転勤廃止 <感情論ではなく考えてみる>
AIGで話題 「転勤廃止」企業に勤める意外な“落とし穴”とは? ITmedia ビジネスオンライン (2019/08/01)
AIG損保は希望しない転勤を廃止するそうだ。WLBに配慮すると強制的な転勤は見直す必要がある。強制的な転勤を経験した人は、つい感情的なる。冷静に考えてみると、闇雲に廃止すればよいわけではなさそうだ。ピーターの法則から考えてみた。
〇結論
- 終身雇用制、年功序列制の組織がWLBに配慮して強制転勤を止めたら生産性は低下する。
- 転勤の金銭的なロスは、終身雇用制、年功序列制が継続すれば補填できる。
- 若い人は、成長機会が得られる職場に転勤すること。
ライターの加谷珪一氏は
極論すれば、日本で強制的な転勤が受忍されてきたのは、全て終身雇用制度を維持するためだったといっても過言ではない。
と指摘される。なるほど。
終身雇用制度の職場では若い間は給料以上に働き、歳をとると働き以上の給料をもらうことで生涯の収支が合うようになっている。
給料以上の働きには転勤に伴う出費も含まれているし、単身赴任で家族と離れて暮らすことも含まれる。転勤が多い人が出世する職場だ。
業務面では、異動先の環境に慣れるとか、業務の引継ぎ、カウンターパートとの人間関係の再構築、などの業務上のロスは多い。
それでも、強制的な転勤が無くならない理由を考えると、
階層型組織では、ピーターの法則どおり各階層は無能レベルに達した者で埋め尽くされる。当然、生産性は低いし、環境の変化に対応することも難しいが、無能レベルに到達していない者が少数いて、ピーターの第3法則どおり多くの業務は彼らが遂行している。
そして、彼らが業務を遂行しやすくする方法として転勤は有効だ。
年功序列制の組織では年長者を追い抜くことは容易ではないが、転勤を利用して、無能レベルに達していない者が無能レベルに達した者を追い抜くことができる。また、無能レベルに達した者を「強制上座送り」にすることで、無能レベルに達していない者に活躍の場を与えることができる。
無能レベルに達していない者に仕事をしてもらわなければ、無能レベルに達した年寄りは若いときに給料以上働いた分を回収できなくなるので、大部分の年寄りは終身雇用制度が無くなっては困る。
だから、ピーターの法則に縛られている組織では、強制的な転勤はなくならないだろう。
一方、ピーターの法則に縛られない組織は、強制的な転勤制度はロスが多くメリットが少ないので、廃止できるのだろう。
〇転勤させる側の観点では
昔は昇任と転勤はセットで、転勤を希望しないとは言いにくい風潮があったが、最近は大ぴらに言えるようになった。問題は、無能レベルに達していない者が転勤を希望しないと言ったときにどうするかだ。
彼らが大半の業務を遂行しているから、それでなくても低い生産性が更に低くなる。
〇転勤させられる側の観点では
若い頃に給料以上に働いて、今は残念ながら無能レベルに達してしまってしまった人は、無理して有能感を出さずに転勤のロスを減らして、若い頃のマイナス分を回収するのが得策だろう。
リスクは、歳をとってから、終身雇用制度がなくなることだ。何しろ無能レベルに達しているので、能力どおりの給料しか貰えなくなると生涯賃金の収支がマイナスになる。
このリスクは、終身雇用制度と年功序列制がこの先も続くと思っている若い人も抱えている。しかも、若いほどリスクは大きい。
終身雇用制度と年功序列制が長くは続かないだろうと考えている若い人は、若い間に給料以上に働いた分は将来回収できなくなると思っているだろう。
このように考える若い人のリスクは、理不尽な転勤による金銭的なロスや成長機会のロスだ。
〇転勤はロスだけか?
転勤は金銭的にロスになる可能性が高いが、転勤先によっては成長機会を得ることができる。
例えば、地方で勤務していて、都会で働いてみたいと思っている人は都会に転勤するのも良いだろう。
地方で退職して、都会に再就職するのは大変だから、転勤を利用して都会を経験してみるのも良いだろう。地方と都会の良いところ悪いところが分かる。
転勤に成長機会を求めるなら、転勤先を選ぶことが重要だ。都会に転勤したは良いが、成長どころかすり減ったり、燃え尽きたりする人はいる。しかし、経験では、転勤ほど思い通りにならないものはない。
そのためは、押してくれる人と、引いてくれる人を探すと良い。無能レベルに達した年寄りでも人的ネットワークは持っているものだ。
〇結論
- 終身雇用制、年功序列制の組織がWLBに配慮して強制転勤を止めたら生産性は低下する。
- 転勤の金銭的なロスは、終身雇用制、年功序列制が継続すれば補填できる。
- 若い人は、成長機会が得られる職場に転勤すること。
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