タニタの働き方革命 <残業削減の先>
タニタの働き方革命 谷田千里+株式会社タニタ 日本経済新聞出版社
体脂肪計で有名なタニタの社長、谷田千里氏の新しい働き方の提案。
常々、働き方改革=残業削減の議論しかないことに疑問を感じていた。また、経営側の意見が少ないのも気になっていたので、この本を読んでみた。
谷田千里氏は、今流行りの「働き方改革」について、
これまで「働き方改革」の名の下に議論されてきたのは、残業削減や有給休暇取得の義務化、テレワークの推進など「働きやすい」環境づくりが主だったのではないでしょうか。できれば「働き甲斐」やその方向からの「生産性」についてもっと突っ込んだ議論が欲しかったと思いますが、それらは置き去りにされてしまった感があります。
とおっしゃる。
政府が「働き甲斐」まで踏み込んだ政策を掲げるとアヤシくなるので、規制強化などの環境整備になるのはある意味しかたないところがある。
タニタの制度は、すごくざっくり言うと「個人事業主」化を会社が支援する制度。
日経ビジネスのインタビュー記事『タニタ社長「社員の個人事業主化が本当の働き方改革だ」 日経ビジネス (2019/7/18)』に、この制度の概要がある。
弁護士ドットコムには『タニタの働き方改革「社員の個人事業主化」を労働弁護士が批判「古典的な脱法手法」』という記事がある。
この本のあとがきにもあるように、この制度がベストではないかもしれないし、今後環境の変化に応じて変わっていくのだろうと思う。
この制度を利用している人は、3年で27人らしい。 タニタの会社概要を見ると従業員数は1200人なので、この制度を活用している社員は約2%だ。まだまだ、昭和の価値観で働いている人は多いだろう。今後世代交代が進むとこの制度を活用する人も増えるのではないだろうか。
この制度は、社長の社員に対する「働き方は横並びでなくてよい」という本気のメッセージだろう。
この制度を利用する人は、タニタでなくても稼げるだけの能力を持っている人だと思う。だから、この制度は人材流出を加速させると考えるのは自然だ。
この意見に対して谷田千里氏は
人材流出を本気で心配するのなら、弊社がやるべきことは、「囲い込み」ではないと思っています。他社からも欲しがられる優秀な人材に、「やっぱりタニタで働くと楽しい。やり甲斐があるから、一緒に仕事をしたい」と思ってもらえること。そのためにチャレンジングなプロジェクトを生み出し、継続していくことの方が大事だと思っています。
とおっしゃる。理想的だ。
研修や訓練に関わっていると、高いスキルを身につけたら、転職する人が増えて人材が流出するのではないかと心配する幹部の意見を耳にすることがある。「そんなのとより、処遇を改善しろよ!」「環境を改善しろよ」思ってしまうのだが...
この制度を利用すれば、能力を持った人はフリーランスになったり転職しやすくるのは事実だ。人材流出を防ぐために、人事を年功序列にしたり、能力の有無によらず報酬を横並びにしたのは、昭和の働かせ方だ。
この制度を運用するなら、能力が高いが働きたくなるような職場環境を作ることが不可欠だろう。報酬よりも能力を活かせる仕事がない方が辛いと感じる者はいる。
この挑戦的な制度の行方に注目しておこう。
- 無駄な仕事が多い職場 <生産性を考えてみた> (2018/01/11)
- 働き方改革(4) <時短勤務> (2018/02/04)
- 働き方改革(3) <残業禁止> (2018/01/07)
- 働き方改革(2) <成果を定義する> (2017/11/20)
- 働き方改革 <働かされ改革ではない> (2017/10/26)
- ワークライフバランス <仕事のやり方を変える> (2017/01/30)
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