孫子&クラウゼビッツ <消化不良だ>
新訳 孫子 「闘いの覚悟」を決めたとき読む最初の古典 兵頭二十八 PHP文庫
隣の隣国をどう切り伏せるか 超訳クラウゼビッツ『戦争論』 兵頭二十八 PHP文庫
戦略とは戦いを略すこと、つまり戦わずして目的を達成することと言われる。
古代中国や第一次世界大戦までのヨーロッパでは兵卒は農奴だから、死ぬまで戦う決戦を遂行するのは難しい。
兵卒は、恩も義理も無い領主に脅されて戦場に連れて行かれているわけだから、最大の目的は生きて帰ることだ。 だから、戦闘に勝利しなくても、いかに被害を少なくして有利な状況で停戦するかが重要だ。 戦争に勝っても戦利がなければその戦争は失敗だ。
フランス革命前の軍隊は貴族+傭兵+農奴であったが、革命後のフランスは民主主義共和国になったことから徴兵制が可能になり大軍が編成できるようになった。 クラウゼビッツはプロイセンがナポレオンに負けた原因は徴兵制だと考えていたようだ。
そう考えると、かつて日本がロシアに勝った理由が理解できる。
クラウゼヴィッツは
「軍」司令官は、所与の兵数の「軍」で敵「軍」と雌雄を決せねばならない。その際、もしわが「軍」の兵力量が敵「軍」よりも若干少ないという場合には、頼りになるのは、麾下将兵の「士気」、すなわち敵よりもまさった精神力しかない。
さらに、もしもわが「軍」が敵「軍」に比べて、兵力において半分、もしくはそれ以下しかないという場合には、部下の最高度の精神力に加えて、よほどの「奇策」をあえて採用しなければならぬが、それでも勝てるかどうかは、常識的に、危ぶまれる。
という。 兵力に劣る日本軍はこれを実践したわけだ。
日本は明治以降の教育の普及と徴兵制が功を奏し兵卒の精神力が強かった。 日露戦争でロシアに勝ったが賠償金も取れず領土も拡大してないので大成功というわけではない。 しかし、ロシアの南下を食い止めるという目的は達成したので、勝利と言えるだろう。
歴史の授業ではこのあたりのことを教えてくれない。 単に年表を追うだけだ。
クラウゼヴィッツが言うように、戦争は政治の部分集合だとすると、明治の政治家も軍人はそれを理解していたのだろう。 しかし昭和の政治家と軍人はそれを理解していなかったということだろうか。
孫子はビジネス戦略に参考になるというが、正直ピンとこない。
孫子もクラウゼヴィッツも、兵を率いる上で根底にあるのは、戦う意思の無い兵士にいかに生死をかけた決戦をさせるかである。 戦術、戦闘において、これは極めて難しいから、なるべく戦わない、なるべく消耗を避けるという戦略を取らざるをえない。 だから、戦略は戦いを略すことだ。
先の戦争において日本人は、特攻を命じられると、逃げ出すわけでもなく反乱するわけでもなく、空気の力によって従ってしまった。 これは日本人の性質なのだろうか、それとも、戦争を指揮した者が孫子やクラウゼビッツが言う「生死を掛けた決戦を」させることに成功した例なのかは分からない。
不幸にも、日本は先の戦争で国民に「生死をかけた決戦」を強いることを知ってしまった。 現在も、この考え方が根底にあるから、高度成長期は「企業戦士」、最近は「社畜」が無くならない。 そしてブラック企業で人が死ぬ。
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ちょっと消化不良っぽいなぁ。
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