フォト
無料ブログはココログ

MyList

« 企業守る「ホワイトハッカー」を官民で奪い合う愚 <雑な記事に反応してしまった> | トップページ | 現場力がみるみる上がる 実践なぜなぜ分析 <ミスをチェックできたのは誰か> »

2018年10月23日 (火)

ヤマト不正請求報告書 <根本的な原因は何か?>

 ヤマトホームコンビニエンス(YHC)が法人向け引っ越しサービスで過大な請求をしていたらしい。

 以前読んだ「クロネコヤマト 人の育て方」や「小倉昌男 経営学」が素晴らしかったので、この件の調査報告書を読んでみた。

 報告書はYHCのサイトにある。

 この件ついては、「会社ぐるみ」とか「倫理の欠如」などメディアから叩かれている。

 20万人をこえる社員がいる大企業だけに不祥事を皆無にすることはできないだろう。 しかし、不祥事の原因が組織ぐるみであったり、社員のモラルが低下に依るものであれば会社の根幹を揺るがす大きな問題だ。

クロネコヤマト 人の育て方」 には、

社訓(判断の基準)

  1. 「ヤマトは我なり」(全員経営)
  2. 運送行為は委託者の意思の延長と知るべし(サービスが先、利益は後)
  3. 思想を堅実に礼節を重んずべし(方と倫理の重視)

とある。 いずれも小倉昌男氏による経営理念だ。(ヤマトHDの社訓は、http://www.yamato-hd.co.jp/company/precepts.htmlにある。)

 今回の不祥事は、2項、3項に反する行為だ。 1項の全員経営が浸透しているとすると、社員全員で不祥事を隠蔽する体質があるということになる。
その意味で会社の存続にかかる問題だろう。

 報告書を読むと、内部通報などで不正請求が行われていた事実が複数件明るみに出ていたことが記載されている。 これが、組織ぐるみと指摘される所以だ。

 ネットには、問題を現場に丸投げしていると指摘する記事を見かける。

クロネコヤマト 人の育て方」によると、

ヤマト運輸では2013年4月に、約300人いた本社の社員を、ほぼ全部署を対象として大幅に減らしました。多数の本社メンバーが現場配属として移動したのです

らしい。 また、

理念が顔を作る -ヤマトにみる文化の継承 (ヤマト運輸株式会社 人材開発本部 教育部長 芝健一)

には、

ヤマトの本社部門の人数は約200人ときわめて少ない。教育や研修は本社の教育部が担当しているが、4万人近いSDの教育を教育部のスタッフだけで行うことは困難である。そこで、本社の教育部が関与するのは会社としての方針を策定し周知徹底させるまでにとどめ、実際の教育は基本的に現場に任せている。

とある。

 小さい本社と現場に丸投げは裏表の関係だ。 本社が現場を管理するのではなく、全社員が社訓を基にした価値基準で動く組織を目指しているのは批判されることではない。 ところが、不祥事が起こると丸投げと批判される。 批判する者は結果しか見ないから。

###

 以前読んだ「クロネコヤマト 人の育て方」や「小倉昌男 経営学」が素晴らしかったので、考えてみた。

 現場の労働環境が悪化して、マズロー先生のいう安全欲求が脅かされると、企業理念どころではなくなる。

 企業理念を体現することは、承認欲求やその上位の自己実現欲求だ。 上位の欲求は下位の欲求が満たされてから現れるとされているから、安全欲求が満たされない状況では、上位の承認欲求や自己実現欲求は現れない。

 つまり、企業理念「ヤマトは我なり」を体現できないほど労働環境が悪化している可能性がある。

 もちろん、人材育成に失敗し、現場だけでなく管理職も企業理念が形骸化している可能性もある。

 報告書では、管理職は不正を指示したか、不正を認識しながら是正措置を取らなかったことが指摘されている。 現場が大きいだけに、本社や社長が対策したら効果覿面に改善されるというものではないだろう。

 不祥事の原因が、現場の安全欲求が満たされていないことか、企業理念が形骸化していることか、今後明らかになるだろう。

 ヤマトが実現しようとしている、本社が現場管理するのではなく、全社員が社訓を基にした価値基準で動く組織は理想のように見える。

 個人的な希望としては、理想に向けて回復してほしい。

 今後、注目しておこうと思う。



最近の投稿】【2017の投稿】【2016の投稿】【2015の投稿

« 企業守る「ホワイトハッカー」を官民で奪い合う愚 <雑な記事に反応してしまった> | トップページ | 現場力がみるみる上がる 実践なぜなぜ分析 <ミスをチェックできたのは誰か> »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ヤマト不正請求報告書 <根本的な原因は何か?>:

« 企業守る「ホワイトハッカー」を官民で奪い合う愚 <雑な記事に反応してしまった> | トップページ | 現場力がみるみる上がる 実践なぜなぜ分析 <ミスをチェックできたのは誰か> »