管理部門はなぜ現場のサポートができないのか
現場のマネジャが集まる会合に出席したらミスのチェックの話になった。
現場のマネジャが技術レポートをどうやってチェックするかという問題だ。
たいてい技術レポートを書く人の方がマネジャより詳しい。 たたき上げのマネジャなら技術レポートを書いたことがあるからハマりどころも分かっていてチェックできるだろう。 しかし、技術レポートを書いたことがないマネジャが多い(ほとんど)から、読んだだけでは理解できないレポートをチェックしなければならない。
しかも、その技術レポートはクオリティが必要だから、間違いの指摘があったら直そうという気楽なレポートではない。
管理部門の人は演習を用意していて、ミスの多い架空の技術レポートを配って参加者にミスを見つけろとおっしゃるのでやってみた。
そのような技術レポートを書いたこともあるし、チェックしたこともあるので、ミスは簡単に見つけられるだろうと思ったら全て見つけられなかった。 orz
管理部門の人がミスの解説してくれるのだが、「正直全部見つけるのは無理!!」と思った。
技術レポートを書いたことも、チェックしたことがあっても全部見つけるのは無理と思ったくらいだから、書いたことがない人はかなり難しいと思う。
そして、管理部門の人は理不尽にもおっしゃる
- ミスを見つけられない場合の影響は大きい
- ちゃんと見ればわかる
- 自分も見つけられたから見つけられるはずだ
- ミスを見つけられなくては困る
- 最近の若者はミスが多い
最後にマイクが回って来た。
最近考えている、ヒューマン・エラーのことを話そうと思っていたのだが、あまりに理不尽なので、
- 何かにつけて若者の気質を原因にしてはいけない
- 気合と根性やべき論ではミスは減らない
- チェックする人もミスする
- 我々はミスを減らす具体的方法を知らない
- 現場からミスを減らす風土が無くなりつつある
など発言した。 すっかり管理部門の人に対する反論になってしまった。
会合が終わってから考えた。
ミスの原因などの解説を聞くと理解はできる。 しかし、理解したところでミスを減らす行動ができるわけではない。 ミスの原因が分かるのは後知恵だからだ。
簡単に言うと、管理部門の人は「発生したミスの指摘はするがミスを減らすサポート」をしていないということだ。
残念ながら、自分にも思い当たる節がある。
サポート部門にいたときは、ミスを減らすサポートについてあまり気にしていなかった。
管理部門の人たちに対して感じた理不尽さは、自分に対する指摘でもあることに気が付いた。
なぜミスを減らすサポートができないのか考えた。
技術レポートのチェックは暗黙知の部分が多く、「チェック方法を具体的に教えてくれ」と問われると困ってしまう。
一部は形式知になっているものの、その形式知の妥当性を評価していないないし、体系化していない。 経験がない人にそのような不十分な形式知を伝えるとチェック漏れが増えそうだ、と思ってしまう。
つまり、管理部門もサポート部門ももちろん経営層もミスを減らす方法を知らないのだ。
厄介なのは、ミスを減らす具体的な方法はもちろん、具体的な方法を見つける術も知らないことだ。
だから、方法論は指示できないが、顕在化した問題は明らかになっているから、「ミスを無くせ」のような気合と根性の指示になってしまう。
ミスが顕在化するのは現場だから、現場での活動は重要だ。 しかし、管理部門もサポート部門もミスを減らすためにすべきことはたくさんある。
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サポート部門にいるときには気づかなかったが離れてようやく気づいた。
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