ムダな仕事が多い職場 <生産性向上を考えてみた>
ムダな仕事が多い職場 太田肇 筑摩書房
日本の組織は生産性が低いといわれる。
組織は効率が悪くなる方向には簡単に動くが、効率が良くなる方向にはなかなか動かない。忙しい時に残業して仕事を終わらせると、忙しくない時にも残業するようになる。 業務量が増えたときに人を増やすと、業務量が減っても人は減らない。
組織の生産性は一定かもしれない。
生産性
生産性について考えてみた。
経済の世界では
付加価値労働生産性 = 付加価値 / 労働量
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
労働量 = 従業員数
らしい。ざっくりいうと利益を従業員数で割った値だ。
自分の職場の生産性を考えると、職場の付加価値額は分からないので、定性的に
生産性 = 総付加価値額 / 総労働時間
と考える。
労働集約型の職場は 総付加価値額は労働時間と従業員数に比例する。 つまり生産量を上げるには労働時間を増やす(残業する)か、人を増やせばよい。
労働集約型の業務はマニュアルやツールを使うことで、個人の能力の影響が少なくなる。 典型的な労働集約型の職業であるファーストフード店の従業員(バイト)は日本語が理解できる以上の能力を求められないから、労働力を安価に調達できる。(ちょっと乱暴ですが...)
一方、知識集約型の職場は 総付加価値額は労働時間にも従業員数にも比例しない。
できない時にはどんなに時間をかけてもできるようにならないし、人を増やしても無駄なことが多い。 個人の能力に依存する。
日本の社会は、明治時代も戦後の高度成長時代も付加価値額を増やすために労働時間を増やし労働人口を増やしてきた。
バブル期にこの成長モデルの行き詰まりは指摘されていたが、考え方を変えることができなかった。そしてバブルが弾けてもまだ考え方を変えることができない人は多い。 残念ながら、成長する方法として、長時間働く、人を増やすことしか思い付かないのである。
管理とマネジメント
知識集約型の業務は、価値を提供する方法が確立すると、分業やマニュアルを使って労働集約型の業務にできる。
労働集約型の業務は管理しやすいし管理方法も確立されている。マネジメントしなくても管理すれば良いので、マネジャーは少なく管理者は多い。一方、知識集約型の業務は管理しにくい、能力を発揮する方法を考えて、能力を発揮できるようにしなくてはならないので、管理者でなくマネジャーが必要だ。
困ることは、たいていの職場には労働集約型の部署と知識集約型の部署があって、知識集約型の業務を労働集約型のように管理しようとする管理職がいることだ。
生産性を向上するためには、付加価値額をそのままにして労働時間を短縮するか、付加価値額をそのままにして従業員数を減らさなければならない。
労働集約型の業務では総付加価値額は労働量に比例するから労働時間や従業員数を減らすと総付加価値額も減ってしまう。労働集約型の部署の管理職はそのことに気が付かないのだろう。
生産性向上
生産性を向上させるには、能力を向上させなくてはならない。労働集約型の業務では個人の知識・技能などの能力を向上させるコストは高い。さらに、コストをかけても能力が上がるかどうかは人次第だから、マニュアルを整備したり、業務を機械化・自動化したりする方がコストが低い。
労働集約型の業務はITと親和性が高いのでITを利用して従業員の能力を向上させることで、総付加価値額を減らすことなく労働時間を減らすことができる。 従業員数も減らすことができるが、従業員の労働時間は減らないため「働き方改革」の観点では問題がありそうだ。
知識集約型の業務は、総付加価値額と労働量は比例しないから、労働時間を減らすことができる。 しかし、現実は生産に寄与しない雑用などの時間が労働時間に含まれ、しかもこの時間は減らないので、労働時間が減ると雑用が増えたように感じる。
知識集約型の業務は、知識を活用して付加価値を生むための一見無駄な時間が必要だ。 労働時間を減らすとこの一見無駄な時間が無くなり付加価値が生まれにくくなる。そして総付加価値額が減ってしまう。
さらに、知識集約型の業務は労働集約型の業務のように定型的でないことが多く、現状ではITを利用した能力の向上は労働集約型の業務ほど有効ではない。しかし、今後AIの利用が一般的になることを考えると、AIやITを利用することにより従業員の能力を向上させることが可能になるだろう。
また、ITにより生産に寄与しない雑用を機械化・自動化することで、総付加価値額を減らすことなく労働時間をを減らすことができる。
生産性を向上させる方法
- 労働集約型の業務
ITを活用して業務の機械化、自動化する - 知識集約型の業務
- AI,ITを活用して業務の機械化、自動化する
- ITを活用して雑用を合理化する
う~ん。AIの導入とIT化かぁ... 情シス部門の生産性はどうやって向上すべきか...。
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