「AIで仕事がなくなる」論のウソ この先15年の現実的な雇用シフト
「AIで仕事がなくなる」論のウソ この先15年の現実的な雇用シフト 海老原嗣生 イースト・プレス
「AIが仕事を奪う」はウソかもしれない (2018/07/23)で釣られたかもしれないと書いた。 釣られたついでに海老原嗣生氏の本を読んでみた。
海老原嗣生氏は、 オックスフォード大学や野村総研のレポートは、AI技術面しか考慮されていない。 今後仕事が無くなるかどうかは、雇用の情勢を考慮しなければならないとおっしゃる。
海老原嗣生氏の見立ては、
これから先の雇用を考えると、AI技術の普及より、少子化による労働人口の減少のほうが、影響は大きい。 労働人口が減少する分をAI技術の普及により相殺できるので、仕事が無くなって路頭に迷うことはない。
日本は欧米ほどITによる合理化が進んでいないので、まずIT化により定型的な業務が自動化され、事務職の労働人口が減る。 その後で、AI技術の普及により、簡単な判断はAIが行い、簡単な作業はパソコンとロボットが行うようになる。 しかし、事務職の業務で、人の判断が必要な業務と、ITで自動化するための手作業(機械に使われる仕事)が残るので仕事がすべてなくなるわけではない。
ということらしい。
人間は高度な判断が必要な業務、人の感情を扱う業務、創造的な業務、人間でなければできない仕事と、逆に、ITやAI、ロボットを効率的に稼働させるための単純作業に二極化するから、AIに取って代わられないスキルを獲得しなければならない。 これは多くの識者が指摘するところだ。
ところが、海老原嗣生氏は、特別なスキルを持たない者でもAI技術を使うことで、高度なスキルを持った者と同じような仕事ができる。 そして、特別なスキルが無くてもできる、AIを使う(使われる)仕事は、労働人口の減少により賃金は高くなるとおっしゃる。
つまり、AIが普及すると、特別なスキルが無くても高賃金の仕事があるのだと。
この予想が、「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」での新井紀子氏の主張と異なるところだ。
新井紀子氏はの予想は、AIで削減したコストは特定の企業に集中する。企業はコスト削減を迫られるから利潤率は低下し、労働者の賃金も低下する。 その結果、消費が減りAIで置き換えられない職業まで無くなる。
海老原嗣生氏は、AIを使用することで素人だらけの店が銀座の名店並みの「うまさ」を誇るようになるとおっしゃる。 たしかに、そのとおりかもしれない。しかし、例えば回転寿司がAIを導入して銀座の名店並みのうまい店になっても、客単価が上がるとは思えない。 競合する他店より客単価は上がるだろうが、銀座の名店並みににはならないだろう。 やはり回転寿司の相場というものがある。
とすれば、スキルもなくAIを使う(使われる)だけの仕事が高賃金になるというのはにわかには信じられない。
AIが普及して仕事が無くなっても、AIを使う(使われる)仕事が残るため、路頭に迷うことはないという海老原嗣生氏の見立ては正しいのかもしれない。
ただし、それは短期的でしかも業種によって事情は異なる。 AIを使う(使われる)仕事がいつまで残るかはAIの技術的な進歩だけでなく、産業構造の変化にも左右される。
長期的には、AIを使う(使われる)仕事の存在を前提にした人生設計はリスクが大きいと思う。
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