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2018年4月28日 (土)

〇〇の神様の仕事が無くなったら

 若い人は知らないだろうが、昔、通信士という職業があった。
今みたいに世界中どこでも携帯で話ができなかったから、離れた所にメッセージを送ろうとすると電波を使ってモールス信号で電報を送信したり受信したりしていた。(無線電信という)

 モールス信号の送受信は特殊技能だ。また、電波は貴重な資源だから扱うには専門知識が必要だ。無線の専門知識とモールス信号の送受信技能を持っていると認められた者が無線通信士で、国家試験を受けて無線従事者免許を取らなければならない。

 オヤジが三十数年前に就職した頃には無線電信の重要性は極めて低くなっていた。それでも職場にはまだモールスの神様と呼ばれている人がいた。しかし、通信手段は電話とFAXに変わっていたから、卓越した技能を使う仕事は無くなっていて、閑職に回されている神様がいた。

 一方で、無線の専門知識を生かして移動体無線や無線多重などの無線関係の仕事をしている人もいた。

 その頃はまだ、再教育するだけの時間的余裕もあったし、教育・訓練専門の部署で再教育を受けることができた。 閑職に回されていた人は再教育を受けなかったのだろう。

 特殊技能は技術の進歩の前にして、ある日突然価値の無い技能になったり、ある日突然専門知識が価値の無い知識になったりして、〇〇の神様と呼ばれていた人がある日突然普通の人以下になってしまう。

 技術を扱う仕事をしていると、そういう例を目の当たりにしてきた。

 今、特殊技能や専門知識をメシのタネにしている者にとっての脅威はAI技術だ。特殊技能や専門知識の価値が無くなる速度は30年前より速い。 遥かに速い。

 30年前と決定的に違っているのは、必要とされなくなった者の受け皿となる仕事は無くなっているということ。 閑職は無いし、専門的でない単純な仕事は真っ先に効率化されているかアウトソーシングされている。

 では、昔、電信技能の価値がなくなったときに無線の専門知識に価値を見出したように、別の特殊技能や専門知識を習得する方法はどうか?

 残念ながら、仕事が無くなってから、別の技能や知識を習得するのでは遅い。
特殊技能や専門知識の習得にどれだけの時間と労力が必要だったか思い出してみると良い。今時は人が技能や知識を習得する速度より、特殊技能や専門知識の価値が無くなる速度の方が速いのだ。

 特殊技能や専門知識の価値がなくなる前に別の特殊技能や専門知識の習得を始めておかなければならない。 因みに、マネジメントも技能と知識が必要だから、技術で食えなくなって始めたのでは遅い。技術屋崩れが使えないのはこのことに気が付いていないからだろう。

 困るのは、AIで業務を効率化して、浮いた人員を配置換えして別の仕事をさせようと考える管理者だ。今時、再教育していたのでは間に合わないことを、多くの管理者は気が付いていないようだ。

 AIで業務を効率化するのは良いが、簡単にクビが切れない職場では、食えなくなった者の仕事を考えておかなければならない。

 さもなければ、仕事のない神様だらけになってしまう。


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