囲碁とAI (2) <何冊か本を読んでみた>
囲碁や将棋の政界ではAIを活用したソフトが人間より強くなってきて、AIが人間を超えた!のようなニュースも目にすることが多くなってきた。
昔から将棋ソフト、囲碁ソフトに興味があったのでこの分野に注目していた。将棋ソフトは着実に、囲碁ソフトはあっという間にプロ棋士に勝つまで強くなってしまった。
一方で、囲碁・将棋以外では将来AIに仕事を奪われるのような議論が多くなってきた。囲碁の世界では「AIに仕事を奪われる」が現実になってきているわけだ。そこで、プロ棋士の対応や何を考えているのかを知れば、将来AIに仕事を奪われない方法がわかるのではないだろうか。
知り合いにプロ棋士はいないので、手始めに本を読んでみた。
まずはAIの研究者の観点。 著者の斉藤康己氏は長くAIを研究されている方。
アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか 斉藤康己 KKベストセラーズ
AlphaGoはGoogleが買収したDeepMind社が開発した囲碁ソフトで、トッププロのイ・セドル九段との5番勝負で4勝1負と圧勝したことで有名だ。
斉藤康己はAlpherGoがイ・セドル九段に圧勝した理由は
- 深層畳み込みニューラルネットとモンテカルロ木探索の組み合わせ。
- 圧倒的なマシンパワー。
- 二つのニューラルネットの精度の良さ。
で、唯一勝利した4試合目での一手について、
イ・セドル九段の一手(白78の割り込み)を「神の一手」と評するものも現れたほどでした。囲碁プログラムの専門家の目には、後ほど説明する「モンテカルロ木探索」という手法の、悪いところが露呈した対局に見えました。
と分析されている。水平線効果と言うらしい。
次にプロ棋士の観点。
囲碁AI新時代 王銘琬 マイナビ出版
この本は、囲碁ソフトと人間との棋譜の解説が多いので、碁を打つ人向け。
著者の王銘琬九段は
人間がコンピュータから着手のヒントを得たとしても、伸びる余地は少ない。NDA改造でもしない限り、人間にディープラーニングのような改良はできないのです。
いまは「どっちが強い?」という時期を脱しつつあり、AIのパフォーマンスを楽しみながら自分との関係を考える時期に入ったのではないでしょうか。
とおっしゃる。
王銘琬九段は、囲碁ソフトTOTRENDの開発チームに参加されていたらしく、AIや囲碁ソフトに造詣が深いようなので、もう一冊読んでみた
棋士とAI ──アルファ碁から始まった未来 王銘琬 岩波書店
この本は、碁を打たない人向けに書いてある。
昔は囲碁ソフトの開発には棋力が必要だったが、今は棋力は必要ないらしく、中国の最強囲碁ソフト「絶芸」の開発チーム13名は全員碁が打てないらしい。 つまり、自ら学習し強くなるソフトが造れるようになったということだ。
必要なのは大量のデータ(棋譜)だが、囲碁ソフトの場合対局データも囲碁ソフトだけで作ることができる。これが、囲碁ソフトが急激に強くなった一因だろう。
王銘琬九段は
いまのAIは汎用型AIではないから怖くないとも言われていますが、棋士から見れば、いまの特化型AIでも十分怖いと思います。人間がアルファ碁に負けたことは、すなわち人間の敗北であるとは思っていないし、「AIも人間が作ったものですから、やはり人間の勝利です」という言い方にも納得いっていません。人間が人間らしさという価値を捨て、効率のみを追求するAIの答えに合わせると決めた時こそ、人間の敗北だと思っています。
とおっしゃる。
AIの奴隷(言いなり)になってはいけないということだろう。
自分で考えないで言われたことだけやっている人は、言うことを聞く相手が、上司からAIに変わるだけで、あまり変わらないのかもしれない。
*王銘琬(エン)九段の「琬(エン)」は王ヘンに宛
- 囲碁とAI <我々に訪れる未来> (2019/07/31)
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