が必要だ。
- 〇仕事に対する姿勢
-
本来業務ではなく「しなればならない」とも「してはならない」とも明示されていないような仕事にを積極的に自分の仕事とするのか、それとも可能な限り避けるのか、
また、問い合わせた人のために最大の労力をかけるのか、最小の労力ですませるのかなど、どのような姿勢で仕事をしているのかで対応は大きく異なる。最小限の労力で済ませる人は、相談対応には向いていない。
他人の行動様式を変えるのは困難だから、相談対応担当にしないとか、自ら希望しないことが重要だと思う。相談した人が迷惑だから。 - 〇職場のスタンス
-
職場(所属)としての相談に対するスタンスを明確にする必要がある。
例えば顧客でない人からの相談や相談に答えることが成果でない場合は、相談に対応することはリソースのロスになるので対応しない方が良い。もっとも、礼を失さない最低限の配慮は必要だ。対応できる部署を紹介するなどは最低限の対応だろう。
逆に、相談相手が顧客であったり、相談に答えることが成果になるのであれば、十分な対応を行うのは当然だ。職場のスタンスが徹底されていないと人によって対応が異なる。相談した人は、前回は親切に対応してくれたのに、今回はタライ回しにされたなど戸惑うことになる。戸惑いは往々にして怒りに変わる。
職場(所属)として相談に対応するときに考えなければならないことは、
- 対応者のコミュニケーション能力
全員が対応する可能性があるならコミュニケーション能力を向上させる必要があるだろう。コミュニケーション能力がある者が相談者とのやり取りを行い、回答に必要な調査、回答案は全員が対応するという方法もある。
コミュニケーション能力を補う仕組みは重要である。緊急的にはコミュニケーション能力が足りない者に対応させないことが必要かもしれない。
- 対応の標準化
誰が対応しても過不足がない対応にするためには仕組みが必要だ。
チェックシートを利用する。マネジャが回答案をチェックする。データベースを作るなど、マネジャがメンバーに口頭で指示すれば良いものから、予算をとってシステムを導入するものまで方法はたくさんある。
具体的にどのような方法を選択するのかはマネジャが考えなければならない。
- 業務改善
相談を業務に活用するために相談内容や対応を関係部署に周知する。
簡単そうで意外と難しい。縦割りの壁や組織風土が妨げになる。指示されたこと以外の行動は減点対象になるという風土があると、参考情報を連絡するのも半端ない労力が必要だ。オヤジが好きなホウレンソウの「連」なのだが。
- 対応者のコミュニケーション能力
これまで相談に対応する側のだったので、対応の標準化はいろいろやった。データベースを作ってみたり、チェックする仕組みを作ってみたり。それに比べて、マネジャ観点のコミュニケーション能力向上と業務改善の観点が足りないことが分かった。
マネジャの観点としては、こと細かく口を出すとマイクロマネジメントになり、本質的な目的や成果が意識されなくなる。かと言って、ざっくり過ぎるとやはり本質的な目的や成果が意識されなくなるから難しい。
- 自分や部署の知見を誰かのために使うと、その連鎖が巡り巡って顧客に届く。
- 相談に対応すると新たな発見があり、それを蓄積すれば再利用できる。
行間や場の空気が読めない性格で、しかも話しながら考えることが苦手だ。相手の言葉は額面どおり受け取る(素直な^^)性格だから、相談者の真意を理解することが難しい。
それでも、仕組みを創ったり、あらかじめ対応を準備しておけば、それなりの対応ができるのではないかと思う。
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