失敗の科学 改善すべきは、人間の心理を考慮しないシステム
失敗の科学 マシュー・サイド ディスカヴァー・トゥエンティワン
航空機業界も医療業界も人命にかかわる仕事だ。失敗の捉え方失敗を繰り返さない仕組みについて2つの業界を比較している。
最も大きな相違点は、失敗後の対応の違いにある。医療業界には「言い逃れ」の文化が根付いている。ミスは「偶発的な事故」「不測の事態」と捉えられ、医師は「最善を尽くしました」と一言言っておしまいだ。 しかし航空業界の対応は劇的に異なる。失敗と誠実に向き合い、そこから学ぶことこそが業界の文化なのだ。彼らは、失敗を「データの山」ととらえる。
らしい。
どちらの業界も歴史は長いから失敗例は数多くある。大きな違いは失敗した者の命だろう。 航空業界では、失敗は操縦士などのコックピット・クルーの命に係わる。墜落や、空中衝突のような重大インシデントが発生すると彼らは命を失う可能性は高い。 しかも、乗客や住民など大量の命が失われる可能性がある。
一方、医療業界では失敗で医療従事者が命を失う可能性は低い。 命を失うのは患者で、一度の失敗で大量に命が失われる可能性は低い。
この差が、失敗を減らすためのモチベーションの差ではないだろうか。
失敗を組織的に扱うとき
問題は当事者の熱意やモチベーションにはない。改善すべきは、人間の心理を考慮しないシステムの方なのだ。
は重要だ。
ところが、失敗に向き合わない人や組織は、問題の解決を安易に当事者に求める。そして、たいていその手法は「気合と根性」だ。問題の真の原因を追究せず、フェールセーフ、プールプルーフも考慮しない。
事故防止やヒューマン・エラー減少の具体的な考え方は航空業界から学ぶことが多い。
ネットから比較的容易に知識を得ることができるし、書籍で体系的に学ぶこともできる。
ところが、
具体的な行動を考えるとなかなか難しい。知識を得るの作業は自分だけで良いが、実際に対策しようとすると、他人に行動を求めなければならないから、 事故防止に対するモチベーションの差が如実に表れる。
失敗が原因で事故が発生したとき、自分自身に重大な影響が及ぶ人はモチベーションが高いが、失敗が原因で事故が発生しても影響が及ばなければ、積極的に事故防止の行動をするモチベーションは生まれない。 人はそういうものだろう。
この構図は航空業界と医療業界の例に似ている。 人の生命を扱うための高い倫理観を持っている医師でさえそうなのだから。
事故防止は、
- 人の心理を当てにしないシステム
- 事故を防止しようとするモチベーション
が重要ということだろう。
厄介なのは後者だと考えて啓蒙活動を始めた。
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