こころのマネジメント
こころのマネジメント 田坂広志 東洋経済新報社
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田坂広志氏は
「顧客の気持ちを読むためのノウハウとは何か?」を直接的に教えるのではなく、「こうした体験をつうじて、顧客の気持ちを読むためのノウハウを身につけることができた」という体験談をこそ語るべきなのです。
とおっしゃる。 腹に落ちる体験談を見出すことが必要だと。
労働集約型の仕事はマニュアルなどでハウツーを分かり易く伝えることができるし、効率が良い。 一方、知識集約型の仕事はハウツーではなくノウハウとノウハウを得る術が必要だ。
ノウハウを直接伝えるとハウツーになることは多い。重要なことはノウハウを得る方法だ。この方法が分かると教えてもらったノウハウ以外のノウハウを得ることができるようになる。
ところがノウハウを得る方法は伝えにくい。ほとんど暗黙知だと思う。教え方が上手な人は、暗黙知を形式知化しているのだろうか。
形式知化していない者は、田坂広志氏が言うように、伝えたい相手が暗黙知を汲み取ってくれることを期待して、経験談を語るしかない。
逆の立場では、先達のノウハウを聞いて喜んでいてはいけない。ハウツーが1つ増えるだけだ。ノウハウを得た経験談の「なんとなく感じた」や「ふと思った」を、何故そう感じたのか、何故そう思ったのかを考えるしかないのだろう。同じような体験をしている場合には、何故自分はノウハウを得ることができなかったのだろうと考えなければならない。
以前から若い人の教育や訓練に関わっている。いつ頃からか分かりやすいハウツーを欲しがる人が増えてきたと感じる。
アンケートに、現場ですぐに使える知識を教えて欲しいなどと書いてあると、教える側が受講生に阿ってハウツーてんこ盛りにしたりする。しかし、ICT業界にいるとハウツーの賞味期限は短いから、てんこ盛りのハウツーは結局消化しきれず、使われることもなく忘れ去られる。
教える相手のレベルが低い場合は、とりあえずハウツーを教えなければ仕事にならないという事情はある。また最低限必要な知識や経験が無い場合はノウハウを伝えられない。
関わっている教育や訓練は少なくとも初心者や入門者向けではない。以前はハウツーの先にある暗黙知を得ようとする人が少なからずいた。 暗黙知を得ようとする人が減ったのか、それとも暗黙知を得るために必要な知識や経験が足りないのか?
ひょっとして、彼らの仕事が知識集約型から労働集約型に変わっているのではないだろうか。
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