資生堂で学んだまごころ仕事術 <キャリアパスとロールモデル>
資生堂で学んだ まごころ仕事術 関根近子 朝日新聞社
資生堂初の女性執行役員を務められた関根近子氏の講演を聴いたので、著書を読んでみた。
公演の演題は、セクハラ、ワークライフバランス、女性活用という今時のテーマだったが、この本には、今時の話題はなく、関根近子が自身のキャリアから得た仕事や人生に向かう姿勢が書いてある。
ネットには関根近子氏インタビュー記事や公演を聞いた人のブログなどがたくさんある。 関根近子氏のプロフィールを見ると、「高卒」「美容部員」「女性初」というキーワードが必ず入っているようだ。
資生堂は女性社員が80%だが昔の男社会だったらしい。 美容部員は資生堂の企業理念を顧客に提供する上で欠くことのできない存在でありながら、少数の高学歴の男性によって経営されていたらしい。
つまり、関根近子氏のキャリアは傍流でしかもポジション的にも稀な存在なのだろう。 もっとも、傍流で稀なキャリアでなければ、あえて紹介したりしないだろう。
疑問は、
傍流で稀なキャリアを登っている人や、登りつめて成功した人は、ロールモデルになるのであろうか?
とういことだ。
支店長に抜擢された人なら、関根近子氏はロールモデルになるかもしれないが、これからキャリアを始めようとしている高卒美容部員がロールモデルにするには遠すぎると思う。
本流のキャリア・パスならば、そのキャリアを登っている人が多いから、ロールモデルを見るけることができるだろう。しかも、高いところまで登ってもなおロールモデルにできる人がいるだろう。 しかし、傍流のキャリア・パスは登っている人の数が少ないから、ロールモデルが見つからない。
問題なのは、企業の価値を支えている大多数の人のキャリア・パスは傍流であることだろう。 しかも、この問題は、いたるところにあるのではないだろうか。
「美容部員」を「技術者」に変えれば身近にもある。 違うのは、関根近子氏のように傍流のキャリア・パスを高くまで登りつめた人はいないということ。
人材育成においてロールモデルは重要だが、キャリア・パスが考えられていないためにロールモデルが簡単に見つからないことがある。
誰かのロールモデルになることは人生の目的ではない。 せめて選択できるくらいのキャリア・パスが必要だと思う。
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資生堂や関根近子氏に恨みはないし、否定しているわけでない。念のため。
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