「人間力」を磨いてきた人を処遇できるのか
本書を広く薦めることで、自らクビを絞めることになる!? (2018/11/03)
私は本書で示されている「人間力」を持つ若者が多く市役所に入職してくれたのなら、とても心強いと感じます。
でも、そんな若者を今の多くの市役所は採用時に正しく評価できるでしょうか。
そんな若者に対して、今の多くの市役所は、彼らにとって価値ある経験を提供できるでしょうか。
本書で掲げる「人間力」を磨いた学生を、正確に評価し、(お金や身分保障ではなく成長の機会など)相応の対価を用意できる自治体が生駒市以外にどのくらい多くあるのか、私のような現役の公務員でも正直約束するのが難しいと感じています。
このブログを書いておられる島田正樹氏はさいたま市役所職員として勤務される傍ら、NPO2枚目の名刺で活動したり、公務員キャリアデザインスタジオなどを主宰しておられる。
この本とは「公務員面接を勝ち抜く力 小紫雅史 (2018/11/12)」のことだ。
役所という枠にとらわれない活動をしておられる、島田正樹氏にして冒頭の感想である。
真面目に考えるからこその感想かもしれない。
島田正樹氏の懸念は2点
- 「人間力」を磨いた学生を、正確に評価できるか
- 「人間力」を磨いた人材を、に相応の対価を用意できるか
だ。
「人間力」を磨いた人材に対して採用時の人物の評価や採用後の仕事の評価を行うときに、古い時代の価値は使えないから、「価値があること」を再定義して、それを組織の中に浸透させなくてはならないだろう。
つまり、組織の風土改革が必要だということだ。 風土改革は一朝一夕にできるわけではないから、「人間力」を磨いた人材が直ちに活躍できない。 これが島田正樹氏の懸念だろう。
おそらく小紫雅史氏もその懸念は分かっておられるのではないだろか。 20年、30年間組織が求めるように働いてきた人の働き方は短期間では変わらない。
しかし、今後環境の変化は外圧として作用するので一から風土を変えるより早く変わるのではないだろうか。 そのときに重要なのは現場を変える若い人達の力だ。
古い価値観の幹部はトップダウンで対応できる。 しかし、トップダウンは往々にして現場まで届かない。 だからこそ、現場に「人間力」を磨いた人材が必要なのだろう。
小紫雅史氏の著書(「公務員面接を勝ち抜く力」)は、「公務員に安定を求める人は応募しないでほしい」とも読める。
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御多分に漏れずウチでも優秀な人材が欲しいという要望はよく聞く。
しかし、「優秀な人材」の定義は昔のままで、外見のスペック重視だ。 「人間力」を磨いた人材がいたとしても、その人は「優秀な人材」ではない。
「優秀な人材」が採れたとして、彼らをどのように育成するか。 どのようなキャリアパスを提示し、どのような成長機会を与えるかについては議論は少ない。
50年以上前の価値観に縛られた錆び付いたキャリアパスとお仕着せのやりがいを与えようとする。 若い人達は、とても10年先に成長した自分の姿は想像できないだろう。 特に「人間力」を磨いた人には。
よく考えてみると、はるか昔の価値観を評価もせず受け継いで、価値観を変えなかったのは我々の世代だ。
だから、安定しているからという理由でこの職場を選んだ人が入ってくる。
そして、年寄りは自分の価値観が正しいと安心するのだ。
偶然「人間力」を磨いた人が入ってきても、寄ってたかってスポイルしてしまう。
そして、年寄りは自分の価値観が正しいと安心するのだ。
社会が安定している時代に安定を求めることは悪いことではない。しかし、社会が変わろうとしているときには、変化に対応して挑戦することが求められる。
年寄りは古い価値観を持っていても生駒市のように変化を求められないだろう。 しかし、変われないとしても、せめて多様な価値観を許容することが必要ではないか。
価値観を変えなくてよい。 安定か挑戦かの2択でなく、自分とは異なる価値観を認めることから始めればよい。
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